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鼻歌交じりに、凛は絵の構図を思い浮かべながら、少し薄暗い細道を歩いていた。すると
「おいお前。止まれ!」
「え……?」
後ろから知らない男性……いや、同い年くらいの男子に声をかけられた。声をかけられたことと、その言葉遣いの荒さに驚きながら後ろを振り返ると、話しかけてきたのは、柄の悪そうな服を着ている、いかにもヤンキーのような男子だった。
「なんでしょうか?」
元々少し人見知りな凛は、少し警戒するような口調で尋ねた。すると、男子は機嫌を悪くした。
「なんだてめぇ。お前、『トーマン』の関係者だろ?!」
「『トーマン』……?」
なんだそのふざけた名前は。と凛は訝しげな顔をしながら思った。まるで機関車の名前のようではないか。
「東京卍會に決まってんだろがよ。あぁん?知らねえフリしても意味ねえぜ嬢ちゃん。」
凛はあぁ。と納得したような表情を浮かべた。東京卍會と言えば、最近巷で話題になっている暴走族だ。
「本当に知らないんです。私。暴走族とは無縁なので」
やんわりと否定したつもりだったが、凛のその発言はより一層男子を腹立たせたらしい。
「チッ、いい加減にしろよ。東卍が今日、ここに来ることはもうお見通しなんだよ!!」
「本当にあなたさっきから何言ってるんですか。」
自分より10センチほど高そうな男子を、凛は挑戦的に下から睨みをきかせた。もうすぐ家に帰れるというのにこんな風物言いをされては、たまったものではない。
「お前マジでいい加減にしろ!!!」
男子はそんな凛にもちろん怯える様子もなく、ドスの効いた声を出した。凛の肩がピクリと跳ねる。男子がこちらに1歩近づき、拳を振り上げた。凛が身を固くしたその時……
「おいお前何してんだ!!!」
男子の拳を後ろからガシリと掴み、大きな声で銀髪の男子が叫んだ。それと同時に、銀髪男子の後ろから数人の男子が来る
「女に手ェあげるとかだっせえことすんじゃねえよ。」
銀髪の男子が凄んだせいか、はたまた銀髪の男子には仲間がいたせいか。凛には理由ははっきりと分からないが、とにかくその【ガラの悪い男子】は、細道を抜けていった。
「大丈夫か?」
銀髪の男子に声をかけられ、凛は初めて銀髪の男子の服装を見た。彼は特服の様なものを身につけていた。片耳には十字架のピアスが空いている。服装をよく見ると、金色の文字で東京卍會や、天上天下、唯我独尊などの言葉が書かれている。だがそれとは裏腹に少し垂れた瞳はとても優しそうだった。凛はすぐさま彼らが先程の男子が言っていた東京卍會だと言うことに気づいた。
「あ、ありがとうございます……!」
「こんな夜に女ひとりで歩いてたら危ねぇぞ。家は近いのか?」
彼はお礼を言った凛に尋ねた
「はい!」
「そうか。気をつけて帰れよ。」
銀髪の男子はニカッと凛に笑いかけた。凛の心臓が波打つ。この細道に電灯がなくて良かったと心の底から思った。きっと今の凛の頬は林檎のように赤いだろう。
「あ、あの、お礼がしたいんですけど、お名前……」
「おい三ツ谷!そろそろ行くぞ!」
「あぁ!……ごめんな、また会えたら。」
そんな凛の言葉は、銀髪の男子の仲間によって遮られた。そして、三ツ谷と呼ばれた彼はバイクに乗って姿を消した。凛はあまりの出来事に唖然としながらも、猫の鳴く声が聞こえたことで我に返り、家へ1歩1歩足を前へ出した。
その日の夜はやけに寝つけず、優奈からの連絡も、初めて無視してしまった。
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口調迷子になってます、すいません💦