テラーノベル
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胃腸炎辛い…(lll-ω-)
その帰り道。
夜風は少し涼しく、街灯の光が静かに歩道を照らしていた。
三人は並んで歩いている。
昔と違うのは、誰も急いでいないことだった。
「そういえば。」
安吾がふと思い出したように口を開く。
「織田作さん、今日は何を作るんです?」
「カレー。」
「また?」
「まただ。」
太宰が即座に反応した。
「いいねぇ。」
「太宰、今日も来る気か。」
織田作が太宰に聞く。
「当然だろう?」
「当然ではありません。」
「織田作のカレーは人類の財産だからね。」
「大袈裟だな。」
織田作は相変わらず淡々としていた。
だが太宰は機嫌が良い。
探偵社にいた時よりも、ずっと。
安吾はそれを横目で見ながら苦笑する。
「本当に分かりやすいですね。」
「何が?」
「織田作さんがいると機嫌が良い。」
「何時もどうりだよ?」
織田作が一言。
「昔からだろう。」
すると太宰がポツリ
「でも確かにね」
少し考える。
言葉を選ぶように。
「私はさ、誰かといて楽しいとか、安心するとか、そういうのよく分からなかったんだ。」
安吾は黙る。
織田作も何も言わない。
「でも。」
太宰は小さく笑った。
「織田作と安吾といる時間は嫌いじゃなかった。」
夜風が吹く。
誰もすぐには口を開かなかった。
しばらくして。
「それは良かった。」
織田作が静かに言った。
たったそれだけ。
気の利いた言葉でもない。
慰めでもない。
けれど。
太宰は少しだけ目を細めた。
「うん。」
それだけで十分だった。
―――
織田作の家に着く頃には、夜も更けていた。
台所からはカレーの香りが漂う。
太宰は食卓に座ったまま、鍋を覗き込んでいる。
「まだ?」
「まだだ。」
「まだ?」
「まだ。」
「まだ?」
「太宰くん」
安吾が溜息をついた。
「子供ですか。」
「違うよ。」
「子供です。」
「子供だな。」
「織田作まで!?」
抗議する太宰を見て、安吾は吹き出した。
織田作も肩を震わせる。
太宰は不満そうな顔をする。
しかし。
その顔はどこか嬉しそうだった。
しばらくしてカレーが出来上がる。
三人で食卓を囲む。
何気ない会話。
何気ない時間。
誰かを追う必要もない。
誰かに追われることもない。
ただ。
今日あった出来事を話して。
時々笑って。
時々黙る。
それだけだった。
それだけなのに。
太宰はふと思う。
もし。
こんな日々がずっと続いていたなら。
自分は少し違った人間になっていただろうか、と。
「太宰。」
織田作の声で我に返る。
「冷めるぞ。」
「おっと。」
太宰は慌ててスプーンを取った。
安吾が呆れたように言う。
「何を考えていたんです?」
「秘密。」
「ろくでもないことですね。」
「ひどいなぁ。」
笑い声が響く。
温かな灯りの下で。
太宰はそっと目を伏せた。
――ああ。
きっと。
こういう時間を幸福というのだろう。
言葉にするのは少し照れ臭いけれど。
織田作がいて。
安吾がいて。
自分がいる。
ただそれだけの夜が。
太宰には何よりも大切だった。
だからその日も。
誰にも聞こえないほど小さな声で。
「ありがとう。」
と呟いた。
織田作も安吾も気付かなかった。
けれど。
気付かれなくて良いと、太宰は思った。
読んでいただきありがとうございます!
この話はこれで完結にしちゃおうと思っているので次の作品も読んでいただけるとありがたいです!
コメント
1件
うわあ、めっちゃ温かい話……🥺 太宰が「織田作と安吾といる時間は嫌いじゃなかった」って言うところ、すごく刺さりました。 普段は飄々としてるのに、こういう本音をぽろっと出す感じ、たまらないです。 最後の「ありがとう」も、誰にも聞こえなくていいって思ってるのが、もう…切なくて愛おしい。 短いけど、こういう“何気ない幸福”を描けるの、やっぱり幽那さんすごいです。 完結と聞いて寂しいけど、次の作品も絶対読ませてもらいますね📖🖤