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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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※甚だしい捏造


※非日常な日常話


※実在の人物、団体とは一切関係ありません。


※軍パロです。


※以上をふまえて大丈夫な方のみおすすめください。



ゆっくりしていってね
















車から降りて少し歩いたところに、古い別荘があった。


入院中に、ゾムが新たな秘密基地として提案していた、打ち捨てられた別荘である。

長いこと誰も手入れをしていなかったハズなのに、建物も庭も、実に綺麗に整備されていた。

更に、ゾムとエーミールしか知らないハズなのに、



「エミさん、退院おめでとーーー♡♡」



庭に足を踏み込んだエーミールに、突如として舞う花びら吹雪と鳴り響くクラッカーの音。


見渡せば、庭の中にはグルッペンを含めた幹部達の姿。

オスマンやひとらんらんもいる。先ほど病院で別れたハズのしんぺい神も、兄さんと並んでエーミールに向かって手を振っている。



「…………はい?」



ゾムが案内してくれた二人の秘密基地はすでに整備され、幹部達全員からのお出迎えを受ける。


どこからツッコんでいいのやら。


呆然と立ち尽くすエーミールに、ゾムはひたすらに頭を下げまくっていた。



「ホンマにゴメン、エミさんッ! 秘密基地のこと、何でかみんなにバレててもうて……ッ」


「はっはっはっー。我々に隠し事など、無意味だぞ」

「せやせや。こんなエエとこ、二人きりで独占しようなんて」

「エミさん退院までに、みんなでここまで綺麗にしたったんやから、むしろ褒めてほしいわ」

「中も使えるようにしたったで」

「せやでー。皆で泊まれるよう、内装工事からベッドの調達までしといたわ」

「本部から、美味しいお菓子と紅茶も持ってきためう。いつでもお茶会できるめうよ」

「まあ、今からエミさんの退院祝いパーティーするんだけどね」

「視察出てた時に、土産にいろんなお酒買ってきたから、これで乾杯しよう」

「いぇーい。お酒お酒♪」

「あ。エミさんは、ノンアルな? 服薬中はアルコール摂取したらアカンで」



もはや誰が何を喋っているかわからない。

ゾムとエーミールの上を通過していく会話に、二人は呆然と立ち尽くすだけだった。

乾杯の杯を持たされ我に返ったものの、場の置いてきぼり感にどうしていいかわからずにいた。




「ほな、エーミールとゾムの退院を祝して……」


「カンパ〜〜〜〜〜イ♡♡♡♡♡」



グルッペンの音頭で乾杯をすると、皆で一気に酒(お茶)を飲み干した。


ゾムと二人きりの秘密基地だと思っていた場所は、二人の仲間たちによって整備され、皆の別荘となってしまった。

大勢の仲間とわちゃわちゃ遊ぶのもそれはそれで楽しいが、ゾムとのゆったりした時間が奪われたという感は否めない。

それでも改めて別荘を見回せば、長いこと放置されていたとは思えないほど、とても綺麗に整備されていた。

建物の古い造りからは想像もつかないほど、内部も整備されており、電気も水道も引かれていた。何なら無線やパソコン、ネット環境もしっかり整えられていた。

別荘というより、臨時本部とも言える施設になってしまっている。



……まあ、あの人が絡んでいるなら、絶対にそうなりますよねぇ。



庭でケーキを食べながら談笑するグルッペンを見つめ、エーミールは苦笑混じりでため息を吐いた。


屋内を散策していて、オスマンに捕まったエーミール。オスマンからエーミール不在の間に起こった事を、説明された。



エーミール達が視察に向かった敵国が持つ生物兵器は、すでにいくつかの組織を壊滅するにまで至っており、無事だったのは我々が初めてだったこと。

生物兵器のデータは、JOKER先生とショッピにより、痕跡すら残さず破壊したこと。

生産工場も、兄さん、ひとらんらん、オスマンによって灰塵に帰したこと。

当面の間という体で敵国と結んでいた不可侵条約を持ち出し、グルッペン自ら敵国に圧力をかけたこと。

圧倒的不利な政治的圧力に、開戦するまでもなく、敵国は陥落状態にあること。

などなど。




自分のいなかった間に、随分と事が進んでいたことに、エーミールはただただ嘆息を吐くだけだった。



「本当にすごいですわ…」

「めう。そんな中で、ここの手入れもしたんやから、褒めて欲しいよね」

「ははは…。ありがとうございます」

「特にエミちゃんに見てもらいたかったんは、庭やねん。行こ」


オスマンはエーミールの手を取り、庭に向かっていった。




オスマンが自慢したくなるのがわかるほど、美しく手入れされた庭には、色とりどりの花が咲き誇っていた。

特に目を引いたのは、薔薇だった。

かつての別荘の持ち主が植えたであろう薔薇が、それはそれは見事に咲き誇っていた。



薔薇……か。



大輪の赤い薔薇を手に取ったエーミールの表情が微かに曇っていたのを、オスマンは見逃さなかった。


「薔薇……。全部刈っといた方が、よかったかな?」


オスマンの言葉に、エーミールは苦笑を浮かべ、首を左右に振る。


「いやぁ。もったいないですよ。こんな素敵なお庭には、美しい薔薇が良く似合いますって」

「それに、この別荘の元の持ち主も、この庭には美しい薔薇が似合うと思ったから、こうして植えたのでしょう」


「そっか」


オスマンは満足そうに頷くと、庭の向こうからトントンがオスマンを呼ぶ声が聞こえた。


「おっと。トンちが呼んどるわ。エミちゃんも一緒に行く?」


「私は、もう少し花を堪能していたいのですが、エエですか?」


「……うん、わかった。ほな、ごゆっくりな」


「ありがとうございます」



トントンの方へと向かうオスマンを見送ると、エーミールは再び真紅の薔薇を手に取り、慈しむように見つめた。

そして花弁を掴むと、薔薇の花部分を千切り手に取った。


エーミールは摘み取った薔薇を胸ポケットに差し、オスマン達の方へと足を向けたその時、エーミールの腕を何かが引いた。



「?!」


「しーっ」


腕を引っ張っていたのは、ゾムだった。

そう言えば、乾杯からこっち見かけないと思ったら、突如現れてこっそりとエーミールの腕を引くとは。


「……どうしました?」

「エエから静かに。ちょっとこっち来て?」


声を落としてコソコソと小声で会話すると、本日の主役の二人は、こっそりとパーティー会場を後にし、この場を離れた。



続く


Rose Rose I love you 【完結】

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コメント

10

ユーザー

emさん退院した〜!✨👏🥳🎉 grさんの企みはそういうことだったか〜!✨👀👀 皆で楽しくパーティー😎 またまたzmさんに連れ去られるemさん...どきがムネムネします!

ユーザー

またまたこれは続きが楽しみですな〜( ◜▿◝ )

ユーザー

ネット環境も整ってるとか最高やん...住んでみてぇ

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