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エンドロールが終わり、シアター内が明かりに包まれる。
「んあぁ〜」
鹿島が伸びをする。シアター内がざわつき始める。
「いやぁ〜面白かったな」
「ね。初めてロナン映画館で見たわ」
「オレも」
「オレも」
「ここロナンガチ勢率0パーだな」
3人で笑う。シアターを出てエスカレーターを乗り継ぐ。グッズコーナーが見える。
「グッズ買う人ー」
鹿島の声に匠も僕も反応しない。
「んじゃ」
エスカレーターを降りる。今度は映画館を出るためにエスカレーターを乗る。
「んじゃ、飯だな」
「へーい」
「レッツゴー」
エスカレーターを降りて、出口から外に出る。animania(アニマニア)が目の前にある。
「匠。行かなくていいの?」
animania(アニマニア)を指指す。
「あぁ〜。いい。入ったら病気発症する」
「病気」
つい笑う。その間に鹿島がお店を調べてくれて、駅近くにある焼き鳥居酒屋へ向かった。
「らっしゃーせー!」
扉を開くとめちゃくちゃ元気のいい出迎えの言葉が飛んできた。
「3人でお願いします」
鹿島が言ってくれる。
「3名様ぁー!」
席に案内され、3人で個室のようなところで座る。
しばらくすると店員さんが水とおしぼりを持ってきてくれた。
「ご注文お決まりになりましたらお呼びください」
と言って去っていく。さすがに居酒屋だけあってごちゃごちゃと賑やかだ。
「さーてー。なに食べようかぁ〜」
3人でおしぼりで手を拭く。メニューを取り、匠と2人で見る。鹿島は鹿島でメニューを見る。
「はさみ?ってなんだ?」
鹿島の言葉に僕もメニューの「はさみ」を見る。
「なんだろーね」
「はさみ…ねぎまだって」
匠は検索してくれていたのか、スマホをテーブルに置く。
「じゃーオレはーとりあえず、もも、皮、はさみ、むね、なんこつをタレ塩でかな」
「食べるなぁ〜」
「あと白米も」
「大盛り?」
「もち」
「オレは〜焼き鳥和風パスタかな」
「麺好きなぁ〜」
「あともものタレも食べようかな」
「怜ちゃんは?」
「んん〜。とりあえず盛り合わせとご飯かな」
「飲み放題じゃなくていいよね」
「いい、いい」
「オレはぁ〜レモンサワーかな」
「オレはオールハイ(ソラオーラとウイスキーのカクテル)」
「みんなお酒ね」
「まぁ居酒屋来たし、みんなでいるし。たまにはね」
「ねぇ〜」
「ねぇ〜」
鹿島と匠が顔を見合わせて言う。今やすっかり仲良しだ。
「んん〜。じゃあオレは紅茶ハイかな」
「とりあえずこれでいいか」
匠も僕も頷く。
「すいませーん!」
鹿島が店員さんを呼ぶ。
「ただいまぁ〜!」
間もなくして店員さんが来てくれた。
「ご注文で?」
「はい。えぇ〜と焼き鳥盛り合わせ1つとももを〜…」
鹿島が匠と僕を見る。匠が人差し指を立てる。
「2本。タレで。あとももの塩と
皮、はさみ、むね、なんこつをタレ、塩それぞれお願いします。あとパスタ?」
「焼き鳥和風パスタをお願いします」
匠が補足する。
「あとは白米を大盛りと…」
鹿島が僕を見る。
「ふつー盛りで」
「あとはレモンサワーとオールハイ(ソラオーラとウイスキーのカクテル)と紅茶ハイをお願いします」
「…以上でよろしいでしょうか?」
「はい!とりあえず」
「かしこまりました。少々お待ちください」
そう軽く頭を下げて去っていく店員さん。しばらくしてまずは飲み物だけが届く。
「んじゃ、ま、とりあえず」
鹿島がレモンサワーのグラスを握る。
「かんぱーい!」
「「かんぱーい」」
3つのグラスをカチンカチンとあてる。飲む。
ココティー(心の紅茶)のストレートティーと思われる紅茶にアルコールが入っている。
香りはココティー(心の紅茶)のストレートティーままだが
紅茶の苦味とは別の苦味があり、アルコールの味もしっかりとしていた。
香りもストレートティーのままだと言ったがアルコール香りもしっかりしていた。
「んん〜。アルコール」
