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悪魔・聖職者パロ

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悪魔・聖職者パロ

5 - 怠慢聖職者×高慢悪魔②

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2025年07月24日

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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります

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ご本人様方とは一切関係ありません





どうやって自分の棲家に戻ったのかなんて覚えていない。

明け方にようやく自室にたどり着き、そこでベッドに倒れこんだことは記憶にある。

だけどどうやらそのまま意識を失ったらしい。

次に目が覚めたときには、部屋の外はとぷりと闇に包まれていた。

…また夜が来た。



「…くそ」

ゆっくりと体を起こすと、ぎしりと軋む感覚に眉を寄せた。

…全身が重いだけでなく、腰が痛い。

別に体を重ねるなんて行為が初めてだったわけではないのに、あんなに時間を忘れて溺れたことはなかった気がする。


…気持ちよくなかったとは言わない。

言わないけれど、素直にそれを認めるのも癪でしかなかった。

……いや、本音を言えば気持ちよくなかったどころか……。






ちっと舌打ちをして、半ば無意識に自分の首元に手をやった。

あの行為の後でようやく落ち着いた頃、それまでの自分の痴態を自覚しては顔から火が出そうなほどいたたまれない気持ちになった。

好き放題された苛立ちから「お前、絶対ころす…!」なんて息巻いた俺に、あいつは声を立てておかしそうに笑っていた。

そしてそのまま、首元に噛みつくようにキスをされたのも覚えている。



その時の熱をなぞるように、そこに指を這わせた。

あの青い瞳が恍惚とした目でこちらを見下ろしたこと、俺との行為のせいで荒い息を荒げていた瞬間があったこと…それらを思い出してはどくどくと心臓が鳴る。



矛盾した想いが入り混じり、はぁ、と吐息を一つ漏らした。



コンコン、と、部屋のドアをノックする音が響く。

「はい」と返事をすると、それが遠慮なく開かれた。



「あ、ないくん起きてた」


赤い髪を揺らして、りうらがそこに立っている。

手にはトレイを持っていて、そこにはグラスが一つ乗せられていた。



「水飲む? びっくりしたよ。明け方ようやく帰ってきたかと思うと、ひどい顔してベッドに倒れこんでさ。そのまま全然起きないし」

「…あー…ごめん」


差し出されたグラスを受け取ると、その中身をぐいと一気に呷る。

行為とその後の長時間の睡眠とで、からからになった喉に冷たい水が沁みわたっていった。



「何かあったの?ないちゃん」


りうらの後ろから、いむもひょこりと顔を出す。


「『食事してくる』って出て行ったきりなかなか帰って来ないから、心配したんだよ」

りうらの肩にのしかかるようにして顔を乗せ、いむは小首を傾げてみせた。



「…大丈夫。ちょっと変な人間に絡まれただけ」

吐息まじりにそう答えた俺の手から、りうらはグラスを引き取る。

トレイに乗せ直すと、かつんと金属と触れ合う音が響いた。


「変な人間?」

「……そう。変な神父だった」


…そうだよ、あいつ神父だったはずだろ。

品行方正、敬虔でなくてはいけないはずの立場でありながら、あの場所であんな行為を始める聖職者がどこにいる?

