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今日一日周りからの視線がやらた気になった。(特に女性からの)それでももしかしたら隆ちゃんとすれ違いざまに会えたりするのかな? と少し期待しながら周りを見渡すけど、やっぱり会う事はなく、お昼休憩も社食は部署によって使える時間があるので会う事はなかった。時間表を確認すると経理部は十一時半から十二時半、人事部は十二時四十分から一時四十分だったので、会うはずがない。
ミナモトはホワイト会社なので基本残業はない。十七時半に退社だ。鞄にスマホやマイボトルをしまい帰宅準備をしているとスマホが鳴る。画面を確認すると【隆ちゃん】の表示。
『もしもし、美桜? 今日定時だよな?』
「うん、今帰ろうとしてたところだよ」
『じゃあロビーで待ってるから一緒に帰ろう』
「分かった! すぐ行くね!」
電話を切り鞄にスマホをしまい歩き出す。やはり私は子供なのか、いい歳してスキップし出しそうになる脚。歩くスピードはどんどん早くなり、九時間前に別れたばかりなのに早く会いたい。その思いがどんどん膨らむ。
一階のロビーに着くと一瞬で目に入る彼の姿。(今まで全く気づかなかったくせに)朝よりちよっとだけよれた髪の毛。目が疲れたのか目頭をグッと押さえ込んでいる。にしても、よく同じ会社で今まで会ったことないなんて逆に奇跡だ。
(本当に私ってリアル男子に興味なかったんだなぁ〜)
「隆ちゃん、お待たせ」
会社なので小声で名前を呼ぶ。なんとなく恥ずかしいから。
「お疲れ様、じゃあ帰ろっか」
少し周りが騒ついた気もしたが隆ちゃんは全く気にしてない様子。周りを見ること無く優しい目で私の事を見つめてくれた。ちょっと見つめられ過ぎて恥ずかしいくらいだ。
二人で肩を並べて(と言っても三十センチくらい私の肩が下だけど)会社を出る。
夕方だがもう日も延びてきたのでまだ空は明るい。けれど気温は朝よりずっと涼しく、そよそよと緩い風も吹いていて心地が良い。二人で歩く十五分。あっという間に家に着いた。
「ただいまぁ〜」
「ただいま」
「おかえりっていう人がいないね」
「確かに、美桜、おかえり」
二人で笑い合いながら「着替えてくる」と二人とも自室で部屋着に着替えるために向かう。
自室のドアを開けるとズラリと壁に並ぶ漫画の背表紙、小説の背表紙に一旦うっとりしてからスーツを脱ぐ。背表紙も出版社によってデザインが違い、そこもまた魅力的だ。TL小説なんかはその物語のヒーローの顔が描かれていたりして、ヒーローの顔の良さに見ているだけでうっとりしてしまう。作者買いもするけれど、絵師買いもしてしまう程TL小説の絵師様は綺麗で繊細な絵を描く人が多い。つい手を伸ばして本を開いてしまいそうになるのを我慢し、イケメンを拝んでからリビングに戻ると既に隆ちゃんが夜ご飯の支度をしてくれていた。