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『命が惜しければ対価を捧げろ。
さすればお前に危害は加えん。』
これは、数年前の**純情少女**の怪奇なる体験談である。
私は数年前まで、外遊びが大好きだった。
田舎町で自然が多く、見たことないものを目にするのはとても楽しいから。
時々、思いもよらない雨に打たれて帰ってくると母が心配そうに風呂に入れてくれることもあった。
そんな好奇心旺盛、あるいは落ち着きのない性格で友達は少なかったが自然だけは私と親友だった。
ある日、学校から帰ってくると直ぐに水筒と帽子、図鑑、長ズボンを履いて近くの草原へ向かった。
…まぁあまり関係はないが先程話したようにここは田舎町なので、私の他に男子が3、4人で鬼ごっこをしていた。
到着するやいなや、雑草や花をちぎっては図鑑で調べていた。
川でオタマジャクシを捕ったり、木の木漏れ日に見蕩れたりもしたかな?
━━私は道に迷った。
正確に言うと、川沿いを好奇心だけで歩いて疲れ果てると…あれ?ここどこ?となってしまった。
私は辺りが段々、黄昏時で紅に染まると次第に不安になってきた。
田舎町には時計も連絡等もするすべが無く、泣く。
途中、山道を見つけて“しまった”。
川沿いを引き返すという手もあったが、純情少女は山道に好奇心を抱いてしまった。
しかし、山道はさっきの川沿いよりも暗い。
木々が僅かな光を遮り、生き物が全くいない静寂。
嗚呼、好奇心とは恐ろしい。
結局私は入ってしまったのだ。
膝は笑っているし、心臓は可笑しかったはずだ。
それでも歩みは止めなかった。
━━が、転んでしまった。
痛いだのなんだの、この際気にしている暇は無かった。
私は、体制を立て直そうと図鑑を持っていない手を何とか着いて力を入れたが…先程まで笑っていた膝を全く動かせ無かった。
恐怖も疑問もあったものの、いやあったからこそ動けずにいた。
ーーすると、 恐ろしいほどの暴風 が私を襲った。
この時期にしては珍しく、感じたことの無い生き物が迫ってくるような感じだった。
服は風で一気に冷たく、水筒はカラカラ音を立てて地面に叩きつけられ、帽子は飛んで行ってしまった。
その時反射的に私は、図鑑を顔に押し当てた。
必死に風圧をカバーした。
体の小さい当時の私は、ズリズリと後ろに後退して行った。
刹那、手は図鑑を持っていたせいで地面にしがみつくことが出来ず、仰向けの状態で飛ばされた。
後ろに木があったお陰で体は少し撃ったものの、そこから後ろは何とか飛ばされずにいた。
ひとしきり吹いた風が途端に止み、驚きを隠せない様子でいると目の前に
“何か”が現れた。
『…まだ童か。』
小さく舌打ちしたそいつに、 私は声を振り絞って尋ねた。
「だ…誰、ですか!」
影…というか、闇で隠されたそいつの体は宙に浮いていた。
動物のようなシルエットなのに喋ることが不思議で仕方が無かった。
周りの木の葉を巻き上げては、その木の葉が鎌のようなもので掻っ切られていた。
『誰…か、名乗れるような名もないな。
まァ鎌鼬とでも言ってんのかね?お前らは。 』
「かま…いたち?
まさか妖怪…の?」
純情少女は頭をフル回転させて、
妖怪 鎌鼬という結論に至った。
『人を化け物のように言いやがるなァ。
……さて、 お前がこの山道に来たってことは俺が命を奪いかねないぞ?』
「え?」
“命を奪う”と言われてしまえば誰だって取り乱す。
どころか、それを得体の知れないやつに言われれば気絶もいいところだ。
『命が惜しければ対価を捧げろ。
さすればお前に危害は加えん。』
純情少女は胸を撫で下ろす…こともなくビビりまくっていたため、鎌鼬はこう付け加えた。
『 俺の選択肢は、今お前の血を貪る。
又は、お前が対価を捧げる事でこの場は見逃してやろう。』
「対価…?」
『お前、質問が多いぞ。
対価と言えばすなわち体で払うもの。
何ら可笑しくないよなァ?』
体で払う…と聞いて、私はおぞましく思った。
自分がどんなことをされるのか考えられない、あるいは考えてしまったからだろう。
純情少女といってもそういったものや事件への関心はあった。
『手や足を捧げるか、五感の1つを捧げるか も又一興。 』
という事は体の1部や感覚を差し出さなければならない。
思っていたものとは違えど、それで安心する程馬鹿ではなかった。
私は何を対価に捧げるにしても怖く、もう受け答えで精一杯だった。
しばらく沈黙が続く、その間も足らない頭で純情少女は考える。
ーーが、1つある考えに至る。
身長は対価に捧げられないか。
これなら、痛くも痒くもない。
私のこれから伸びる身長は惜しいが、そんなもの痛みや五感の喪失に越したことはない。
そして、
「…私の、これから伸びる身長を捧げます。」
形にならないような土下座をして純情少女は言った。
頼む、頼むと心の中で涙を流しながら願い、耐えた。
『!?
…キ、キヒヒ……アッハッハハハハァ!
良いだろうお前の願い、とくと受け入れよう。 』
高らかに少しバカにしたように笑われ、又風が吹いたかと思えば そこから意識は遠のいた。
後日談…というか、目覚めたあとのことである。
目を開けた時は全身がヒリヒリと痛み、パジャマを着させられていた。
恐らくあの暴風でできた小さな切り傷が身体中にあった。
そんなことより、自分の家だった。
どうやら近くに居た母が、物音に気づき近づいてきた。
私が目覚めたのを見るやいなや、走ってハグをしてくれた。
私も何だか悲しいと嬉しいの境界線上で泣かずにはいられなかった。
それからは、母が語ってくれた事だがあの日の夕刻に私が帰ってこず友達の家 や学校を尋ねて回っていた。
その時、あの山道の近くに住んでいた…名前は忘れたが中学生の女の子が私を助けてくれたそうだ。
田舎町で噂が広がるのは早かったからか、私(小さい女の子)が行方不明と聞くと山道へピンポイントで駆け出して見つけてくれたそうな。
大人でないことを知ると驚きだが、案外子供の勘の方が当たるのかも知れない。
後にその子の家に菓子折りを持って母と行くと、その子にガン見された。
隅から隅まで見られるのは恥ずかしく、母の後ろに隠れると
『あぁっ!
ごめんな、でも…いや何でもない…すまなかった!』
と、言われて目を伏せられてしまった。
今でもあの男勝りな口調を覚えている。
私は多分、あの人のような強さを今も昔も目指している。
と、安心しきっていた、矢先に不幸は起こる。
ーー鎌鼬に魅入られていた。
あいつは、私に“対価を捧げれば危害は加えない”と言った。
確かに、危害は加えてこなかった。
しかし、あいつは
『あの童の様になりたいなら、俺が取り憑いてやるよ。
対価は要らない、俺が面白いと思ってやるだけだ。
まァお前に拒否権はないが。』
そう言って小さく笑った。
私は、契約を結ばされた。
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どうも、つかさです。語彙力の欠片もない感想ですけど同年代とは思えないほどの語彙力で正直異次元すぎます………。読みやすすぎて引き込まれました…👉🏻👈🏻︎💕︎完成度高すぎるし続き読みたすぎる…。一生かけて待ってます