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ムツキとサラフェたちが戦いを始めた頃、一難去った家の中ではムツキの帰りを待って、みんなで談笑を始めていた。コイハやメイリが不安や緊張しないための配慮でもある。
「気にせず寛いでくれ。旦那様に任せておけば安心だ。そう言えば、自己紹介がまだだったな。妾は魔人族で鬼族のナジュミネだ。気軽にナジュミネと呼んでくれ」
薄着にエプロン姿のままのナジュミネは椅子に座って笑顔で自己紹介をする。
「私はリゥパよ。見ての通り、妖精族でエルフ族よ。私も気軽にリゥパと呼んでほしいわ」
リゥパは一安心したのか大きな欠伸をしてから、ソファにもたれかかりつつ皆の方を向いて話しかけている。
「ありがとうございます。僕は半獣人族で黒狸族のメイリと言います。よろしくお願いします。ナジュミネさんのことを姐さん、リゥパさんのことを姉さんと言いますね!」
メイリがナジュミネの隣の椅子にちょこんと座りつつ、足をパタパタさせている。彼女は仕草がどことなくユウに近く、少し幼げな感じもする。
「あ、姐さん? いや、少し物々しい感じがするのだが……。普通にナジュミネでいい。あと、もっと軽い感じで大丈夫だ」
ナジュミネが苦笑いをする。予想外の呼び方に少し戸惑いがあるようだ。ふと、彼女は母親がそう呼ばれていたのを思い出した。
「改めて、俺は獣人族で白狐族のコイハです。いや、俺もナジュミネさんのことは姐御って言わせてもらいます。リゥパはリゥパで」
コイハはメイリと逆のナジュミネの隣にあった椅子に座っていた。コイハが「姐御」と言ったときに、ナジュミネが盛大にコケる。
「な、何故だ!」
「あーん、怖―い。……そうやって、怒らせたくないからでしょ? いいじゃない。慕われているんだから」
リゥパが冗談交じりでナジュミネをなだめる。ナジュミネは少し膨れた面をしつつも肯いた。
「む。むー……。まあ、呼び方の無理強いはできんな……」
「私は姉さんかあ、妹ができたみたいでいいわね♪ でも、リゥパがいいわ」
一方のリゥパは一度肯定しつつも、年齢を上に感じさせるということで却下にしていた。この時の威圧感は先ほどのナジュミネとそう変わりはしない。
「……それじゃ、リゥパで」
メイリは何の反論もなくに訂正した。リゥパの笑顔から凄みがなくなったのは誰の目からも明らかだった。
「ありがとう♪ 私にはフランクにお願いね。ですます、禁止ね♪」
リゥパがそう言うと、メイリとコイハは静かに肯いた。
「おい……さっきと言っていることが違わないか……?」
ナジュミネはジト目でリゥパの方を見やるが、リゥパは悪びれる様子もなく、右手をぷらぷらと振っている。
「一緒じゃないのは残念だけど、私には私の考え方があるのよ」
「それは普通にズルいぞ……」
ナジュミネは膨れ面をさらに大きくしている。その瞳は、自分が引くに引けず姐さん、姐御と呼ばれることを諦めているようだった。
「それにしても、メイリは可愛らしい顔しているわね。私やナジュミネ、コイハとは別系統ね」
リゥパはここでようやく、ソファから移動して、仔犬から椅子をもらって、メイリとコイハの間に座る。これで4人が輪を作るように座ることになった。
「そう? コイハは綺麗だってよく言われているけど、僕は綺麗とか可愛いとかって言われることあまりないから、正直分からないかな」
メイリはキョトンとした顔でリゥパにそう返す。
「いや、メイリは人気あったぞ? 気付かなかったのか?」
半獣人族と獣人族は共存していることが多い。メイリとコイハも長らく共に過ごした仲である。ただし、年齢は全然違う。
「僕はだいたい怒られていたから分からないかな。あははー……」
メイリは上の方を向いて、ポリポリと頬を掻く。
「そりゃ、悪戯も多かったからな……」
コイハはその悪戯に付き合わされたのだろう。少しだけため息交じりである。
「ふーん。まあ、メイリにイタズラしたい男は多かったんじゃない? これ、これ」
リゥパは目の前にあるメイリの胸を指で突いた。彼女の指は、彼女が思うよりも深く沈み込む。
「んっ……ちょっと、リゥパ、急に突かないでよ……」
「……これはすごいわね。ムッちゃんも大喜びするかも」
メイリは思わず甘い声が出てしまい、リゥパはゴクリと喉を鳴らす。ナジュミネは少し顔が赤くなる。
「……こほん。しかし、コイハ、メイリ、そして、サラフェか……。皆、どうも綺麗だったり、可愛いかったり、容姿が良過ぎる。サラフェもなんだかんだで可愛い系だからな」
ナジュミネは頭を悩ませている。
「可愛い系って、守ってあげたくなるわよね……。モフモフもそうじゃない? ムッちゃんの庇護欲もメイリやサラフェの方が強いかもしれないわね……」
リゥパはナジュミネをからかうためにわざと真剣な表情でそう呟く。
「ぐうっ……なんということだ……。妾は嫉妬で耐えきれんかもしれん……」
ナジュミネががっくりとうなだれていた。