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カンヒュ短編集

10 - 監禁された日帝(第二話)(暴力・微R-18発言有?)

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1,327

2024年08月28日

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注意

・まっっじで微妙にR-18発言有。

・この日帝は別に鎖につながれて怯えてるわけじゃありません。

ただ精神が鎖に繋がれて監禁されちゃったってだけです。

・グロ表現、暴力表現注意

・戦争表現あり

・現実には存在しない条約(同盟)の名前が出てきますがこの小説の完全オリジナルであるため史実とは一切関係はございません。

・戦争賛美の意図はございません。


地雷さんはご自衛ください。

では本編。








「………」


俺はいつも『家』に帰るとまず風呂に入る。

湯をたっぷりと張り、体を洗った後に一気に脱力しながら湯船に浸かるのが至福の時間なのだ。


「…疲れたな」


今はもう無い左目を押さえる。

いつの日か、先輩たちが撃って使えなくした左目。

でも、あれは…

俺が何もわかっていなかったから先輩たちが正しいことを教える為に仕方なくしたこと。

だから、俺は何も気にしていない。

確かに遠近感が図れないのは軍人としてかなり致命的だが、それは実力で補える。

ソ連だっていつも眼帯をしているしな。


「……そろそろ、上がるか」


今日はなんだかのぼせるのが早い。

倒れてしまわない様に、俺はさっさと風呂を出た。








包帯を目に巻いて浴衣を着る。


「先輩、イタ王。

風呂出ましたよ」


そう言いながら俺はリビングへと入った。


「……が、こうだから…」

「嗚呼。まずはこの地域を占領すればあちら側の資源がかなりキツく…」


…二人は何やら資料を見ながら話し合っていた。

床に大量の資料が散らばり、まるで白いカーペットを敷いたかの様。

横を通り過ぎ、冷蔵庫からアイスを出して袋を開けてぱくりと口に含む。

甘くて美味しいからか、無意識に猫耳と尻尾が揺れていたのは内緒だ。


「あ、おかえり日帝」


丁度その時、フィンランドがひょっこりと顔を出した。


「ただいま、フィンランド。

…あの二人は今何してるんだ?」

「んーとねぇ…まぁ、戦争の話。

ナチとイタ王でどこをどうやって攻めるかの議論中みたいだね」

「そうか…まぁあの二人は欧州の人間だしそうなるのは必然か」


…先輩とイタ王は欧州を攻める筈。

欧州は小さいが手ごわい強国の集まり。

あの二人でも陥落させるのにはかなり時間がかかるだろうから、フィンランドが加勢に入るだろう。


(…なら、俺は?)


俺は何をすればいいんだろうか。


「………って……」


(アメリカと闘う…?

でも、今の俺にはそんな力は…)


「…ってい………」


(…とりあえず、もう一度東南アジアの方を全て手に入れて大東亜共栄圏を築ければ…

良いよな……?)


「日帝ってば!!」

「んわ!?」


悶々と考えていた時、バシッと肩を叩かれた。

気が付けば目の前にフィンランドの整った顔があった。


「全く…急に喋らなくなって反応してくれなくったら怖いよ。

僕、お風呂行ってくるってだけなんだけどさ…」

「嗚呼、すまん…気をつけてな」

「ありがと」


フィンランドは去って行った。

その去り際、ぽそりと言った。


「……君もね」


どういう意味かはわからなかった。

だが、聞き返す前にすでにフィンランドは姿を消していた。








アイスを食べ終わって二人の話を聞こうと思ったら、丁度良かったと先輩が微笑んだ。


「何となく俺たちの方の作戦は固まったんだ。

あとは日帝とフィンランドをどうするかだけだな」

「io的にはやっぱり近いしアメリカをやってほしいなって思うけど…日帝、嫌でしょ?」

「…まぁ、命令されればやりますけど…」

「まぁまぁ…命令されなければやりたくはないだろう?

だから、お前にはこの仕事を頼みたい」


そう言って先輩が渡してくれたのは一枚の資料。

題は━━━…


「『ソ連の枢軸化計画』…?」


「…ダッサイ名前なんね」

「それが一番シンプルだから大丈夫だ」

「そういう問題ではなくてなぁ…」


横でイタ王があまりの作戦名の酷さに落胆して口調が外れかけていたが、俺は無視してその資料を一字一句正確に覚える様に読み込む。


「…ソ連を枢軸に入れる…ですか」

「嗚呼。あいつは世代交代したとはいえ、未だに旧国の中では強い影響力を持っている。

アイツを枢軸に引き込めれば、こちらの勝率は格段に上がるだろう」

「…しかし、そう上手く行くでしょうか…?

