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最近フロイド先輩が尽く私の前に現れては謎の行動を取ってくる。それはどこでも行われる。図書室、教室、廊下、遊びに行ったラウンジ内でも。
「小エビちゃん〜♡」
「ひぃっっ!!!」
「なぁ〜に、そんなにビクッとしてんの?いつもの事じゃんかぁ」
「いきなり後ろから抱きつかれてびっくりしない人はいないと思います…」
静かな教室に似つかわしくない素っ頓狂な私の声が響く。
フロイド先輩はアハハッ!!といつの間にか聞きなれてしまった笑い声を上げる。あれ、なんだか抱きしめる力がだんだん強くなっている気が。
「あの、フロイド先輩、、く、ぐるじぃ…です…」
「んん〜?あ、ごめ〜ん」
抗議の声を何とか捻り出すことに成功し、絞める力が緩くなった。が、依然として彼は私から離れない。
「あの、暑いので離れて「なんか言った?」イエ、ナニモ…」
頭上からの圧が凄い。有無を言わさぬ少し狂気じみた瞳に気押されてしまった。
フロイド先輩はいつの間にか機嫌を治し、抱きしめるのをやめてニコニコしながら私を正面から見下ろしている。彼はどこかとろんとした顔で見つめてくる。
「ねぇ、小エビちゃん」
「はい、何でしょうか?」
「小エビちゃんもいい加減俺の気持ちに返事してよ」
「先輩の、気持ち、ですか、、」
「俺さぁ、ずーっとずっと小エビちゃんにアピールしてるのに、小エビちゃんはなーんにも気づいてないじゃんかぁ」
「は、はぁ…」
「だからぁ、俺今日は小エビちゃんが俺の気持ち分かってくれるまでこうしちゃうから♡」
「うえっ!!」
彼が突如として飛びついてきたかと思えば、私は気がつけば机に押し倒されていた。
「え?あの…」
フロイド先輩はうっとり顔で私を見下ろす。
「ねぇ、小エビちゃん…これが俺の気持ち、受け取ってよ」
あぁ〜と言いながらいつも見せつけてくるあのポーズをしてくる。彼は口を大きく開けて私に見せつけてきた。野性的なギザギザの歯が奥までよく見える。
「わかった?」
「んー、、は、歯磨きしてほしいんですか?私、小エビですし…」
「ざんねーん!じゃあ陸のやり方で表現してみっから当ててねぇ」
刹那、私に近づく金色とオリーヴの瞳。少し冷たい慣れない温度が頬に触れる。私は反射的に目を瞑る。その瞬間唇に温もりを感じた。
「小エビちゃん…♡」
私は呼ばれて目を開ける。眼前にはフロイド先輩の整った顔が広がっている。頬にあたる彼の黒いメッシュがこそばゆい。
「これで俺の気持ちわかってくれたよね?」
「あの…その…」
「あははははは!!ちゃんと伝わったみたいでよかったぁ♡」
フロイド先輩は嬉しそうに私の顔を覗き込んでいる。するりとお腹に手を滑らせてきた。
「ッッ…」
「んで、返事は?」
ニヤリと私を見つめ続ける瞳には狡猾さを感じる。
口を開いた彼は恍惚とした声を出した。
「まあ俺、どう返事貰っても逃がすつもりねぇけど」