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フォロー失礼します!
あのえっとフォロー失礼します ほんとに桃さん彼女にあんな事してそうで好きです
めちゃくちゃにやにやしました。最初感情が不安定な赤くんに私も不安定になりましたが信頼出来る素敵な友達のおかげで幸せな方向に進んでよかったです。喧嘩をしても辛いことがあってもこれからも一緒に乗り越えてくれたらいいなと思います。幸せが溢れますように。
桃赤
「今日は早く帰れる」
ぼんやりと、彼とのトーク画面をぼんやりと見つめる。
時刻は11時。
自分は何を期待していたのだろうか。
「遅くなる」すらのメッセージもない。
1人浮かれて作った夕食ももう冷めきって、リビングのテーブルに置いたまんま。
かと言って彼が帰って来ないのに1人で食べる気にもならず2人分。
「はは….」
誰もいないリビング見渡して、乾いた笑い声が静寂の中に行くあてもなくおちていった。
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彼__桃くんと同棲を始めて約5年。
さほど短くは無い年月。
彼は高校生で、部活の後輩だった。
俺より1つ年下の癖に背が高くて、何でも器用にこなして文句なしにかっこいい。
何かと俺の事を可愛いやらチビやらからかってくるムカつく奴。
ただ、それだけだった。
なのに、俺の卒業式の時に急に告白されて。
「俺、先輩と離れたくないです」
「大好きなんです、赤先輩の事が」
「俺、誰よりも先輩の事愛せる自身がありますよ」
「幸せにするので俺の事好きになってください」
気づいたら彼が隣にいる事が当たり前になっていた。
どこが好きなんだと言われたら、上手く答えられない。
笑った顔が好き。
俺の名前を呼ぶ低くて甘い声が好き。
いつも暖かい俺の手を握ってくれるゴツゴツした男らしい手が好き。
きっと、言葉が溢れて止まらないくらい彼の全部が好き。
そう思った自分自身に驚いた。
単純に彼をこんなに好きになれた事が、
彼に愛されるのがとてつもなく嬉しかった。
名前を呼べば、手を広げて抱きしめてくれる。
俺より何倍も大きな体に埋まるのが、どうしようもなく幸せで。
幸せで幸せで….よく不安になった。
この幸せがなくなってしまった時、俺はどうなるんだろう。
空っぽになってしまうんじゃないか。
「それは今もそうか….」
少し肌寒くなってきた夜風にポツリと呟く。
彼の仕事が忙しいのは分かってる。
でも、ここ3週間もまともに顔を合わせて会話していない。
いつの間にか狂い始めた2人の歯車。
開いてしまったお互いの距離を埋めようだなんて、そんな気力俺にはもうなくて。
悲しいとか、辛いとか、寂しいとか飛び越えて、心が空っぽだった。
彼は、俺に飽きてしまったんだろう。
気にかける対象にもなってないかもしれない。
何度も喧嘩しても、この関係は壊れる事はなかったのに。
お互い上手くやってきたつもりだったのに。
きっと、無くなってしまったんだ。俺への気持ちも。
「嘘つき….」
すると持っていたスマホが鳴った。
もしかして、と淡い期待を抱いたのをつかの間、
着信の主は親友の黄くんだった。
「出るの早いねwもしかして桃くんの連絡待ち?」
「え….いや、黄くん….どうかした?」
少し言葉を濁しながら聞く。
彼は相変わらず元気そうでほっとした。
「いやぁ、最近連絡取ってなかったから元気かなって….桃くんがいいなら久しぶりに今度ご飯どお?」
黄くんは桃くんに告白された時も、喧嘩した時も相談にのってくれた。
俺の自慢の親友。
「いいよ….なんなら今すぐにでもいけるよ….」
「何言ってんの….こんな夜遅くに連れ回したら僕が桃くんに怒られちゃうでしょ….」
「いーのいーの….桃くんとは別れるって決めたし….」
「えっ….」
いざ言葉にすると、目の奥が熱くなった。
颯爽と走り去っていく車の音。
赤信号に差し掛かり、ピタッと足を止める。
街ゆく人達は何故だか幸せそうに見えた。
すると驚いたように黙っていた黄くんが焦ったように口を開いた。
「….赤、今どこにいるの?」
「え….暇だから家の近く歩いてるだけだよ?….ふふ、前の桃くんだったら、こんな夜遅くに外出歩いてたら凄い怒ってたのにね」
自傷気味に笑いながら軽い口調で話すと、黄くんはまた黙ってしまった。
「….赤、僕も今すぐ行くから駅前のカフェで待ってて….」
「んぇ….」
「ほら、学生時代によく桃くんの相談のったとこ。絶対来てよ?分かった?」
「ぅん….」
俺があやふやな返事をすると、電話がプツンと切れる。
暗くなった画面を見て、心配かけちゃったかな、なんてぼんやりと思った。
そして自然と指が癖になっているようで、桃くんとのトーク画面を開いてしまった。
試しに、「別れよう」なんて言葉を打ってみる。
…これを送ってしまえば、全てが終わってしまう。
忙しい彼の事だから、きっとメッセージ1つ読むのにも苦になるだろう。
しかも、こんなメッセージ一言で終わらせるのは5年もの年月のあまりに、薄情ではないか。
俺は彼にとっての重荷になってるかもしれないのに?
