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目が覚めると、いつもの景色だった。
ボロく掃除が行き届いていない部屋の、
ボロい天井。
小さな時からみた、同じ景色。
しかし、今日の窓の外には青空の中に小さく、 白い月がのぼっている。
いい天気だ。
不治の病に苦しみ、何度も消えてしまおうと思ったのを彼女に何度も支えられてきた。
今の僕の心は青空のごとく澄んでいた。
心なしか、今日は体調も優れている気がする。
彼女が夢にまで会いに来てくれた。
いつの間にか、
僕にとって彼女は生きがいになっていたのだ。
陽だまり色の百合のような鰭、
優しいオレンジの瞳。
夢の中、彼女に会って、色んなことを話して、 今まで何もできなかったのを、 できるようになったような、そんなような気分になれた。
彼女になんとお礼をすればいいだろうか。
ふと水槽を見つめる。
…
…
あ、あれ、?
その花は水面に浮いていた。
今にも枯れてしまいそうに。
何が起こっている?
やっとこの現状を理解する。
理解した瞬間に、
目の前が、頭の中が、揺らぎ始めた。
あ、あ、あぁ、どうし、て…
なんで、こんなことに、?
こんなことになるのなら、ぼくは…
揺らぎは大きく荒れ出して。
ぐちゃぐちゃと不規則に回り始める。
息が、詰まる。
しなないでっ、しなないで、僕の花
呼吸は加速し、苦しくなる。
落ち着かなきゃ、おち、つかなきゃ。
あの幸せだった夢の記憶が
段々と霞んでくる。
感情と涙だけが高まり、
溢れて止まらなくなる。
彼女とどんな話をしかのか。
彼女はどんな風に笑っていたのか。
徐々に消えていってしまう。
重い。
心が。
体が。
重い。
これ以上、僕から何も奪わないで、
…
過呼吸気味になっていたところに
少しづつ安静と冷静さを取り戻した。
それに伴って意思も固まって行く。
花が枯れてしまっては、
僕の生きる意味などない。
そうでなければ、 僕はまた一人、
あの辛い日々を送らねばならない。
彼女はこうなることを知っていたのだろうか。
いや、そんなことはどうだっていい。
もう一度彼女に会えるかもしれないのなら。
もう一度彼女と話ができるのなら。
もう一度あの笑顔を見られるのなら。
僕はいつの日かにしまった紐を
迷うことなくベッドの下から取り出した。
夢で最後に感じた百合の匂いを思い出す。
また、彼女に会えるのなら。
そうして永遠の夢の中に落ちていった。
…
…
窓からお月様はその様子を見ていました。
最初から何もかも、
分かっていたような顔をして。