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※医療シーンは正しいか分かりません
※高校生の私の知識を使っております
※言葉がおかしい所があるかと思われます
※活動休止中メンバー登場します
side 桃
ガチャガチャッ
車の走行音も聞こえないような静寂に包まれ皆が寝静まった真夜中の3時にその音は突如響いた
子供110番にも登録していないし、何よりこんな深夜に出歩く子供など居ないだろう
そもそも歩いていれば補導案件だ
だが数分が過ぎた今でも依然として扉のガチャガチャとした音は続いたまま
泥棒なら静かに入ってくるだろうし、と俺は扉を開けてみることにした
ガチャッ
鍵を開け、薄く扉を開く
勿論万が一の為チェーンはかけたまま
と、その途端
?「たッ…たすけてッ…!!」
そこに居たのは小さな小さな子供
深夜だった事もあり良く見えないがあまりにも切羽詰った様子だった
ひとまずチェーンを外し子供を中へと引き寄せ、そのまま急いでチェーンと鍵をかけた
引き寄せた事によって分かったがこの俺の腕の中の少年は酷く震えていた
?「さッ…さとみッ…兄ちゃんッ…!」
……さとみ…兄ちゃん?
少年の言葉に不信感を抱き肩を掴んでしゃがめば青い瞳をしたクリクリの目が見えた
そして…髪の毛も空のような青色
桃「こ…ろ…?」
桃「ころんッ…なのかッ…?」
青「さとみ兄ちゃんッ…僕だよッ…ポロポロ」
ころん、俺の家の隣に住む男の子
俺がここへ越したのが17歳の時
その時ころんはとても幼く、3歳だった
ころんの親が共働きだった事もあり、御両親が帰宅するまで家で預かる事も珍しくなかった
その頃は傷などなく、元気だったのだが…
一体何があったんだろうか……
青「さとみ…兄ちゃん…??」
桃「あぁ……ごめんな…?」
体はぐっしょりと濡れ、服も体もボロボロ
頭からは血が流れていた
桃「とりあえず服脱げるか?」
青「服…?な、なにするのッ…?」
桃「何って…体の傷見るだけだけど…」
青「変なことしないッ…?」
その様子に大体の察しが着いた俺
そっと抱きしめ耳元で囁く
桃「嫌な事しないよ、安心して」
青「ん……分かった……」
桃「服脱いで風呂場行ってて」
そう言い残し俺は救急箱を取りに部屋へと駆け戻った
ちょうどこの時期から常に置いてある暖房をつけ風呂場内を出来るだけ温める
そして風呂に入れる用意を進めていると
青「さとみ兄ちゃん…」
服を脱ぎ裸になった青が脱いだ服を抱きしめながら風呂場にやってきたから追い炊きしてあった湯船に浸からせる
そして用意しておいた湯舟より少しばかりぬるめのお湯にタオルを浸し緩くしぼる
桃「ちょっと目瞑ってて」
桃「目に入るかもしんねぇから」
青「ん……」
桃「痛かったら言ってな」
どれ程お風呂に入っていないのだろうか
皮脂で髪の毛はべったべた
後頭部の方は後でシャワーで流すとして兎に角前頭部だ
固まった前髪を軽く持ち上げ留める
まだ血は固まりきってないようで赤くテラテラと光っていた
頭だと思っていたがどうやら生え際が切れ、そこから血が垂れていたようだ
先程濡らしたタオルで血を拭くと傷はそんなに大きくないが少し深めだろうか……
なんにしろもう少しあかりが欲しいところだ
桃「この傷、なにがあった?」
青「ッ…………」
タオルを当てておけば痛いだろうと思い持ってきたガーゼを当て仮止めをしながら事情を聞くも何も話そうとしない
まだ仮止め状態だしほかの傷も手当しなきゃだから話を聞くのはその時にするか……