別れると決めたのなら、早く行動に移さないときっと彼から俺が離れられなくなってしまう。
でも指先が震えて、結局送信ボタン押さずにそのまま画面を閉じた。
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注文したアイスティーをストローでクルクル回しながら、街ゆく人達をガラス越しにぼんやりと眺める。
24時間営業のオシャレなカフェ。
今どきカフェで24時間営業なんてネットカフェくらいだから珍しい。
やはり夜遅くなので、人はチラホラしかいない。
ぼーっとしていると、テーブルに置いていた自身の手に、冷たいアイスティーがかかった。
どうやら無意識に自分で乱暴に掻き回していたらしい。
置いてあったお手ふきで零れたアイスティーを拭いていると、テーブルに影がかかった。
ゆっくり顔をあげれば、見知らぬ男が俺を見下ろして微笑んでいた。
「あの….お兄さん可愛いですね。お1人ですか….?良かったら俺と….」
「ごめん赤っ、遅くなった!」
突然、勢いよくドアが開いて、黄くんが息を切らしながら入ってきた。
黄くんは不審に思ったのか、ギロっと俺の横に立っている男を睨みつける。
「し、失礼しました….」
すると男は怯えたように身を縮こませてその場を去っていった。
「はー、危ない危ない。これだから赤は….」
「ごめんね….わざわざ….」
「….気にしないで、親友の為だもん」
「黄くん….」
「あからさまに様子変だったし….」
「…….」
彼は飲み物をオーダーしながら苦笑い。
「それに赤、今凄い泣きそうな顔してる」
「……….そんな事無いもん」
思わず俯いてしまった。
黄くんの真っ直ぐな目が、今は痛い。
「….ほんとに、桃くんと別れるの?」
「うん….」
俺がポツリポツリと話し始めると
アイスティーの氷が溶けてきて、カランっと音を立てた。
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「今日桃くん久しぶりに残業ないから早く帰れるってメッセージがきたの」
「うん」
「久しぶりに2人で過ごせるんだと思って待ってたんだけど、全然連絡ないし….桃くんか忙しいのも、頑張ってるのも分かってる….だけど、なんか、なんか….」
疲れちゃった。
ポロリと零れた言葉は、間違いなく自身の本音であって。
黄くんは悲しそうに俺を見た。
「別に桃くんが浮気してるだとか、そんな事思ってないし、そうゆう人じゃないっていうのも分かってる」
「でも、こんなにゆっくり会話も出来ないのに付き合ってる意味あるのかなって思ったらもう止まれなくて….」
キスして貰えない。
抱きしめて貰えない。
目を見て話してくれない。
そんな些細な事が重なって。
「桃くんを責めてる訳じゃない。俺だってもう大人だし、桃くんが傍にいないと息が出来ないとか、そういうやましい事言えない….でも桃くんは違うでしょ?」
俺が居なくたって彼はきっと変わらない。
そう、思ってしまう。
だから、寂しいから早く帰ってきて、とか、今すぐ会いたい、なんて言って甘える事はできるはず無かった。
迷惑かけたくない。困らせたくない。
面倒くさい彼女で居たくない。
….嫌われたくない。
「….でも、桃くんの事別に嫌いになったとか飽きたとか言う訳じゃないんでしょ….?」
「まさか….」
すると急にけたたましく扉が開いて、物騒な客が入ってきたなとぼんやり背中で思った。
「好きだよ。大好きなの。だからワガママ言って困らせたくない….縛り付けたくない….嫌でしょ、こんな彼女が毎日家で待ってるなんて、」
「へぇ、だからメッセージ1つで終わらせようっていうの?」
急に後ろから聞こえた声に、ギョッとして振り返る。
そこには息を切らした桃くんが怖い顔をして立っていた。
髪は少し乱れ、額には汗が垂れている。
「も、桃くん….ど、してここに….?」
