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片目を隠したあなたの姿が。
俺と違って綺麗だった。
ホテルの顔の貴方と
料理に隠す毒の俺。
寝る間も惜しんで作り続けても変わらない腕前。
真っ暗な中に照明がひとつ。
自分の存在が小さすぎて、何も見えなくなってしまう。
何をしたって成功しない。俺の料理はなんのためにあるんだ。
俺しかいないキッチン、動かないカーテン、
もう言えないな、俺が何をしたのかなんて。
「俺のホテルで料理人になって欲しいんです」
俺の居場所なんてどこにも無いはずなのに。
切って 混ぜて 焼いて 隠して
これで正解なのかはわからないけど
俺一人だったこの世界に、アンタが雨とやってきた。
もう1度できる気がしたんだ。
チャンスをくれた、こんな俺に。
別の日に客がやってきた。
次はアイツらに料理を作る。
何も隠さなくていい、自分の思うままに。
無理して作った俺の味。
俺しかいないキッチン、棚の端にある瓶、
もう使わない、最後の隠し味。
美味しいって言われたくて
俺の料理で楽しい食卓にしたくて
あの人と居場所を失わないように
赤と、青と、紫と、黄色が
笑って語って食べるものだから
今までの行動が許されるなんて思ってないけど
やっぱり俺のままでいてよかったって。
振り向いた時のアンタの笑顔が、俺をどれだけ救ってくれたか
恥ずかしいから言えやしないけど
もう1度
笑って、笑って、笑って、そうやって
本当に魔法にかかったように世界は作り変って
キッチンと心に隠された毒を
おいしそうによく噛んで貴方は飲み込んだ
アンタはどれだけ救っていたか、多分アンタは知らないな
これからもずっと、この場所に居られたらいいな。