結局傷については何も話さないままお風呂を終え、そのまま暖房の着いたリビングへ行きソファへ座らせた
まずは痣に湿布を貼り切傷にはガーゼ
テープで止め、場所によっては包帯も巻く
両腕にある大量の傷は自傷だろうか
外側にも内側にもあり傷だらけ
深い傷も浅い傷もさまざま
深い所には消毒をし化膿止めを塗る
ガーゼを当てて軽くテープで固定した後肘の方から手首へと包帯を巻いていく
手の甲にも深めの傷があったため同じようにガーゼを当て一緒に包帯で巻いて固定した
その後先程同様前髪を持ち上げて留め、仮止めのガーゼを外す
傷が小さいとはいえ出血量は少なくない
桃「どしたのころん…この傷…」
青「…………」
ソファの前にしゃがみ手当をしながら聞くもころんは頑なに口を閉ざしたまま
反応を見る限りただコケた訳じゃ無さそうだな…
止まることなく血が出てるからただガーゼを当てて包帯では済まないような気がした
しっかし暗ぇなこの部屋ぁ!←文句
自分の影で余計暗ぇわ……
桃「ころん、ちょっとまってて」
ライトを取るべくそう言い残し俺は部屋へと駆けた
桃「ごめん、お待たせ」
小型のライトを手に持ちリビングへと戻る
そしてころんを仰向きに寝かせライトをつける
……うん、見やすい
ライトの光があるから自分の影で…ってことがなくてすんごい見やすい
桃「…………ころん」
青「ッ………」
桃「今すぐ病院行こうか」
青「ひッ…ゃ……やだッ…!」
桃「やだって言われてもなぁ……」
桃「この傷結構深いんだよな……」
意外と深く、血も中々止まらない為縫った方がいいだろうと判断したものの必死の抵抗をみせるころん
桃「じゃあ俺がずっと横にいてやるから」
桃「それでもやだ?」
青「絶対ッ…?」
桃「おん、絶対」
青「ッ……分かったッ……」
同意を得る事が出来たから車のキーを手に取りころんの体を抱き上げる
車につきころんを助手席に下ろす
後部座席に下ろすことも考えたが激しい抵抗をされたのでそれは辞めた
ちなみに膝の上に座られそうになったのでそれは全力で拒否した
運転出来ないし
そして夜も明けてきた午前4時半頃
俺は勤務先の病院へと車を走らせていた
ちらりと助手席を見ればこちらの顔をチラチラと見ているころんの姿
少し元気の無さは見て取れるが落ち込みというより不安が強いように見えた
2年…いや、3年前だっただろうか
ころんの母親が亡くなったのは
買い物帰りに信号無視の車に跳ねられ頭を強く打ち即死だったんだそう
葬式の時俺はお経を聞きながら、泣きじゃくるころんを慰めたのをよく覚えている
その時ころんはまだ12歳
当時26だった俺でさえ受け入れるのに沢山の時間を要したのだ
ころんの精神的疲労は計り知れない
ころんの様子も気掛かりだったがその時俺はちょうど医者の卵で前期研修を終えた直後
後期研修に入らなかった俺は外科医の先輩医師の下で必死に働いていた
知識はあるがまだまだ新米
夜勤に入る事も多々あり疲れも溜まる
慣れない生活だった事もありころんと会わない日が続いていた
今の様子を見るとそこまで引き摺っているようではなくて少しだけ安堵
そういえば……とふと思い出し車を路肩に停め電話をかける
桃「ころん、スピーカーしてていい?」
青「えッ…あッ…うん…いいけど…、」
電話をかけ繋がったのを確認したタイミングでスピーカーへと切り替え運転を再開する
?「はい、もしもし」
桃「あ、もしもし〜」
?「あ、さとみくんじゃん、どしたの?」
?「え、今日非番だったよね?」
青「だ…、だれ……?(小声)」
?「ん?そこ誰かいる?」
うわ、耳めっちゃいいじゃん
こんな小声を電話越しで聞き取るとかやば
