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鮮やかな緑色に気持ちが緩やかになったが
扉を開けるまでの音が聞こえなくなっていることに気がついた。いまあるのは風に揺らされさざめいている草の音だけ。
彼は不思議に思ったが気に留めることはない。
彼には記憶がないのだから
2.記憶/Wer ist er
緑色に包まれている空間は奥に奥に続いている
先は長く見えない。彼には、どうすることもできない。このまま餓死をするのか、ここにいるかもしれない怪獣に殺されるか。彼には死ぬ運命しかないのかもしれない。彼に残っている記憶は怪獣とアイスだけ。何故この単語しか覚えていないのか、彼には到底わかるはずもない。
外にいても何も出来ない、ベッドで寝よう。そう、彼は思った。
きっと、寝て覚めたらいつもと同じ風景がある。同じ風景。同じ風景…。
同じ、風景?
猛烈に頭が痛くなった。いつもと同じ風景が思い出せない。自分はどうなってしまうのか
考える暇もなく頭痛と共に意識を失った。
優しい音がする。
大好きな、優しい人
誰だかはわからない。わからないけど、自分がそれを好きなのは本能が教えてくれた。
「……ん」
「…りん」
りん。
りん、優しい音で呼ばれて思い出した。
自分の名前はりんなのだと。