俺は、ちょっと…この作戦は…」


ほんの少しばかりの、反抗ともいえない反抗。

それが、先輩を少しばかり怒らせてしまったらしい。


「日帝」


低い声で呼ばれる。

無意識に背筋が逆立つ。


「俺の作戦が間違っていたことがあったか?」


目線をあげればそこにあるのは、空虚くうきょを映した冷たい瞳。

血で染まったような赤い目が、ただただ俺を射抜いていた。

無意識に目が見開かれるのを感じる。

体が、勝手に震える。


「…ぅ、…ぁ」


間違っていません、と答えようとした。

でも、出てくるのは震えた声ばかり。

だから俺は、必死に首を振った。


「…ふふ、そうだろう?

よくわかっているじゃないか」


ぽん、と頭を撫でられる。

さっきの冷たい目とは裏腹に、先輩の手は暖かかった。


「…だがな、日帝」


力が入れられる。


「俺に反論しようだなどと考えた時点で一度お前には教育が必要だな」


先輩の口角が上がっていく。

それとは逆に、俺の体はどんどん震えていく。


「一度、向こうへ行こうか…日帝。

ここ枢軸では俺とイタ王が絶対的君主なのだと教えてやろう」








地下室。

俺は手足を縛られて床に転がされた。


「さぁて、言うことを聞かない猫にはどう躾けるべきだろうか」

「んー…まぁ、普通に殴っちゃえば?

ほら、こんな風、にッ!!!」


思い切り殴られた。


「痛゛ッ…!!!!」


抵抗も出来ない体で、思い切り踏みつけられる。

イタ王は枢軸の中では思考・宗教担当みたいな者で一番と言って良いほど非力な存在だ。

でも、それは所詮『枢軸の中』という枠組みで見た時の話。

イタ王は、他国から見れば凄まじく恐ろしい男だった。


「あはは!!

痛い?日帝!?」


狂気的な笑みを浮かべ、恍惚とした表情で蹴り続けられる。

イタ王の細い足が、腹に、みぞおちに、脇腹にめり込む。

あまりの痛さに思わず呻き声が出た。


「い゛…た゛いッ!!」

「あはは、そっか!!!

でも、反論しようとする日帝が悪いんね!!」


やめてと何度も言っても、イタ王は殴る蹴るを辞めない。

…嗚呼、そういえば…

第二次世界大戦の時も思考はこんな感じでイカれてたのを忘れていた…

狂ったように笑い続けるイタ王から受ける必要以上の暴力で、意識を今にもあちらへトばしそうになった時。


「そろそろ辞めろイタ王。

日帝の意識がトぶぞ」


先輩の珍しく焦ったような声が聞こえた。


「んぇー…まだあんまり

やってないよ?」

「お前の体格が悪い。

力自体は非力でも日帝くらい小さい国だとお前の蹴りでも結構痛いんだぞ」

「…………はーい、わかったんね…」


イタ王の残念そうな声と共にお腹にめり込んでいた足が退けられる。

息苦しさから一気に解放され、焦って呼吸をしようとして思い切りむせた。

それを先輩がトントンと背中を叩いて支えてくれた。


「大丈夫か、日帝。

痛かっただろう?」

「せ、んぱ…」

「…もう大丈夫だぞ」


先輩の優しさが、痛む体と心に深く深く沁み渡った。

勝手にぼろぼろと涙があふれてくる。

左目は無いから、右目からしか涙は出なかったけれど。


「…日帝。俺たちが言う事は全て従順に従うと…約束、してくれるな?」


優しい声色で先輩にそう問われれば、俺には頷くしか選択肢はなかった。








「………」


僕はナチたちの会話とイタ王の暴力の瞬間を聞いた。

お風呂から上がって誰も居なくなっていたから…もしやと思って来てみればまさに予想通り。

日帝がきっと何か、ナチスかイタ王が気に食わない行動をやりかけたのだろう。

イタ王の言葉と日帝の声、そして音から察して今回は日帝がただ殴られただけなのだと思う。

でも、僕は自業自得だとは思わない。


(…あれは、ただの暴力だよ…)


