テラーノベル
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その日の朝。
空はどんよりと曇り、
まるで何かを予感させるように重たい雲が広がっていた。
恵ちゃんの表情は、
これまで以上に硬かった。
笑顔を作ってはいる。
けれど、
その瞳には明らかな怯えが宿っていた。
ひなは胸の奥に広がる不安を押し殺しながら、
いつも以上に恵ちゃんのそばにいた。
昼休み。
教室の隅で二人きりになると、
恵ちゃんは小さな声で言った。
「ひな……ありがとう」
「え?」
「ここ最近、ずっと一緒にいてくれて」
その声は震えていた。
ひなはそっと手を握る。
「私は、恵ちゃんの親友だから」
その一言に、
恵ちゃんの瞳が潤んだ。
「もし今日、何かあっても……」
恵ちゃんは言葉を途中で止める。
ひなはすぐに首を振った。
「大丈夫」
まっすぐに紫の瞳で見つめる。
「恵ちゃんは一人じゃない」
その言葉に、
恵ちゃんは小さく頷いた。
放課後。
恵ちゃんの姿が教室から消えた。
ひなの胸がざわつく。
まるで、
何かが始まってしまったような予感。
その時。
静かな足音とともに、
綾小路清隆 が近づいてきた。
「軽井沢は?」
「わかんない……」
綾小路くんは短く頷く。
「そうか」
その表情はいつもと変わらない。
だが、
その瞳の奥には揺るぎない決意があった。
「綾小路くん」
ひなの声は震えていた。
「恵ちゃんを助けて」
彼はまっすぐにひなを見つめる。
そして、
静かに答えた。
「ああ」
たった一言。
それだけで、
3
ひなの不安は少し和らいだ。
綾小路くんは踵を返し、
雨の降り始めた校舎の外へ歩き出す。
「綾小路くん!」
思わず呼び止めると、
彼は足を止めた。
「絶対に、帰ってきてね」
ひなの震える声。
綾小路くんは振り向き、
ほんのわずかに目を細めた。
「心配するな」
そして、
静かに言う。
「すべて終わらせる」
その背中が、
雨の中へ消えていく。
ひなは窓辺に立ち尽くし、
ただ祈ることしかできなかった。
恵ちゃんの無事を。
そして、
綾小路くんの帰りを。
夜。
雨音だけが、
静かに世界を包み込んでいた。
ひなは寮のラウンジで、
膝の上に手を置いたまま待ち続ける。
時計の針が進むたびに、
胸の鼓動が速くなる。
(信じよう)
綾小路くんの言葉を。
彼の強さを。
そして、
大切な人たちとの絆を。
雨の夜を信じて。
今、
それぞれの想いが交錯し、
運命の歯車が大きく動き出していた。
この夜を越えた先で、
友情も、
恋も、
新たな形へと変わっていく。
♡100ありがとうございます
次回♡50⤴︎で公開!!
コメント
1件
第56話、読み終わりました…! 雨の夜の重たい空気が、すごく伝わってきました。 恵ちゃんの怯えた表情と、ひなの「親友だから」の言葉が胸に刺さります。 綾小路くんの「すべて終わらせる」って、たった一言なのにすごく頼もしくて。 祈ることしかできないひなの気持ち、わかるなあ…。 次が気になりすぎます!