?「そんで運転中でしょ!」
あ、バレた
桃「あ、やっぱ分かる?w」
桃「ちゃんとスピーカーだからw」
?「まぁそれならいいけどね?」
桃「ころん、ころん」
青「Σ(OωO )ビクッ!?」
桃「んな驚かんでもwww」
?「ころんくん?ちゃん?」
桃「ん、あぁ、男の子」
?「おけ」
?「ころんくん…だね?初めまして」
青「はッ…はじめッ…ましてッ…」
?「俺は苺総合病院で院長やってる、」
紫「ななもりって言います」
青「ァ……ゥ……」
桃「ころん、大丈夫。大丈夫」
桃「初対面で緊張すると思うけど、」
桃「すんごい優しい人だから」
紫「急で驚かせちゃったね…大丈夫?」
紫「院長だけど呼び方なんでもいいからw」
桃「院長にみえねぇwwww」
紫「これでも院長ですぅ!!」
青「ァ…エト……ころん、です…」
紫「ふふ、宜しくね、ころちゃん」
紫「で?さとみくんよ」
桃「へいへい」
紫「一体どうしたんだい?ん?」
桃「こいつ大怪我だから今向かってる所」
青「そッ…そんな大怪我じゃッ…」
桃「あのねぇ…大怪我なのあんたは」
紫「ちょっと詳しく聞かせてくれる?」
桃「もち」
桃「ころん、やだったら耳栓してな」
青「んッ……」
桃「あのね…俺も詳しく知らんのよ」
紫「なるほどね……?」
紫「主にどんな怪我?」
桃「額と腕の切傷と痣」
紫「額と腕の切傷と痣ね……」
紫「痣は?手当済み?」
桃「おん、湿布貼ってある」
紫「腕の切傷は…どれくらい?」
桃「多分自傷だと思うんだよね」
桃「両手の内側と外側」
紫「ふんふん…結構多いね」
桃「一応手当はしてあるけどさ…」
桃「縫合をちょっと迷ってる」
紫「うーん…そうだねぇ……」
紫「見ないと何とも言えないからなぁ…」
桃「額の方は確定で縫合」
紫「場所が場所だからねぇ……」
紫「OK…分かった」
桃「とりまどこ向かえばいい?」
紫「そうだね…ちょっと確認してみる」
紫「看護師さん付けない方がいいよね」
桃「おん、だいぶビビると思う」
紫「じゃあ俺が入るとして部屋は…」
紫「…………第1処置室が空いてるね」
桃「ん、じゃあそこ行くわ」
紫「おけ、準備して待っとく」
紫「受付にも話通しとくね」
桃「さんきゅ、てかもう着いたわ」
紫「はいはーい、じゃ〜後でね〜」
車を駐車場に停め通話を切った後耳栓をして更に耳を抑え下を向いていたころんの肩を叩く
桃「ころん、病院着いた」
青「んッ……怖ッ…いッ……」
桃「俺と院長しかいないよ」
青「院長さんッ…なんでしょッ…?」
桃「でも結構気さくな人だから」
桃「基本何でもOKな感じ」
青「そッ…なのッ…?」
桃「おん、じゃあ行くぞー」
1度運転席から降り、車のフロントガラス越しに姿が見えるよう前から助手席に移動した
助手席の扉を開け脇に手を入れ抱き上げる
ころんは15歳とは思えぬほど軽く、片手で抱き抱えられたから片方の手で扉を閉めロックをかける
赤ん坊かってくらい軽いんだけど()
side 紫
桃「失礼しま〜っす」
紫「はいはーい、いらっしゃい」
電話を受けた後院長室の電話から1階の受付へと連絡をしてから第1処置室へと向かい諸々準備して待ってたらものの数分で来た
さとみくんは水色の髪の小さな男の子を片手で軽々抱き上げており、
この子がころちゃんだと分かった
紫「こんにちは、ころちゃん」
青「んッ…んやぁッ…」
目を合わせ優しく声をかけるもやだと言われてしまった
さて…どうしようかな…
桃「ベッド座っていい?」
紫「ん、いいよ〜」
ちなみに俺は今紺色のスクラブの上から白衣を羽織っている
