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#オリジナル
モノクロナツキ
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いつもの聞き慣れた目覚ましの音が聞こえる。と同時に、シャンプーのいい匂いが優しく鼻をくすぐった。そうや、俺、昨日もとちゃんに連れて帰ってきてもらって、ろくなお礼も言わんかったな……。深く反省しながらゆっくりと目を開けると──目の前には、スヤスヤと優しい顔でまだ眠っている幼馴染の顔があった。
「………っ!?!?!?!?!?」
あまりの衝撃に、声にならなかった。え、もとちゃん!? なんでここに……って、これ、弦の部屋着着てるし……え、俺は!? 急いで布団の中の自分を確認すると、ちゃんとパジャマに着替えている。昨日、出かけた服のままリビングのソファで力尽きて寝落ちした記憶はあるのに。ここ、俺の部屋やし、ベッドの上やし!!
混乱の極みの中、そっとベッドから抜け出そうとした瞬間、グイッと強い力で腕を引かれた。抵抗する間もなく、寝ぼけているであろうもとちゃんの広い胸の中にすっぽりと収まってしまう。え、なに!? この心臓に悪い距離感!
「……洸くんが今日、秀太とシフト交代してくれるって。やから秀太は今日遅番」
「へ? ……そうなん?」
え、なにそれ!? 俺、まだ本人に確認出来てへんから、めっちゃ不安なんやけど! それにそんな事したら、朝、エントランスで陸さんに捕まってまうやん!
「……弦も洸くんも、もう一緒に家出たで。今、この家には俺ら2人きり」
まだ少し低く眠そうな声で、俺をギュッと腕の中に抱きしめ直しながら、もとちゃんが言う。そうか、弦も一緒ならなんとかなるか……って、安心してる場合じゃないやん! え……2人きりってなに!? それでこの状態のバグってる距離感って……俺らもしかして、昨日なんかあった……!?
「で、でも目覚まし、毎日6時に合わせてるはずなんやけど」
慌ててその腕から抜け出してスマホに手を伸ばそうとすると、ふふ、と喉を鳴らして笑ったもとちゃんに、あっさりとその手を捕まえられた。
「うん、なってた。でも、俺が消して9時に合わせ直してん。流石にあんだけ酒飲んだら、気づかへんもんやな」
まるで、自分に懐いた犬を愛おしそうに撫でるかのように、もとちゃんが俺の髪を優しく撫でる。待ってくれ、これ、こいつ素面でやってんねやろ!? この状態、更に緊張してきてんけど!!
「……あの、もとちゃん。俺ら昨日……何かあった?」
もとちゃんはBARの外に迎えにきてくれた時、お酒は飲んでへんかったはずや。ということは、泥酔しまくっていた俺が何かとんでもないことをやらかしたに違いない。
「……覚えてへんの?」
至近距離でバチッと目が合い、強烈な緊張と戸惑いが襲ってくる。俺がこわごわとコクンと頷くと、もとちゃんは少し呆れたように残念そうな顔をして、わざとらしく大きなため息をついた。
「……秀太がどうしても一緒にシャワー浴びたいって言い出して、一緒に入ってん。その後、俺が服着ようとしたら、弦の服持ってきて『これ着て一緒にベッドで寝よう』って可愛らしく言うてきて。2人もまだ帰ってきてへんかったし、まぁ……その後もそれなりに、仲良く」
「……嘘やろ。悪夢や」
血の気が引いた。そんな、酔った勢いでなんて。絶対したらあかん事やろ。こんな大切なこと、もう30歳やのに『若気の至り』じゃ済まされへん……!
「なんでそんな事いうん? ……俺の事あんなに、好きやって言うてくれたのに」
「はぁ!?」
俺ってやつは……! もうあかん、今日から絶対断酒や!! そんな大事なこと、全く記憶がないなんて、俺何するかわかららんやん!
「……あれ、嘘やったん?」
そんな、捨てられた子犬みたいな悲しい顔すんなよ。昨日からずっとこいつの事傷つけ続けて、俺、本当に最悪の人間やん……。
「いや、ちょっと待って! ほんま覚えてへんねん! ほら、酒に飲まれてる時は人間正常じゃないっていうか……っ!」
「……じゃあ今は? もう酒、全部抜けてるやろ?」
「まぁ……抜けてるけど。でも、こんな寝起きに言うことでもないやろ」
恥ずかしすぎて顔が爆発しそうや。俺の中ではこいつとはまだなんも始まってへんのに、もとちゃんの中では、俺が覚えてへん俺と、もうあんな事やそんなことが始まってしもてるんやろ?
「……俺は、昨日も言うたけど、秀太の事、好きやで。ずっと好きやった。でも、秀太は洸くんの事が大好きで、勝てへんと思ってたから、ずっと隠してた。陸さんと付き合ってるって言うても、昨日今日の話やろ? 何年もずっと思い続けた俺の気持ちは、あの人には絶対負けへん。あの人に勝てる自信がある。昨日は嫉妬してかっこ悪いとこ見せてもうだけど、もう迷わへん」
そんな真っ直ぐにぶつけられて──。腕の中から伝ってくるもとちゃんの早い心臓のドキドキが、俺の身体にも響いて、一気にものすごい幸せに包まれる。俺だって好きや。この気持ちは誰にも負けへんし、もう迷う事なんてない。
でも──今の俺には、空くんと弦を守るために陸さんの傍にいなあかん一ヶ月の『義務』がある。
「……今は、その気持ちに応えることはできひん。やけど……お前は、俺の事だけ信じて待っとけ」
そう気持ちを込めて微笑み、彼の頬をそっと撫でた。