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⚠過呼吸
朝起きると時刻は早朝の4時半を回っていた。時計が静かに音を響かせて静まり返る。何時もより永く夢の中へ堕ちていた事に内心喜んで立ち上がると、視界を黒が埋めた。拍子に脚元を疎かにしてしまう。
「あ、ッ」
軽く尻もちを付いて小さく呻き声を漏らす。そんな頭痛のする1日の始まりが最悪を誘った。
空が明るくなってきていたから、善く寝た御褒美にでもと朝御飯に手を出すことにした。食欲があるかと聞かれれば無いが、朝御飯には少し憧れを抱いていた。
台所で食パンを1枚取り出して、何時買ったか分からない砂糖を軽く振りかけてから焼く。本当に食べ切れるかどうか不安に感じていると、オーブンが1つ仕事を終えた音がした。
「あ、ッつ!?」
容赦なく触った過去の自分を恨みながら、机の食器にパンをおいた。何年振りかの朝御飯に少し鼓動が早まっているのが分かる。
パンを手に取ってゆっくりと一口食べて見ると、考えもしなかった、否、考えたくもなかった吐き気が私を襲った。
「〜ッ!」
パンを傍に投げるように皿に置いて、その場から離れる。
トイレの扉を開けると限界が来た。
「ッ、う”」
駄目だ、すぐ傍にトイレがある、、蓋を開け無ければ、、ッ
そんな小さな抵抗も虚しく、抑えた手から抑えきれなくなった其れが落ちている。
「お”ぇ、ッう”、はぁ、ッ」
ロクに掃除もして居ない床に聞きなくない様な音が響く。大して食べてない胃の中は直ぐに空っぽで、其れでもまだまだと吐き出そうとするばかり。
身体の中の酸素はもう尽きた気がするが、吐き出すばかりで吸うことも出来ずにもがき苦しむ。
「ゲホッゲホ、ッ、はッ、」
息が乱れて上手く呼吸が出来ない。
自分でも分かるくらいに愚かな場面に出くわしてしまった。
「カヒュッ、はッ、ヒューッヒュッ」
しまったと思った。
私は自力で息を整えることが出来ない。
さっき迄無かった筈の酸素が次はこれでもかと言わんばかりに増えて行く。吸えなかったり、吐けなかったりで軽くパニックだ。
そして実は、この様にご飯が食べれないのには理由というか、原因がある。
ポートマフィアで、幹部として動いていたある日、それは起こった。取引を終え、次の日の早朝に珍しく朝御飯が渡された。見た事も無い部下が、昨日の取引相手の部下だと疲れきったわたしは気づかなかった。ましてや睡眠不足で5時起き。まともに寝れる筈も無いが。
手渡された食事には毒が入っていた。私には耐性があるから油断していた。どれだけ大きくても飲んでしまえば最悪急死に至る。ましてや動くなんてまた夢の話である。何故私がこれ程健全なのか分かっていないが、体質のおかげだろう。
口に入れた瞬間、舌が焼けるような、否、切り裂かれているんじゃないかと思う痛みが走った。
既に相手は居らず、兎に角私の部下を呼んだ。このまま死んでも良かったのたが、毒だなんていい思い出もない。
意識が朦朧としている中、部下達が必死に森さんの元へ連れて行ってくれたのを覚えている。森さんが此方の様子に気づいて近づいてきた所をみると意識はことりと落ちた。
目覚めるとその日から2週間が経っていた。傍には中也が居て、目を見開いて此方を見ていた。中也に「なに」と声をかけようとしても口が動くばかりで声が出なかった。中也は必死に聞き取ろうとしてくれていたみたいだけど。
そうこうしているうちに森さんが部屋にやってきた。日付け、状態、どうしてこうなったか。色々説明してくれた。
2ヶ月程すると資料の仕事ができる位には回復していた。其れでも筋肉は極限に弱っていて、大変な思い出しか残っていなかった。
そうなると、私は朝食を摂ることに否定感を覚え、この光に当たろうとも治まるどころか酷くなり、1日1日の始まりが重くなって行った。
「ヒュッ、だ、れか”、ッ」
絞り出すような声を出すがまだまだ5時半で誰も来るはずもない。
やがて玄関で力尽きた。