「黄に教えてもらった….てかあのメッセージどういう事?」
「….あのメッセージ?」
「勝手に送り付けといて何しらばっくれてんの」
まさかと思い、慌てて彼とのトーク画面を開いた。
そこには、送るつもりなんてなかった、「別れよう」とメッセージが送られていて、既読がついていた。
さぁーっと血の気が引く。
「ち、違うの、これは….」
「ごめん黄、赤貰ってく」
桃くんは俺の手を掴むと、足早に言い捨てる。
「しょーがないですねぇ、またなんか奢ってくださいよ」
黄くんは満足したようにニンマリ笑って手を振った。
「返品不可ですからねー!」
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玄関に入った途端、彼に思いっきり抱きしめられる。
俺はびっくりして固まる事しか出来ない。
いつもの桃くんの匂い。
こんな風に温もりを感じたのはいつぶりだろうか。
「も、桃くん….く、苦しい….」
「….て」
「え?」
「別れようって言ったの取り消して」
「へ….」
「じゃないと離さない」
更にぎゅうぎゅう抱きしめてくる。
このままじゃ、真面目に骨が折れそうだ。
「別れない….別れないから」
「….ほんと?」
「….うん」
桃くんの腕の中で何度も頷くと、少し力が緩められた。
そして弱々しい声でポツリと呟かれる。
「ごめん….赤。寂しい思いさせて…今日も早く帰れるって言ったのに….」
今、大好きな彼に抱きしめられている。
その事実がどうしようもなく泣きそうなくらい嬉しくて、我慢していた心の糸が解けた。
「おれっ、飽きられちゃったのかと思ったよ….?寂しくて寂しくて….ふあんだったんだからっ….」
「俺がお前に飽きるわけないだろ….?」
彼のスーツに、俺の涙がどんどん吸い込まれていく。
俺はしばらくの間、暖かい彼の温もりを確かめながらずっと泣いていた。
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泣き疲れて眠ってしまった彼を抱き上げて、そっとベットに寝かせる。
….まさか、別れを切り出されるなんて思ってなかった。
しかも、赤があんな事を思っていただなんて。
彼が、俺から離れていかないなんて勝手に決めつけて。
仕事が忙しかったのは事実で、俺は大きなプロジェクトを任されていた。
寝る暇も無いほど、仕事に追われていて。
成功すれば、赤にももっと贅沢させてやれる。
そう思ったら頑張れた。
でも、それも今日でおしまい。
赤の寝ているベットに腰掛けながら、優しく彼の頭を撫でる。
そしてそっと、コートのポケットに入れていた手のひらサイズの箱を取り出した。
今日遅くなってしまったのはこれのせい。
俺が迷いに迷っていたせいでもあるが….
思ったより時間がかかってしまった。
ごめんな、赤。
辛い思いさせて、悲しませて。
でも、もう流すのは嬉し涙しかないようにするから。
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朝、隣で静かな泣き声がしてゆっくり目を開ける。
そこには大好きな彼女が自身の左手を右手で包み込んでベットにうずくまっていた。
愛おしくて愛おしくて、引き寄せてぎゅっと抱きしめる。
「赤、結婚しよう」
耳元で囁くと、彼の泣き声が一層大きくなった。
「俺なんかでいいの….?」
「逆に赤じゃないとダメ。」
ポロポロ流れる大粒の涙を親指で脱ぐってやると、優しい口付けをする。
「愛してるよ….赤。….これからもずっと俺の隣で笑っていてください。」
「当たり前だ馬鹿っ….」
泣きながら不器用にも笑う彼。
2人の薬指にはお互いの色の宝石の指輪が、キラキラと輝いていた。
…ℯ𝓃𝒹
なにこれ….すっごい前に書いて下書きに眠ってました(?)
そして報われない語彙力(((
貰ったリクエスト次から出しますので許してください(((( ᐪ꒳ᐪ )