俺の着ている服が怖いのもあるだろうし初対面だからその恐怖もあるんだろうね……
さとみくんがベッドに腰掛けバックハグの状態にしてくれたからその前にしゃがみこんでころん君の手を優しく掴む
紫「ころちゃん、こんにちは」
紫「さっきの電話のななもりです」
青「んッ…こッ…こんにちはッ…」
紫「院長…とは言ったけど、ね」
紫「好きに呼んでくれていいよ」
紫「気も使わなくていいし」
青「…………」
紫「同級生だと思って接したらいいよw」
桃「な?言ったろ?気さくだって」
青「んッ…なんか安心するッ…」
紫「初対面だと緊張しちゃうもんね」
紫「頑張って話せたね、えらいえらい」
青「んぅッ……」
紫「もう少しだけ、頑張れるかな?」
紫「なーくんも、ころちゃんが怖くないように一生懸命頑張るからね」
青「んッ…がんばるッ…」
紫「えらいね、一緒に頑張ろっか」
紫「じゃあこのベッドに横になれる?」
桃「すげぇこの人……(((ボソ」
横でさとみくんがすげぇなんて呟いてた
そんな凄くなんてないはずだけどな
ベッドに四角く硬い枕を置きそこに頭を置いてもらう
ちなみにさとみくんとは触れてなくても視界に写っていれば安心するらしい
額の傷を見る為に前髪を持ち上げピンで留め、仮止めとして貼ってあったガーゼを剥がす
紫「ん〜〜………んん……」
傷口を見る限り何かで切ったというよりも刺さったの方が正しいように見える
傷口付近に何か付いてるから1回洗浄したいところ……
紫「さとみく〜ん」
桃「はい」
紫「生食と膿盆(ノウボン)取ってくれない?」
桃「分かりました!」
仕事になると何故かさとみくんは敬語に変わる
別に仕事してくれたら敬語であろうとなかろうとなんも気にしないんだけどな()
枕と頭の間に防水シートを敷いて横向きに寝転んでもらい生食の受け皿として膿盆を置く
紫「傷口洗浄するからね〜」
紫「ちょこっとだけ痛いよ〜」
青「んッ……僕がんばるッ…」
紫「えらい!一緒に頑張ろうね」
恐らくお風呂には入ったのだろうが傷口付近は流石に洗えなかったのだろう
傷口付近に付いてた物は皮脂だった
まずは創部をガーゼで保護し、その周囲を温水で軽く洗浄
その後洗浄剤を手に取りガーゼを当てたまま周囲を洗う
その後ガーゼを離さず洗浄剤を温水で洗い流す
そして最後にガーゼを離し生食を傷口に直接かける
青「っく……んぅっ……!」
紫「痛いね…もう少しだからね…」
紫「よし、終わり!」
洗浄した後は新しいガーゼを使って濡れた部分を軽くふきとる
紫「よく頑張った!えらいね!」
青「んッ……痛かったッ…」
紫「じっと出来ててえらかったよ〜」
ちなみにさとみくんには腕の手当をしてもらっている
改めて確認すると結構深い傷もあったようで今は縫合の準備をしているらしい
俺は俺で額の傷の手当だ
紫「さとみく〜ん」
桃「はーい」
紫「ごめん…こっちもナートだわ…」
桃「傷、どんな感じですか?」
紫「うーん…結構深めだね…」
紫「ステープラーでもいいんだけど…」
桃「孔目立ちますよね…」
紫「そう…皮膚の高さも合わせずらいし」
紫「針と糸の方がいいかも」
桃「なんか手伝うことあります?」
紫「針と縫合糸の準備お願いできる?」
紫「俺ちょっと局所麻酔の準備する」
桃「分かりました!」
傷の場所やステープラーのデメリット点の諸々を考慮した結果縫合する事になった
時間はかかるし麻酔が必要になるけど後々あと目立つよりこっちの方がいいだろう
紫「額の傷、縫合するね」
青「ほうッ…ごうッ……?」
紫「うん、傷が深いから縫っちゃう」
青「ヒッ…やッ…やだッ…!!」