あいつらは暴力を『躾け』と称して正当化している。

ああやって日帝をいじめて、いじめて、いじめ抜いて。

そのあとに優しさの混ざった言葉を日帝にかけて、痛みと悲しみで混乱している隙に自分たちの思い通りになる様に首輪をつける。

…そういえば、一番初めの調教はひどかったな。

殴っても殴っても日帝が戦争開戦に拒否するから、犯して、尊厳を完全に破壊して………

そんなこともあって今の日帝は、そのせいで腕にも足にも首にも…なんだったら、口にも拘束具が付けられていると言っても過言じゃない程に縛りつけられている。


でも、そんなのは間違っていると僕は思うんだ。

…だから。


「………もしもし、アメリカ。

……日帝が…」


僕は、G7たちのスパイとなって枢軸国の弱点を探ることにしたのだった。








朝目覚めると、そこは自室だった。

体を動かすと、酷い痛みが全身を襲う。


「痛゛ッ…」


全身がずきずきと痛む中何とか立ち上がり、軍服を手に取る。

硬い着心地は変わらずで、でもこの硬さがあるから気持ちが引き締まる。

痛みと格闘して何とか着終わると、ずっとクローゼットにしまったままだった軍帽の存在を思い出した。


「…そうだ、あれも被っておかないと」


ぽつりと独り言が零れ、クローゼットの扉を開けた。


「…あ、あったあった。

軍帽……ん?」


軍帽は確かにあった。

クローゼットの中の背の低い棚の上に置いてあったのだ。

でも、クローゼットのハンガーをかける棒の部分に一着、服がかかっていた。

何の気なしにその服を引っ張り出した。


「…なんだ、この服………」


出してみれば、それは見慣れない服だった。

沢山の徽章きしょうが胸元に付けられ、丁寧に拭かれているようで一点の曇りも無い。

服は紫紺の色の生地で作られ、しっかりとした造りになっていた。

何となく先輩やイタ王の軍服に形が似ている気もするし、でもこんな軍服の国があったのか、と問われればうーん…とうなるような…そんなデザインだった。


でも、確かなことが一つ。


(……なんか、嫌だ)


なぜか、この服に嫌悪感を覚えた。


(見たこともない筈なのに…なぜ?)


俺はその服を隠すように、奥へ奥へと押し込んだ。

まるで、いつの日か俺がこの軍服を押し入れへと封印したときの様に。








「おはよう…」

「嗚呼、おはよう日帝。今日も早いな」


リビングへと向かえばそこにはすでに新聞を持って先輩が座っていた。


「何の記事を読んでらっしゃるんです?」

「嗚呼、これか。これは昨日のだな」


新聞を渡されたので、俺はそれを受け取って紙面に目を通し始めた。


『昨日午後、G7会議の場に突如として旧国が現れ、第三次世界大戦の開戦を宣言しました。旧国であるナチス・ドイツ、イタリア王国らは自らを“枢軸国”と名乗り、そこには行方不明となっていた大日本帝国陸上自衛隊の姿もあり━━━…』


「……成程、昨日の襲撃ですか」

「随分と話題になっていたようだな。まぁ、これからはもっと俺たちが話題になるんだが」


先輩は意地悪い表情で微笑んだ。


「じゃあ、今日は俺が当番なんで早めに朝食作っちゃいますね」

「ありがとう、日本。実は昨日から楽しみだったんだ」

「…まさか、今日先輩が起きるの早かったのって…」

「お前の料理が早く食べたかったからだ」


自信満々にそう言われ、俺は思わず笑った。








丁度銀鮭があったので焼いていると、


「おふぁよ~……」


と、眠気全開のイタ王の声が聞こえてきた。


「遅いぞイタ王。もう少し早めに起きろ、生活リズムが乱れるだろう」

「うぇ~……これでもio結構早めに起きた方なんだけどなぁ…」


眠い目をこすって、イタ王は洗面所へおぼつかない足取りで向かっていった。

これだからたまにイタ王が唐突に川に落ちたりしないか不安になるんだ。


「…お、良い焼き色だな」

「えぇ、これは美味しくなりますよ」


俺が作るのはもっぱら和食。

フィンランドもイタ王も先輩も作るのは大抵洋食なので俺にとっては4日に一回祖国へと還れる感じだった。


(………あれ、そういえば…昨日、G7の会場に行った時…祖国は、俺を止めたよな…)


菜箸が止まった。


(…なんで俺は、祖国が承認してないのに戦争を始めようとしてるんだ?)


