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紫 × 赤
地雷さん 🔙 推奨
激しく降る雨に追い立てられ 、 俺はコンビニの軒先へ駆け込んだ 。
傘を忘れてきた自分を呪いながら髪を拭いていると ____
その横に 、 見覚えのある横顔が立っていた 。
「 … 久しぶり 、 だな 」
濡れた前髪をかき上げながら 、 相手が笑う 。
高校の頃 、 ずっと密かに好きだった相手 ____ 紫だった 。
卒業以来 、 一度も会っていなかった 。
「 え 、 は … 紫 ? 」
「 幽霊みたいに言うなよ 。 生きてるから 」
くす 、 と笑う声があの頃から何も変わっていなくて 、 心臓が少し跳ねた 。
紫は手にタオルを持っていて 、 当然のように俺の頭にぽんと乗せた 。
「ほら 、 風邪ひくぞ ー 、 髪びしょびしょじゃねぇか 」
「 … ありがと 」
その距離があまりにも近すぎて 、 呼吸が整わない 。
紫は昔からこうだった 。
無防備で 、 優しくて 。
好きになるしかなかった 。
「 … 」
なんだか気まずくて 、 俺達はお互いに目を逸らして黙り込む 。
街灯に照らされた雨粒が線のように落ちて 、 世界を淡く滲ませている 。
「 … 俺さ 、 ずっとお前に言いたかったことがあんだけど 」
唐突に落とされた声に 、 胸がざわつく 。
もう 、 忘れたふりをするので精一杯なのに 。
「 俺 、 高校の時 … お前のこと 、 」
「 … ちょっと待って 」
思わず遮ってしまった 。
紫が驚いたように目を見開く 。
「 その話 、 今さら言われたら、困る 」
「 … なんで 」
「 だって 、 まだ紫のこと好きだし 、 」
しまった 、 と思った瞬間にはもう遅かった 。
雨音の中に 、 自分の言葉が沈んでいく 。
紫は 、 数秒だけ黙っていた 。
そして 、 ゆっくりと俺に近付き 、 俺の頬にかかるタオルをそっと押さえた 。
「 … じゃあ 、 俺も言っていい ? 」
「 … 何を … 」
「 俺も 、 赤のことが好きだった 、 ずっと 」
まっすぐな瞳に射抜かれて 、 息が止まる 。
「 やっと言えた …
遅すぎだけど 、 … 間に合った ? 」
その不安げな声に 、 胸がぎゅっと締めつけられる 。
「 … … っ 、 ん … 間に合ってる … 」
紫が俺の手に触れる 。
… 雨宿りは 、 もう少し続きそうだ 。