とんだ不良神父だ。

もしくは自分の立場や業務に怠慢であるかのどちらかだ。



「神父? ないちゃん、もしかしていふくんに会ったの?」


傾けていた首を更に傾げ、いむはそう問いを投げてきた。

「いふくん」? その名を聞き返そうとした俺より早く、りうらが「あぁ、そういうこと?」と一つ頷いた。


「まろに会ったんだ、ないくん。大変だったね」

「…お前ら知ってんの? あの神父」


どうやら「いふ」や「まろ」と呼ばれているらしい。

悪魔たちの間でそんなに有名だとは知らなかった。



「知ってるよ。街から少し外れたところにある教会にいる神父でしょ?長身で、青髪の」

「それで明け方まで帰って来なかったんだね、納得納得。ね、りうちゃん」


にやっと笑ってりうらに同意を求めるいむ。

その後ろで黒い尻尾がひょこひょこと揺れている。

りうらも大きく頷いてみせた。



「まろしつこいもんね。りうらも毎回朝まで離してもらえないもん」

「僕もこの前最悪だったよ。もう帰りたいって言ってるのに、『後1回だけ』って言って結局朝まで付き合わされてさぁ」



やれやれ、なんて口調で呆れたように言う2人だったけれど、その声音がどこか楽しそうだったから、あの男を嫌っているわけではないことは分かる。

……いや、むしろ好感すら持っているような響きを含んでいる気さえした。

そうでなければ『毎回』なんて言葉が出てくるほど何度も会いに行ったりはしないだろう。


「……」


2人の言葉の意味するところを理解して、ずがーん、と鈍器で頭を殴られたような衝撃が走った。

瞠った目には、楽しそうに話し続ける2人が映っている。

そのはずなのに、現実的にはどこか心がここにないといった感じだった。

愕然とした面持ちで見据えることしかできない。



「しかもいふくんてさ、あんなにやりたがる割に下手じゃん? まぁ仕方なく相手してあげるけどさー」


『下手』!?あれが!? 思わず声を上げかけたけれど、いやちがうそうじゃないと自分に言い聞かせる。

反論する言葉も、何かを問いただす言葉も出てこず、俺は口をぱくぱくと動かすしかできなかった。

そんな俺をようやく振り返り、いむは同情するように眉を下げる。



「ね、ないちゃんも大変だったでしょ? いふくん下手くそすぎて、相手するの」

「……え…」


そんなことを聞かれても、咄嗟に答えなんて出てこない。

戸惑っているうちに、俺より先にりうらの方が言葉を継いだ。



「まろち、頭使う系は強いんだけどねー。レース系とかシューティング系とかは本当に弱いよね」

「………………ん? え?」


続いたりうらの言葉に、俺は返事をすることもできず、ただ妙な声を漏らして自分の耳を疑った。


「CPUにも勝てない人だからねー。そう言えばないちゃんは、朝まで何のゲームやらされたの?」


そこでもう一度、いむの水色の瞳がこちらを振り返った。

それと目が合ったと自覚した瞬間に、今まで噛み合っていなかったらしい会話の意味が全てパズルようにかちんかちんと組み合わさっていく。

ようやく整合性のとれた一連の流れに、俺は思わず大きく息を飲んだ。


それから自分の勘違いに気づいて、瞬時に顔が真っ赤になるのを実感する。

同時に、何で自分がショックを受けたのか…昨日のあの行為のせいで、自分がどんな想いを相手に抱いてしまったのかも思い知った気がした。

あいつが……「まろ」が、俺と同じようにりうらやいむも抱いたわけじゃないと知って、ひどくホッとしている自分がいる。



そう思考が至ったその時だった。

急に首元がぽっと熱く熱を帯びた気がした。

それと同時にいむが、「ないちゃん、それ…」と目を見開いてこちらを指さしてくる。


言われるまま思い当たったのは、昨日まろが最後に噛みつくようにキスを落とした首。

今そこが確かに熱を持ち始めている。

加えて次の瞬間には、ぱぁっと白く淡い光を放った。



昨夜、行為を終えて恥ずかしさと苛立ちまじりに「殺すころすコロス……!!!」なんて喚いた俺に、まろが一方的にキスで結んだ紋様。

それは悪魔と人間の契約の証だ。


本来、悪魔によって力を得た人間が悪魔の眷属になるんだろう?

なのにあいつは何だ。自分の力を誇示するように、勝手に俺を使い魔にする契約を結んでしまった。



『これ、俺のものっていう目印な』


そう言って一方的に結ばれた「約束」。

相変わらず余裕ぶっていたけれど、それでもどこか嬉しそうに笑うから、あの時俺は何も言えなくなってしまったんだった。



「ないちゃん、いふくんの使い魔になっちゃったの?」


両手を口元に当てて同情に似た言葉を吐いたように思えるけれど、いむの目は笑っているから恐らく手の下で唇も弧を描いて持ち上がっていることだろう。


「なにそれおもしろいじゃん」


りうらまでおかしそうに笑うものだから、俺はいたたまれなくなってベッドから勢いよく立ち上がった。



「〜〜っ、行ってくる!」

光る紋様は、御主人様からの「呼び出し」の証だ。

熱を帯びたそこを手で覆いながら、俺はそのまま部屋を飛び出した。



「いってらー」


声を揃えて笑う2人を置いて、俺は再び人間の住む外界へと下りていった。





こっちは今まで意識を失うくらいだったっていうのに、それを連日呼び出すなんてどういうことだよ。

神聖な教会であんな行為に耽り、悪魔を使い魔にまでする…なんて、 とんだ怠惰な神父だ。

本来の役割を全うする気はあるのかと俺の方が説教してやりたい。

そんなことを内心で毒づきながら、夜の空を駆ける。

ばさりと羽が音を立て、大きく羽ばたいた。



目的地の教会までの道は覚えている。

程なくたどり着いたその建物の前に、待ちわびていたかのように立っている青い影を見つけた。

その姿を視界に留めた瞬間に、胸がきゅうっと鳴る。…鼓動がうるさい。



「…仕事しろよ、この怠慢神父が」

憎まれ口を叩きながらゆるりと降り立つ俺に、まろは目を細めて笑い返した。

あまりにも幸せそうに見えたから、胸がまた不愉快な悲鳴を上げる。

…不愉快…なはずなのに、何故か嫌な気持ちにはならなかった。



…勘違い…なんかじゃないよな。

昨日のあの出会いで、一瞬で堕ちてしまったのは俺だけじゃないはずだ。

そんなことを心の奥底で願いながら降り立つ俺に向けて、まろが大きく両腕を広げてみせる。




そこに飛び込むようにして手を伸ばした俺を、背中の羽ごとまろは嬉しそうに強く抱きとめた。




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