ぐるぐると思考が深い泥沼へとハマっていく感覚がした。


(…俺は…いや、“私”……は…一体…………)


首がなんだか苦しくなる。

手が、足が、まるで重りを付けられているかの様な重さを脳に伝えてくる。

でも、もうすぐ…もうすぐ、外れそうな気が


「日帝!!!!」


先輩の声でハッとした。


「鮭!!焦げかけてる!!」

「え!?うわ、本当だ…!!!」


慌てて火から鮭を下ろす。

先輩も“俺”も、安堵から溜息を吐いた。


「意外と危なっかしいな、日帝…気をつけろ…」

「あはは…すみません…」


乾いた笑い声が漏れる。


さっきみたいな、首の苦しさも腕と足の重さも今はもう感じない。

感じないならばさっきのは気のせいだったのだろうな。








数十分後、食器を洗い終わった俺は軍帽を被って立ち上がった。


「では、そろそろ。

昨日の内にソ連に連絡は取ってあるので行って参ります」

「嗚呼、あとはよろしく頼んだぞ」

「気を付けてなんね~!」


イタ王と先輩に見送られながら家を出ようとしたとき。


「あのさ、日帝。

…僕も行って良い?」


フィンランドがおもむろにそう尋ねてきた。

どうすればいいのかわからず二人の方を見ると、笑って頷いていた。


「…大丈夫だ。行こうか、フィンランド」

「うん、ありがとね日帝」


今度こそ俺たちは家を出た。









「……ナチス」

「なんだ、イタ王」


「ナチスは、この世界を手に入れたらどうするつもりなんだ」


ふと真剣な声色で尋ねられた。

こんな真剣な声で訊かれるのは、イタ王が本気で知りたがっている証拠。

俺は特に何も思わず、ただこう答えた。


「…何がしたいかって…そりゃ……………」







「全世界を平和にする」








ソ連の家の前まで来た。

時間通りなので、容赦なくインターホンを押す。


「…よく来たな、反乱者ども」

「開始10秒でその暴言を聞くことになるとは思わなかったな」


ソ連が早速出迎えてくれた。


「まぁ入れ。外暑いだろ」

「嗚呼、助かる。今日はフィンランドも一緒なんだ」

「ふーん…あっそう。まぁ別に良いが。フィンランドも入れ、すぐにお茶用意するわ」

「ありがとね、ソ連」


ソ連とフィンランドは犬猿の仲。

まぁ、今は何となくいざこざが解決しているらしいが…やはりまだどこかよそよそしいなと感じた。


リビングに通され、俺とフィンランドが並んで座り、その向かい側にソ連は座った。


「……さて、最近話題の枢軸さん反乱者たち。今日は世代交代してもう表に出る事のない旧国である俺に一体何の用だろうか」


ソ連が冷たい目でじっと見つめてきた。

俺はその視線に負けない様、必死に睨み返すように見る。


「…今日は、この書類にサインをしてもらいに来た」


一枚の書類を出す。

ソ連が興味深そうにそれを手に取った。


「…ふ~ん………にっどくよんごく同盟……ねぇ」


不意に黒い笑みを向けられた。


「つまりは、俺を枢軸側に引き入れたいという事か」


肯定。

ソ連は呆れた様に書類を放り出した。


「馬鹿らしい。俺がこんな書類にサインすると思ったか」

「……そう言うと思っていた。

だが、こちらとしてもお前の枢軸加入を簡単にあきらめるわけにはいかない」


俺はもう一枚、書類を取り出した。


「これは?」

「読めばわかる」


いぶかし気に書類を手に取り、ソ連が流し目で眺めてゆく。

そして、ある項を見た瞬間に目が見開かれた。


「…お前、本気か」

「本気でないならお前にこんな書類は出さない」

「…こんなの、許されることではない」


ソ連は頭を抱えて、俺を睨みつけた。

俺は微笑みで返した。


書類の内容は…



『ソ連が枢軸加入を認めなければ枢軸国全体でロシアを全攻撃する』



そんな内容だった。

これが、ロシアが万全の状態でいるならばあまり問題の無いことだったはずだ。

…だが、今は違う。そうだろう?