「めっちゃ当たり前なこと言ってる」
「ひさしぶりに飲むとはいえ、そんなだな」
「まぁジュースのほうがうまいよね」
「オールハイ(ソラオーラとウイスキーのカクテル)はジュースっぽくないの?」
「飲んでみそ?」
匠の目の前に置いてあるジョッキの取手を握り、一口口に流し込む。
ソラオーラは甘く、独特な味で強い炭酸が特徴の炭酸飲料だが
甘く美味しいものが元だからこそ、ウイスキーの香りと味が際立ってしまっているように感じる。
「おっ…おぉ…アルコール」
「怜夢も当たり前のことを」
匠が笑う。匠の目の前にジョッキを戻す。
「マジでたまにだよね。飲むの」
「たまにだね。最後は〜…。あれか。テニサーか」
「そうそう。あ、今月末LIME来そうじゃね?」
「あぁ〜先輩から?」
「先輩ってかグループで」
「あぁ、テニサーのグループか。通知オフにしてるわ」
「オレもー」
「匠ちゃんは〜…なにもサークル入ってないんだっけ?」
「うん。オレ1年の頃全然大学行ってなかったから。サークル勧誘のときは全然」
「あぁ〜…ね」
「でも2年でも勧誘はあったろ」
「あったね。「1年生?」「あ、いえ2年です」
「あ、そうなんだ。もうサークル入ってる?」
「いえ」「そーなの!?じゃあうちはどお?」とかあった」
「それ単に匠ちゃんに話しかけたかったとかじゃなくて?」
「あり得るわ〜」
大学生らしい会話をしていると
「お待たせしました〜。こちらが焼き鳥盛り合わせになります」
と言って、鹿島の注文した数多くの焼き鳥と僕の頼んだ焼き鳥盛り合わせが来た。
「それとご飯大盛りとふつー盛りですねぇ〜。失礼します〜」
と去っていく。どうやら匠のパスタはまだのようだ。
「じゃ、ま、とりあえず食べますか」
僕はまず皮の串を手に取り、口に入れ、一部を剥ぎ取る。
焼き鳥を主軸にしている居酒屋さんなだけあって、炭火の香ばしい香りと柔らかくも歯応えのある皮だった。
「んん!うまい!」
「うんうん。うまうま」
「匠ちゃん焼き鳥ももタレだけでいいの?」
「うん。パスタ来るから」
「麺族なの?」
「なに麺族って」
「知らん。思いついただけ」
「麺ヘラではあるよ」
「うまい!座布団1枚!」
「山田くーん」
バカみたいな、なんにもならない会話を楽しむ。その後も焼き鳥盛り合わせを食べて、飲んでいると
「お待たせいたしましたぁ〜。こちらが焼き鳥和風パスタですねぇ〜。ご注文の品お揃いでしょうか?」
「はい。ありがとうございます」
「追加注文ございましたらまたお呼びください。失礼しまーす」
と去っていく。
「接客業ってなんか感動するわ」
「わかう」
鹿島が今まさに焼き鳥を食べながら言う。
匠がフォークとスプーンを器用に使い、フォークに一口分を巻き付ける。
そしてそのフォークで焼き鳥を刺して一緒に口へ運ぶ。美味しそうだ。
「どお?」
思わず聞いてしまう。
「んん」
さすがに口に入ったままは喋らない。育ちの良さが出る。口をモグモグ動かし、喉が動く。
「うん。めっちゃ美味しい」
「マジ?匠ちゃん一口ちょーだい」
「ん」
すると匠はまたフォークとスプーンを器用に使い、フォークに一口分を巻き付ける。
そしてそのフォークで焼き鳥を刺して
「はい」
と鹿島に差し出す。
「お。いいんすか?」
とニマニマしながら顔を前に突き出して
「あーん」
と鹿島が言いながら食べる。
「あーんは匠のセリフだろ」
「んんー!3倍美味しい!」
「なぜ3倍」
「でもマジでうまいぞ」
「うん。今の流れはBL層が喜びそうだな。日常のやり取りで使えそう」
「マジ?オレも気になる」
「はいはい」
また匠はフォークとスプーンを器用に使い、フォークに一口分を巻き付け
そのフォークで焼き鳥を刺して僕に差し出してくれる。
「いただきまーす」
パクンと口に入れる。焼き鳥のももの炭火で焼いている香ばしい香りと
和風パスタの醤油の香り、そしてガツンとくるニンニクの香り。
焼き鳥を主役として、しかし他もその他大勢ではなく、主役を支えるための立派な役割を果たしている。
