抱きしめ合ったあの日から、度々僕はガク君に抱きしめられる様になった。最初は恥ずかしかったし、無論嫌だと思った。でも人間の慣れというものは怖く、いつしか自分から抱きしめられに行っていた。僕の家の時もあればガク君の家の時もある。
「ガク君、なんで僕を抱きしめるんですか?」
ふと聞いてしまった。
「あ〜、、」
抱きしめていた腕を緩め目を逸らし、何もない空を見る。
「まぁ答えたくないならそれで良いです」
僕はもう一度ポフっと抱きつく。なんだかんだ抱きしめられるのは悪い気はしない。むしろ嬉しいくらいだ。
「とやさん、、」
「?…どうしました?」
顔を上げる。
「…ありがとう」
「?どういたしまして…?」
ガク君は何に対してお礼を言ったのだろう。でも、今度のガク君の顔は嬉しそうで、暖かい笑顔だった。再びガク君が僕を強く抱きしめる。
「ちょっ、いきなりは苦しっ…」
うりうりと頭を僕の肩に擦り付ける。
「んふっ、くすぐったい、んふふ」
ガク君の尻尾みたいな髪の毛がふわふわと当たる。
ねぇガク君もっと抱きしめても良いから、いつか君が隠してること教えろよ。僕は優しいからちゃんと待ってるから。
春の柔らかい匂いが部屋いっぱいに広がった。
コメント
1件