紫「縫うなんて聞いたら怖いよね……」
紫「でもね…必要なことなんだ」
青「やだぁッ…怖いのッ…!」
紫「そうだね、怖いね…」
紫「……実は俺もね、縫った事あるの」
青「んぇッ…?」
紫「縫うなんて怖いし嫌なのも分かる。」
紫「でも最初の注射だけ乗り越えたら、」
紫「後は全く痛くないんだよ」
青「ッ………」
紫「大丈夫、俺縫合は得意なんだ」
青「んッ……頑張れたらえらいッ…?」
紫「うん!偉いよ〜!」
紫「頑張れたら一つお願い聞いてあげる」
青「じゃあがんばるッ……」
紫「俺も頑張るから一緒に頑張ろうね!」
局所麻酔と滅菌手袋の用意をする
桃「ドレープこれでいいですかね?」
紫「うん、それで十分だよ」
ドレープ、手術部位に被せる緑の布の事
丸い穴が空いたドレープを傷に合わせて被せた後電気をつけ手元を明るくすれば準備完了
紫「ちょっとチクッとするよ〜」
声掛けをしてから麻酔の注射を打つ
麻酔が効いたのを確認してからが本番
抜糸後少しでも目立たないよう慎重に
傷の両側の高さも合わせないと後々盛り上がった傷になって目立つから丁寧に
縫合が終わった後は糸をしっかりと結んでパチンと切る
ドレープを取って滅菌手袋を外し、ガーゼをかぶせたらテープで固定。
包帯は後で座った時に巻くからいいとして…
そのまま腕の縫合もやってしまう事にした
ここは傷が多いからステープラーじゃない方がいい。
止めた際に横の傷に刺さるほど、傷の間隔が狭いし孔も目立ってしまうから
一つ一つ傷の深さを確認して縫合の傷を見定めていく
桃「……………」
俺の向かいでさとみくんは既に縫合作業へと入っている
傷も多めだし嫌な時間は少しでも短い方が良いから早めに縫合しちゃおう。
紫「ころちゃん。終わったよ、お疲れ様」
青「っん……ふぅっ……ふぇっ……」
縫合を終え、ガーゼも貼り包帯をして手当が終わった時声をかければころちゃんは泣いていた
体を起こしてもらい、過去最速のスピードで頭に包帯を巻いた後ぎゅっと抱きしめた
紫「何もかもが初めてだったのに、」
紫「良く頑張ったね、えらいよ」
青「っく……ひっく……ぐすっ」
紫「頑張れたころちゃんにご褒美!」
紫「何して欲しい〜?」
青「ひっく……抱っこッ…してッ…」
桃「完全に心開いてる……すげぇ」
脇の下に手を入れひょいっと持ち上げる
紫「だいじょーぶだいじょーぶ」
青「せなかッ…ポンポンってッ…」
紫「いいよ〜ころちゃん頑張ったもんね」
本来なら縫合もしたし何日間か入院して欲しい所ではあるんだけど……
離れなさそうだしどうしようかなぁ…
でもとりあえずこの傷の原因聞かないと…
紫「ねぇころちゃん」
青「んぅッ……」
紫「この傷達どうしたのかな?」
青「カッターッ…」
紫「カッターでどうしたの?」
紫「なーくんに教えてくれるかな?」
青「おとッ…さんにッ…刺されたッ…」
紫「えい!って刺されちゃったの?」
青「んッ…そうッ…」
紫「それはいつの話かな?」
青「夜中ッ…3時とかッ…」
桃「おまっ…まじかよ……」
ガッシャーンッ
さとみくんの声が聞こえたと同時に聞こえた器具が床に落ちる音
紫「さとみくん!大丈夫!?」
桃「ははっ…腰抜けた…」
桃「まじで…情けねぇな俺……」
紫「ほんとに?しんどいとかない?」
桃「あぁ…それは全然…大丈夫」
紫「とりあえず…立てそう?」
桃「ころぉ〜ん……」
青「んぅっ〜……やっ」
桃「あッ……いんちょぉぉぉ……」
あらら、ショック受けてる
この猫さんストレスに弱いからなぁ…
すぐにばぶ化しちゃうんだよね
紫「肩貸すから歩ける?」
桃「………だっこ」
ゑ?