今、ロシアは戦争中なのだから。


だからソ連は、今のロシアに枢軸に対する抵抗力が無いことを知っている。

だから、目の前の国は葛藤するのだ。


「…どうだ、ソ連。

もしお前が加入するならばウクライナ側を共に攻撃して占領するための手助けをしてやっても良い」


その言葉でソ連は顔を上げた。

歪んだ笑顔が浮かんでいた。


「…やっぱりお前、ほんとに性格悪いよ」

「誉め言葉として受け取っておこう」


ソ連は万年筆を手に取り、日ソ独伊四国同盟の書類にサインをした。








ソ連をとりあえず枢軸の拠点に連れて行くと、先輩もイタ王もびっくりしたような表情をしていた。


「…日帝、まさか本当にやり遂げたのか」

「えぇ。俺、頑張りましたから」


ニッコリ笑顔でそう言うと、先輩も嬉しそうに頭を撫でてくれた。

嗚呼、頑張ってよかったな。

他の人が喜んでくれる姿を見ると、自分の苦労などどうでも良いことのように思えるから不思議だった。


「…ソ連、枢軸へようこそ。

これからよろしくなんね」

「…嗚呼、よろしく頼む」


あちらではイタ王とソ連が握手をしていた。


フィンランドだけが、どこか浮かない顔をしていた。








翌日。


「…なんだ、これ」


アメリカは朝の誰も居ない会議室で新聞を読んでいた。

そこには、『“日ソ独伊四国同盟”締結』の大きな見出し文字。


…嗚呼、とうとう、恐れていたことが起こってしまった。

ソ連が枢軸側に着いてしまったのだ。


「くっそ、なんでだよッ!!!」


机に新聞を叩きつける。

ソ連は旧国とは言え、いまだに強い影響力を誇る国。

そんな国が…枢軸側に、着いてしまえば……


生まれるのは、絶望。


俺に、独ソ不可侵条約が結ばれたとき並みのずっしりとした重りが載せられたような重さがのしかかる。

大日本帝国、ナチス・ドイツ、イタリア王国。この三国でも第二次世界大戦時はかなり苦戦したというのに、そこにソ連も加わっては…


「…どう、すれば…」


俺が頭を抱えて天井を見上げた、その時。


「「失礼します、アメリカさん」」


二つのそっくりな声が聞こえた。

俺は頭を元の位置に戻し、出入り口を見る。


「…おお、急に呼び出してすまんな」










「『海』、『空』」

「いえ、アメリカさんのためならこれくらいどうってことないです」

「海に同じく!」


笑顔で立っているのは、『大日本帝国海軍』だった『日本国海上自衛隊』。

そしてもう一人は、『大日本帝国特攻隊』だった『日本国航空自衛隊』。

どちらも日帝(日本国陸上自衛隊)と同じく元々は軍人であったが、戦後俺たち連合国軍が認めたことで正式に日本国を護る自衛隊の化身となった者たちだった。


「…すまんな、今日呼んだのは…ほかでもない、日帝の事なんだが…今日の新聞は、もう読んだか」


そう問うた瞬間、二人の表情が一気に曇った。


「…日ソ独伊四国同盟…ですよね?」

「嗚呼、そうだ。これが締結されてしまった以上、俺たちはかなりまずい状況だ」


二人は重々しくうなずいた。


「…俺たちは、一体どうすれば?」

「お前たちに、頼みたいことは」



「日帝の洗脳を解いてほしい」


二人は驚いたように目を見開いた。


「日帝…陸の洗脳を、ですか?」

「嗚呼。…あの状況はもう洗脳じゃなくて、精神の監禁と言った方が良いのかもしれないが…

監禁された日帝を助け出せるのは、海、空。唯一の家族である、お前たち二人だけだと思っている」

「…そんな重役、俺たちに…務まりますかね」


海が不安そうに俺を見上げた。

俺は、海と空の肩を叩いて無理矢理笑顔を作った。


「きっと、大丈夫。

日帝…いや、陸の心の奥底には国を愛して護ろうとする本能がある筈だからな」



『だから、頼まれてくれないか』






海と空は、笑顔で頷いた。


「俺たちに、できるならば」


海は大人っぽい微笑みを。

空は、少年のような笑顔を浮かべて、頷いてくれた。





戦争開始まで、あと━━━…








次回終わるつもりです。

短編集なのに長い………


あと、日ソ独伊四国同盟は完全に私が考えたオリジナル同盟ですのでね。

間違えてテストに書くんじゃねぇですよ。どこの世界線見てきたんだお前ってなりますからね。


以上、今日の夜ご飯が塩分多すぎで塩分過多になって頭が痛い天原彗でした。

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コメント

91

ユーザー

これは、日帝を応援したいところだが、、、あえてのフィンランドにしよう

ユーザー

なんで現実の同盟は現在進行形で覚えれとらんのに架空の同盟の名前は漢字ばっか並んでるにもかかわらず一発ですんなり覚えれとんねんワイは………(;ω;)

ユーザー
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