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付き合って2年経った時から彼は少しずつ変わっていった。ずっと暗い顔をしていた。
どうやら彼の両親が離婚寸前だとかで2人の喧嘩が耳障りで仕方ないということだった。アタシは高校卒業後は就職の道を選んだけれど、彼は父親に無理やり大学への進学をさせられていた。大学でも彼は人気者らしい。頭の良さももちろん、彼は高校生の時よりもかっこよくなっていた。
「ずっと待たせてごめんね。あの2年だから一緒に頑張ろう。2年経てば君と2人でどこか遠くに暮らそう。」
アタシの隣にずっといるために頑張ってくれているんだって、大学卒業したら結婚できるように今は我慢しなきゃなんだって教えてくれた。
3ヶ月後、彼の父が彼の母を殺してしまったという話を聞いた。彼の家のリビングでくだらない内容の喧嘩がいつもよりも大きなことになってしまって、頭に血が上って彼の父はちゃんとした判断ができなかったらしい。彼が急にリビングの方が静かになったのに気づいてそこへ行った時には、血まみれで倒れている母親とその近くに血の着いた灰皿を持った父親がいたらしい。
同時に両親を失った彼は大学をやめ、アタシの家で一緒に暮らすことになった。アタシは高校卒業後もアタシの両親と暮らしていたため彼を養うための基盤は完璧だった。アタシは内心彼が親を失ってよかったと思ってしまっていた。ずっと心待ちにしていた彼と暮らすことが出来たから。
1年後、アタシと彼はお母さんとお父さんにお願いをして、21年間ずっと暮らしてきた家を出て茨城の静かで暮らしやすいところに同棲を始めた。彼は平日は東京に働きに行って、アタシは虫が苦手じゃなかったし、植物が好きだったから地域の人達と一緒に野菜や花を育てて売って生計を立てていた。彼もアタシも大変だったけれど、家に帰ればおかえり、お疲れ様と言ってくれるお互いがいたから辛くはなかった。
半年後、地域の人達とも仲良く過ごせていて、近所の人とは育った野菜を渡し合ったりする仲になることが出来た。休日は2人とも休みだったから縁側で日向ぼっこをしてゆっくりしたり、近所の子供たちと遊んだり、2人で自転車で街を散策したり、山に登ったりした。とっても楽しい日々だった。本当に暖かくて、忘れ難い思い出。好きな人となら何があっても幸せなのは本当だと思い知らされた気分。
さらに半年経った時、彼はこの町から出たいと言った。やはり仕事場から遠いからずっと続けることが難しいと感じたのだろう。アタシは少し渋ったが、彼の暮らしやすさも重視すべきだと思い東京へ引っ越すことを決めた。