その要求はもりさん初めて……
でもころんくん抱っこしてるからなぁ…
紫「ころちゃん、さとみくんとこ行ける?」
青「んぅ〜……さとみ兄ちゃ〜……」
ころんくんを抱っこから降ろしてやるとすぐにさとみくんに飛びついていった
桃「ころぉ!よしよし…」
ちなみにこのばぶちゃんは回復もお早いもので……
紫「さとみくーん、立てるかい?」
桃「んぁ?立てる立てる」
……ほらね?
とりあえず手当も終わったしここ空けたいから…どうしようかな……
紫「ころちゃん」
青「んぅっ……」
紫「病院にお泊まりはやだ?」
青「ァ……ャ……やだッ…ポロポロ」
え、ちょっと待って待って
こりゃ何かトラウマ持ちだな…
紫「聞こえたらお手手握れるかな?」
青「ゥ……はひゅっ…ぎゅ…ひゅっ……」
紫「お泊まりやだったね…ごめんね…」
紫「お泊まりしないから安心していいよ」
青「ひゅっ……はぁっ……はぁっ……」
桃「ころん、大丈夫大丈夫(ユラユラ」
紫「さとみくん、院長室行こうか」
桃「じゃあころん抱いときますね」
side 桃
院長室……結構入る事はあるけど未だに慣れないんだよな……
この中入るとどうしても敬語になる
桃「失礼しま〜す…」
青「ますッ…」
ころん…ますって可愛いなおい
紫「まだ慣れてないでしょさとみくんw」
んなッ…コノヒトコワイ()
紫「じゃ、ちょっとまってて〜」
え、なんかどっか行くき?
手になんか持ってる…
桃「どこ行くんですか?」
紫「ん〜?5分で戻るから待ってて〜」
……話が通じてない
どこ行くか聞いたのに
青「ねッ…兄ちゃんッ…」
桃「ん?どした?」
青「あの人ッ…安心する……」
桃「そか、もう怖くないか?」
青「怖くないッ…」
紫「ただいまー!」
帰ってきた院長の手には3本の飲み物
紫「ほい、さとみくんにはこれ」
桃「あ、ありがとうございます」
手渡されたのはペットボトルの微糖コーヒー
完全に好きな飲み物バレてる()
俺猫舌だから缶の温かいのは飲めないし、コーヒーは甘すぎても甘すぎなくても飲めない派
だから微糖が1番好きなんだよね
紫「ころちゃんにはこれね〜」
青「ありがとッ…ござぃッ…ますッ…」
ころんは缶の温かいココアを貰ってた
桃「すみません、いくらでした?」
紫「もう、そんなの気にしなくていーの!」
桃「いやッ…でも…」
紫「良いの良いの、そんな高くないし」
たかが自販機の飲み物だから…と頑なに返金を断られた
紫「で…この後どうするつもりなの?」
血、繋がってるんでしょ?と重ねて聞かれる
桃「いや、血繋がってないです」
紫「え?繋がってないの?」
桃「少し…昔の話になるんですけど、」
そう前置きして俺は語った
今の家に17で越してきたこと
隣に住むのがころん1家な事
頻繁に面倒を見ていたこと
3年前に…ころんの母親が亡くなったこと
俺が多忙でその頃から会えなかった事
紫「そっか…そうだったんだね…」
青「ママッ……ポロポロ」
ッころんに耳栓しときなって言うの忘れてたッ…
やっぱり思い出して泣いてるッ…
桃「ころん…ごめんな、思い出したな」
青「いんちょッ…ポロポロ抱っこッ…ポロポロ」
紫「いいよ、抱っこしよっか、よっ……」
青「ママッ…ママァッ…」
院長はやっぱり凄いな…
トラウマ持ちのころんがもう院長に心開いてる……
抱っこされたころんは一瞬で泣き止みママと呼びながらぎゅっとしがみついてる
紫「よしよし…大丈夫だからね〜(ユラユラ」
院長からどこか母性を感じるのは俺の気の所為なのだろうか……
