⚠注意⚠
パラ日帝
夕方頃、夏祭りがあり人で賑わうお店に行った。彼と一緒に。ぶつかり合う様に屋台が軒を重ねる。肩が触れる程の人混みの中、声があちらこちらに飛び交い、広場では、太鼓の音が、ドンドンと聞こえた。赤いりんご飴を一つと注文し、彼と一緒に食べる。ガリッと言う食感と共に、りんご飴の欠片が口の中に、ボリボリと噛み砕き、流し込む風に飲み込む。
「美味しいね」
僕が、そう言うと彼は、「そうだな」とニコリと微笑んでくれた。
「ねぇ、何でりんご飴を二つ持ってるの?」
そう聞くと、少し虚しい顔をした。だけど、直ぐに優しく暖かい眼差しで僕を瞳に捉えた。
「少し、待っててくれないか」
「…良いよ」
彼は、そう言ってその場から流れる風と共に立ち去った。
暫く待っていたが、我慢できずに彼の跡を追った。すると、少女に声をかけていた。遠くからだったけど、少しだけ声が聞こえる。どうやら、少女がりんご飴を落としたらしく、屋台の商店街の灯りは、無くなりもう閉まったのだと分かった。すると、彼はりんご飴を差し出した。「嗚呼、あの女の子にりんご飴を上げる為にりんご飴を二つ買ったのか」と納得した、僕は元いた場所に行こうとする。だけど、彼が僕以外の違う人と話をしているのを見て、醜い感情が芽生えた。この気持ちは、最初は分からなかったが、数年後その感情が「嫉妬」だと理解する。
「すまん。待たせた」
「……うんうん!大丈夫だよ!」
夏を嫌悪するには、十分過ぎる程の空だった。辺りが暗くなって行くと、花火の音が聞こえた。パチパチッと花火が、空に大きく広がり、赤、青、水色等、色んな色が混ざり合い、美しかったが、隣に居る彼の姿の方が、もっと美しいと思える。
「…ねぇ」
彼が、振り返ると共にソッと唇をなぞる。この唇は、僕だけの物だ。いや、彼の物は全て僕の物だ。誰にも渡さない。何故、自身がそう思うのかさえ、分からない。大人になれば、分かるかな…。彼の、食べかけのりんご飴を食べた。
「……食べて良いぞ」
嗚呼、そう言う所が大好きだ。彼は、僕に甘いのを知っている。ソレが、とても好都合なのだ。
「……ありがとう!」
食べかけのりんご飴を食べながら、間接キスをしている事に気づいていない彼が可愛いと思った。りんご飴は、甘く祭りの雰囲気を漂わす。
この時間が永遠に止まれば良いのに____