パスタの麺もアルデンテのようで柔らかくでも歯応えのある麺に仕上がっていた。
「うんうん。うまいわ」
「やっぱ麺は最強だわ」
「匠ちゃんほんと麺好きだよね〜」
「妃馬さんと話合いそう」
「え?妃馬さんも麺好きなん?」
「そうそう。麺大好き族らしいよ」
「やっぱいるんだ。そーゆー種族」
「話合いそうだわ」
そんな話をしながら鹿島は自分で頼んだ焼き鳥を
匠はその焼き鳥和風パスタを僕は焼き鳥盛り合わせを食べ進める。
くだらない話に花を咲かせながら食べ進めているとみんなあっさりと食べ終えた。
「もうちょいゆっくりしようか」
「ん」
「だね。なんか頼もうか」
「そうだね。なんかあっさりしたのがいいな」
鹿島は鹿島で、僕は僕でメニューを広げる。
「これは?ポン酢焼き鳥」
「どこ?」
「次のページの右の真ん中らへん」
「あぁ〜なるほどね。ネギ、キャベツ…うん、いんじゃね?」
「オレもメニュー見ーせて」
匠がひょこっと覗き込んでくる。
「あ、飲み物んとこ」
僕は飲み物のところへページを捲る。
「カクテル…カクテル…。カシオレにしようかな」
「あぁ、飲み物ね。ナイス匠ちゃん。オレも〜…。レモンサワーでいいや」
「オレも紅茶ハイでいいや」
メニューをたたみ、メニュー置きに置いた後
「すいませーん!」
と鹿島が店員さんを呼ぶ。
「はーい!」
と言う声が聞こえた後、間もなくして今度は女性の店員さんが来てくれた。
「はい。ご注文でしょうか?」
「はい。えぇ〜ポン酢焼き鳥?をお願いします。あとカシオレとレモンサワー、紅茶ハイをお願いします」
「はい。ポン酢焼き鳥、カシオレ、レモンサワー
紅茶ハイですね。あ、お済みのお皿片付けますね」
と言って数枚のお皿を持っていった後
またおぼんを持って戻ってきて、空いたお皿を全て持っていってくれた。
しばらくして店員さんがおぼんに飲み物を3つ持ってきてくれて
空いたグラスを代わりに持っていってくれた。僕は変わらずに紅茶ハイを飲む。
「んん〜。まあまあ」
カシスオレンジのグラスを置く。
「カシオレか。テニサーの新入生歓迎会の二次会のカラオケで飲んだなぁ〜」
「あぁ〜あそこのレモンサワーヤバかったわ」
「カシオレも変に苦かった」
「そうだったん?レモンサワーもアルコール強すぎ万円だったわ」
「強すぎ万円?」
意味がわからない鹿島の発言につい笑ってしまう。
「なんか思い付いたわ」
「変なこと思い付くよな」
「レモンサワーってうまいの?」
「唐突だね匠ちゃん」
「イメージだけどアルコールの味強そうだなぁ〜って」
「強いよ」
「ちょ、一口」
「はい」
鹿島が匠にレモンサワーのグラスを手渡す。匠が一口レモンサワーを口に入れる。
「うわっ…」
匠は眉間に皺を寄せながらグラスを鹿島に返す。
「うわって」
「アルコール強すぎない?」
「いや?ここのはちょうど良いよ?」
鹿島がグラスに口をつけ、レモンサワーを一口飲んで確認し、頷く。
「マジ?無理だわ」
「レモンサワーはねいろんなとこで、いろんなレモンサワーがあるから、おもしろいんよ」
「安心安定のカシオレでいいわ。それかカルーアミルク」
「わかる!カルーアミルクうまいよな!」
「それはわかる。ただのコーヒー牛乳」
「それな」「わかる」など盛り上がっていると
「お待たせいたしました〜」
とだけ言ってテーブルに注文したポン酢焼き鳥を置いて
「失礼いたします〜」
と言い去っていく店員さん。
「いただきまぁ〜す」
鹿島が箸で自分の取り皿に取って口へ運ぶ。
「んんー!うまい!」
「どれどれ」
匠と僕も疑ってはいないが取り皿に取って口へ運ぶ。ポン酢の香りと炭火で焼かれた焼き鳥の香ばしさ
そしてポン酢の酢の酸味で焼き鳥の油、食感をあっさりとサッパリと食べられるようになっていた。
そこへキャベツやネギの食感も相まって
白米のおかずにもお酒のつまみにもなり得る、万能な料理だと思った。
「うん。いいな。うまい」
「うんうん。ポン酢うまい」
「ポン酢?」
匠の「ポン酢うまい」発言に驚き笑う。