院長は手馴れた様子で体をゆらゆらさせころんの眠気を誘っていた
青「んぅッ…(_*˘꒳˘*)_スヤァ」
あ、寝た
ヤバい、ままにしか見えない()
紫「で…どうするの?ほんとに」
桃「俺的には引き取るつもりです」
紫「そっか、ころちゃんはなんて?」
桃「それがまだ聞けてなくて……」
紫「ころんくん、一旦起こす?」
紫「寝てすぐだけど……」
桃「ですね…本人の意思聞きたいですし」
桃「ころん、ころん、起きて」
紫「ころちゃん、ごめんね、起きて」
青「んッ……んぅッ…?」
青「ママぁ……(スリスリ」
なんか寝ぼけて人の区別がついてないぞこれ
院長のことママって言ってるし
紫「眠いね、ごめんね起こしちゃって」
桃「ころん、俺の事分かる?」
青「んぅ……さとみ兄ちゃん……」
桃「そう、じゃあ俺の隣の人は?」
青「んぅ?………………まま」
うん、間があったわ()
たっぷり10秒くらい考えてたけど当たってないんだな()
桃「ころん、ころんに決めて欲しい事がある」
青「なにぃ……?」
桃「ころんはこれからどうしたい?」
青「…………………やだぁッ…ポロポロ」
青「家には絶対帰んないのぉッ…ポロポロ」
紫「大丈夫…家には帰さないからね」
紫「安心して、大丈夫だからね…」
桃「ころん、こっち向いて?」
青「ひっく……なにッ…、?」
桃「俺は、お前を引き取りたい」
青「引き取る、?」
桃「ころんの父親になる手続きをしたい」
青「それしたら家帰んないでいい、?」
桃「それをしたらお前の家は俺ん家になる」
桃「ころんは、俺と暮らしたい?」
青「ずっと一緒ッ…、?」
桃「おん、ずっと一緒」
青「なぁくんッ……もいるッ…?」
紫「ごめんねぇ、俺はいないんだ…」
青「やだぁぁぁッ…やなのぉぉぉぉッ…」
桃「大丈夫…大丈夫だから、な?」
紫「じゃあ俺と暮らす?」
青「さとみ兄ちゃッ…もぉッ…一緒ッ…」
……どうしたものか
ころんはどうやら、俺とも院長とも離れたくないようだ
紫「さとみくん、どうしよっか?笑」
桃「どうしましょう?ww」
………もういっその事…
いや、流石にこんな事院長に言えねぇ
たった一言なのに…言えない…
家に来ます?なんて
とりあえず落ち着こう俺…
コーヒー飲んで落ち着こう俺……
うん、やっぱり美味い
紫「いっその事3人で一緒に暮らす?」
………!?
桃「ブフォッ!?ゴホッゲホッゴホゴホッ…」
紫「ちょっ、大丈夫!?」
青「ねぇ…さとみ兄ちゃん…お願い」
青「いいでしょ、?だめ、、?」
紫「俺は特に何も気にしないけど…」
紫「ちゃんと生活してるか心配だし」
桃「多分人の事言えないですよ院長」
紫「アレ?」
紫「ま、まぁ、手続きしに行こっか!」
この院長話逸らすの下手なんだよな…
びっくりするくらい下手なんだわ
桃「院長、仕事は大丈夫なんですか」
紫「・・・ま、まぁ大丈夫でしょ」
……こんな院長で大丈夫だろうか…
この病院に務めてまぁまぁ経つけど始めてこんな未来が不安に感じた()
side 紫
あの後俺はすぐに着替え、私服姿になった
そしたら、
青「院長かっこいい!ドンッ」
ってころちゃんに飛び乗られた
軽かったから受け止められたけど
紫「んもう、可愛いなぁ」
市役所で養子縁組の手続きも終え、ころちゃんの父親は児童虐待の容疑で逮捕状が下り次第逮捕するとかなんとかかんとか…
本人は会いたがってないしこっちの知った話じゃないからどうでもいいや
それよりも他のことが問題だった
