テラーノベル
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2080年、日本。
この街は未だ美しく、醜く、脆く弱く。彼を忘れて時を過ごしていた。
太古の人々が紙に壁に岩に刻んだ理想が当に叶えられたのだ、罪の無い楽園。理性による支配。
今日もその隅でバグが修正されていた
「すまない。償えることではないと自覚している」
高校生だろうか。大人びてはいるもののまだ肌にハリがある青年が裏路地の捨てられたガムが跡として残ったアスファルトに額を擦り付けた。水蒸気に蒸し殺しにされて思考が奪われつついる上、摩擦の熱が彼の皮膚に牙を向いた。しかし、どうしてもそうしなければならなかった。
青年にはわかる、いや。本能が嘆いている。
自分はもう助からないと。
男の拳が振り下ろされた
罪が犯されると罰が下る、それを虎杖悠仁は自身の手で当然の法則にしてしまった。犯罪者を見つけては殴り、殺し、罰す、それだけの単純なサイクル。
虎杖悠仁は検品をする作業員の目をしている
人々に恐れられ悪魔と罵られ、時に崇拝される。紙のように薄く目を通す価値のない存在に見飽きたのだろう。彼にとってこの行為はゴミの分別に過ぎない。
何故こんな事を始めたのか、そんな問いももう浮かばなくなった。
自殺した恋人にしてやれたはずのことをしてあげたかっただけ、彼の望んだ世界を見せてあげたかっただけ
呑気な電子音が空気を割いた、青年の携帯の物だ。
ロック画面に浮かんだのは「おい、盗んできたか?早くやらねぇとあの写真ばら撒くぞ」という文面だった
いじめ。その三文字が浮かんできた頃にはもう青年から生のぬくもりは漏れ出ていた
確かにこいつは罪を犯した、でも脅迫されていた。じゃあ罰が下るべきなのか?脅迫されていたのに?
もしかして…自分はとてつもないことをしてしまったのかもしれない。虎杖の目に淀んだ生の光が戻ってきた
焦燥、自己暗示…そして勘
また、携帯が鳴った。そして画面のメッセージの相手はこの青年のことを”日車”と呼んでいた
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