「ポン酢万能説推すわ」
「まあ、その説、否定はせんけど」
「うまいけど。てか割と酢使った料理うまい説じゃね?」
「わかる。さっぱり料理うまい説」
「油そばにもお酢入れるしな!」
「京弥、良いこと言った」
「お!マジ?」
「油そば、スッピンで半分食べた後のお酢でメイクしたらあの子また表情変えるのよな」
「油そばを人みたいに言ってる」
「ラーメンもじゃない?匠ちゃん」
「あぁ〜わからなくもない」
「それ言ったら料理全般そうだろ」
「「たしかに」」
鹿島と匠がハモる。その後のくだらない話を続けて
気づけば、21時をとっくに過ぎていたので今のグラスが空いたら帰るということになった。
「わかる?漫画家様も小説家の皆さんも努力してるわけよ」
鹿島のゲーム講義ならぬ、匠の二次元講義が始まる。
「そりゃそうだ」
「うん」
「じゃあテレビドラマは?どうなの?って話。テレビドラマももっと努力せえよって話」
「はいはい。言いたいことわかったわ」
「ん?」
鹿島はキョトンとしながらレモンサワーを飲み、話を聞いている。
「でもさ、あれなんじゃないの?」
正直二次元関係の話で匠に勝てるとは思ってはいないが「話」をするためにあえて意見を述べてみる。
「ドラマ枠ってのか確保されてて、毎期ドラマなにかしら放送しないとその枠空いちゃうんじゃないの?」
「だろうね。そうなんだろうね。でもさ、だからって実写化していいってことにはならないだろ」
そこで初めて話の趣旨を理解したらしく
「あぁ〜…デリケートな話題ね」
とレモンサワーを飲みながら、なんとも言えぬ表情をする鹿島。
「まあね?でも穴空けるわけにはいかないんじゃない?」
「まあ、それもわかるよ。大変なんだろうねテレビのうんぬんかんぬんも。
でもさ、考えてみ?漫画家様や小説家さんにも期日ってのはあるじゃん?」
「まぁ、実際は知らんけど、ドラマとか話では聞くね」
鹿島も頷く。
「じゃあ、そんときに漫画家様、小説家さんたちは他の作品を丸パクリして出す?」
「…出さ…ないだろうね」
「ないね」
「そうなのよ。脚本家の人の中にはちゃんとオリジナルの脚本を書いて、それこそ寝る間も惜しんでね?
そういう人は尊敬できるよ。あと忙しい中でも
オリジナルのドラマを作ろうとしてる制作班の皆さんも尊敬できる。
その人たちは漫画家様、小説家の皆さんと同じくらい努力してると思う。
みんな見習えよって話よ。そりゃ大変なのは嫌だろうね。
じゃあやめれば?ドラマなんて。愛もなく、まぁ、愛があったからって
実写化していいって訳じゃないけど、愛もなく、ただ繋ぎのためだけに
1から作んなくていいやってのでマンガ、アニメの実写化なんてするくらいならやめてほしい」
「熱いねぇ〜」
「わかるよ。いや、わかる…オレの場合ゲームだけどね?好きなもん話すときは熱くなるよね」
「最近実写化実写化ばっかで吐きそうになる」
「吐きそうに」
思わず笑う。
「でもオレも芸能人とかで「私ー僕ーゲーム好きなんですぅ〜」って
言ってるやつで王道のタイトルばっか出すやつとかは「は?」って思って見てる」
「わかる!オレも芸能人とかMyPiperとかの「僕私ーヲタクなんですー。
マンガ好きなんですー」は信用してない。全っ然信用してない。
芸能人とかがマンガとか熱弁してる番組やってたら即チャンネル変える。頭痛くなるんだよね」
「めっちゃわかる」
鹿島と匠が共鳴しそうになる。
「でもさ、あれじゃないの?ゲーム好きじゃない人にもわかるようなタイトルを言ってるんじゃなくて?」
「まぁその可能性もあるけどさ、王道タイトルばっかだよ?
それこそさ、王道タイトル1つ、例えばファンタジア フィナーレ好きですーって言った後に
なんかコアなゲームのタイトル言ったっていいじゃん」
「あぁ〜…まあね?」
今のグラスが空になったら帰るという話だったが
鹿島のゲーム愛の話、匠の二次元愛の話を聞いていたら
そのラストが氷が溶けて溶けて薄まり、もう1杯飲めたくらい長くなった。
お会計を終えて、店を出る。