市役所の人に、俺らに引き取られる事について同意を求められたころちゃんはこの2人じゃなきゃやだ!なんて言って泣き出しちゃって
俺が抱っこすればさとみくんを求め、さとみくんが抱っこすれば俺を求め…
結局両側から2人でぎゅーっと抱きしめたら鼻をスンスンさせてるけど落ち着いた
それでも抱っこ…抱っこ…と小さく声を漏らしていたが()
この様子を見て市役所の人は大丈夫だと思ったのだろう、手続きを進めてくれた
そのめんどくさい手続きも終え俺の家に着替え一式を取りに帰った時の事
青「わぁぁ!書類で散らかってる!」
青「わ!部屋きったなぁぁい!」
なんて家の中を駆け回っていた
こら、汚いってなんだ汚いって
でも元気そうだから何も言わない
桃「wwwwww」
横でさとみくんは大爆笑してたけど
side 紫
紫「ころん!時間だよ!!」
青「ふぇっ……うぅっ……」
学校へ行く時間が迫り時間だよと声をかけた時のこと
クリクリの大きな目に涙を貯めた今にも泣きそうなころんの姿が。
今日あの日か…なんて思ったら
桃「なーくん、今日あの日?」
いつの間にやら隣に来ていたさとみくんが俺と同じ考えを声に出す
紫「うん、そうっぽいね」
あの日とは…この家で3人で暮らすようになってから気づいたこと。
ころんのメンタルが不定期で恐ろしく不安定となるのだ
その日は大体平日に来る事が多く俺達も仕事を休まざるを得ない
恐らくフラッシュバックしてるのだろう
青「ッ…やだぁぁぁ!やぁぁぁぁぁッ…!」
紫「ころちゃん!俺だよ、なーくん!」
最近になって俺は”ころん”と呼ぶようになったのだがこの時は”ころちゃん”へと変わる
桃「ころん!分かるか?俺さとみ!」
まずはどこか宙に向いてしまってる意識を俺ら2人に戻す
基本抱きしめてなーくんだよ、やさとみだよ、と言えば意識はこちらに戻ってくる
青「ぅぅッ……ふぇっ……ひっく…」
紫「よしよし、大丈夫だからね〜…」
意識がこっちに戻ってくればもう大丈夫
10分交代くらいで交互に抱っこしてひたすら大丈夫だと声掛けをすれば基本落ち着く
ちなみにかわりばんこに抱っこをする理由はころんがパニックになるから
抱っこしてもらいたいけど抱っこされるともう片方が居なくなるのではと不安になり泣き叫ぶのだ
今では手が触れていれば大丈夫なまでになったがいつ泣き叫ばれるか分からないから10分程でかわりばんこに抱っこをするようになった
ころんもころんでそれが何となく分かるようになったのか落ち着くのも早くなっていった
引き取ってすぐは頻繁に起きていたのだが最近は頻度も減った。
それでも間隔は1ヶ月程度
1度精神科の方に相談に行く事も考え、ころんに話をすればやだやだと大パニック
今までで1番大きかったような気がする
それから俺たちは2人で話し合い、精神科へ行くのは辞めようという結論に至った
時間がかかってはいるが少しずつ頻度も減ってきているので大丈夫だろう。
桃「ねぇ、なーくん、あのさ」
桃「ちょっと相談したい事あるんだけど…」
紫「ん?どうかした?」
桃「夜勤入るの結構キツくなっててさ」
紫「そっか〜、歳?笑」
桃「なーくんひどい!」
紫「そういえば俺の呼び方変わったよね」
桃「え”っ!?キヅイテタノ?」
紫「院長呼び好きだったんだけどな」
桃「え、戻しましょっか?」
紫「今の呼び方の方が好きだからいいけど」
桃「なら言うなぁぁぁぁぁぁぁぁ!///」
どんな時でもタメ口で呼び方も院長呼びじゃなくなったさとみくんなのでした
コメント
18件
ブクマ失礼します!
最高すぎます🫶ブグマ失礼します🙌