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魔石による影響でルティは精神を乗っ取られている状態だ。その魔石自体が彼女にぴったりと近付いてもいるが、それが何を意味するのか。
「うおりぃやああ!!!」
おれは自分の防御力を下げ、ルティの攻撃をまともに受ける――はずだった。しかし実は自分にデバフをかけたことが無い。
ルティのでたらめな料理効果なら可能だったのだが。さすがに自分自身を弱体させたことが無いだけに、ルティからの攻撃が全然効いていない。
「ズルいです、ズルいじゃないですか!! しつこい人間さん、ズルい!!」
「そう言われてもな……」
ルティからの拳をまともに受けたら、多分ダメージを喰らう。だがそうしないと、ルティの暴走を止められないような気もしている。
「当たれーー!!」
「ううむ……」
こうなれば、魔石に対して攻撃を仕掛けてみるしかないか?
魔石を一枚失うことになってしまうが、ルティを正気に戻すのが先だ。
「我が声を聞け。【シリュール】!」
唱えること自体久しぶり過ぎたが、霊獣シリュールは顕現してくれるだろうか。
「むむむっ!? あれれ、何ですか誰ですか?」
「――お!」
魔石への直接攻撃は避け、霊獣からの間接攻撃で封じてもらうという願いは聞いてくれたようで、ガントレットに眠る霊獣シリュールが姿を現わした。
「……《ハイドロショット》ターゲット……魔石」
やはり言葉は交わしてくれない。しかし、おれの願いどおり魔石に向けて水属性の攻撃を放ってくれた。シリュールは技を放つと、すぐにガントレットに戻ってしまった。果たして魔石にどんな効果をもたらしたのか。
【???の魔石 アック・イスティへのヘイト低下】
「お? ああ、やはりそうか」
「あれれれ? わたし、どうしちゃったんでしょう?」
魔石が生じさせていたルティへの興奮状態を上手く低下させることに成功したようだ。辺りをきょろきょろとさせているが、まだ正気に戻ったわけでは無さそう。
それなら今のうちに自分を含めた範囲に魔法を発動させる。
「ルティシア! 敵はここにいるぞ! ここへ来い!! 《インテンス・ヒート》だ」
下手をするとおれもろともゆでだこになってしまう。熱に強いルティをおびき寄せるには、灼熱級の魔法を使うしかない。
「な、何やら興味がそそられる熱気が立ち込めています! 喜んで突っ込みますよ~!」
「……それでいい。こっちだ、ルティシア」
灼熱地獄だが、ルティはおれが立っている所に突っ込んで来る。この状態にもう一つ、別の弱体魔法をかけておく。
「覚悟ですよーー!!」
「――よし、《リフレクト》!」
「はぇぇ!?」
熱を思いきり浴びた状態のルティに対し、熱への反射効果を付与した。これならばおれに対し、反射を作用させて間接的に拳を当てることが出来るはず。
「そうだ、ここだ。おれをめがけて攻撃して来い!」
「でやぁぁぁ!!」
「――くぅっ……」
ルティの直接攻撃とはやや異なるが、熱反射効果で彼女からの物理攻撃は確かに届いた。それほどダメージを受けたわけでは無く、少しだけ叩かれた程度だが。
「当たりました! 当たりましたよぉぉ!!」
「……ううーん、駄目だ熱い……」
ルティの攻撃は効かなかった。だが辺りが灼熱過ぎて、もはや立つことが出来ずに倒れ込んでしまった。
◇◇
しばらく経っただろうか。何やら額に冷たいものが当たっている気がする。額どころか、顔の至る所に冷たい石のようなものが当てられている感じだ。
【ルティの魔石 Lv.999 灼熱耐性 冷却効果+1 ??? ???】
「……んんん」
完全にのぼせてしまったが、どうやらルティの魔石が”覚醒”したのが見える。他の子たちと違って成長要素がありそうだ。
「アック様~? もしもーし……?」