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古流斬
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#鬱展開
Mist-404
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<<瞬間移動ポリシー>>
「そう。…でね、“だったらお前が全部決めたらいいじゃん”…て言うの!なんかそれって違くない!?」
「…いやぁ、それは彼氏さんがヒドいですよねぇ。」
「でしょ!そう思うよね?」
“ビ−”
「え!なに?」
僕の通知音だ。
「あ…終了です。えと、“準婚姻制下でのAIとのデジタル不貞”の、謝罪代行は以上になります。
今送ったリンクにある“解消済”をタップして下さい。で、良かったら高評価と登録押していただけると助かります。あ、後でいいです。」
「オッケー!訴訟起こしたときはマジムカついてたけど、なんかスッキリしちゃった。お兄さんにならまた謝って欲しいかも。」
「ありがとうございます!もちろん何もないことを願ってますが、なにかあったら僕が真っ先に謝りますんで!!」
ふぅ…終わった。お互い浮気していたくせにすごく一方的だったな。
僕と受領人は、公園のベンチからそれぞれ立ち上がった。
さて!これで臨時収入が入る。たまには街で買い物でもするかな。
…そういえば最近まったく歩いてない。
良くないぞ。
僕は散歩がてら、ファッション街のストリートに入った。
「うーん……腹減ったな。」
結局、入口のファストフード店まで少し戻った。
CITYは久しぶりだけど、やっぱり高校生ギャルが多いな。まぁ休日だしね。
「今月ギャラ(GB)足りない〜。まだ半月なのに〜。」
「とりあえずアンタ飛びすぎ。ケチャップぐらい“自力”で取って来なって」
「ええー?面倒くさー。いっそケチャップから来てくれんかね?」
「ーなにそれウケる」
ギャラ?あぁGB(ギャラクシーブラックホール)の略ー“ジャンプ”の話か。
…ケチャップにジャンプ使うのか。
僕も人のこと言えないけど、
「あなたのたった1度のジャンプが全宇宙のブラックホールを1024個も消滅させています。」
って宇宙環境活動家に何度も言われ続けたら…
そりゃあね。
ま、そういう僕も定額プランの“飛びMAX”なんだけど。
「…ねぇ知ってる?ブラックホールってあと55年なんだって」
一応知ってるんだな。
「何が?」
「知らんけど、宇宙がなくなる、みたいな?…ロボ?ウスノロロボの蛇カス?だっけ。お天気おにいさんが毎日言ってんじゃん。」
…“ウロボロスの蛇”仮説な。
「あー私あの芸人キライ。顔がムカつくんだよね〜。」
「ちょ、芸人じゃないし」
「でも私も観たよ。それ。」
「マ?観てんじゃん。 それさぁ最後の方、“ブラックホールは毎日毎日産まれてるからそんな心配ない”って…。」
「えー!?ブラックホールの赤ちゃん!かわちい笑」
「かわちい笑」
「でほら…加工した笑」
「足生えてる笑」
「足細〜笑。てかこの間のエステさぁ…。」
…なんの話だったんだよ。
世界中の人がSNS並みにジャンプしてるせいで、あと55年でブラックホールがなくなって宇宙が終わる、というきわめて問題意識の高い課題…
あれ?僕は何をやってるんだ?バーガー食ったんならさっさと出よう。
…そうだ!ちょっと“PARTSつくば”に行ってみるか!
マテリアルステート検査も近いし。
新製品をチェックして来よう。
もちろん今日はジャンプはしない。
宇宙環境のために歩く!
それにしてもいい天気だ。磁気も安定してるし。
だけど…しばらく来てなかったけど、ここ(ストリート)は変わったなぁ。
まだジャンプがない頃の景色しか、
…ん?
「うわ!!危ない!!」
思わず大声を出してしまった。
…恥ずかし。
“シルフィード(情報人格)”だった。
彼が僕の身体をすり抜けて、何か口をパクパクさせながら去っていった。街はこれがあるから面倒だ。
街なかには“ミラージュメタバース”からやって来た彼らを映す映写機でいっぱいだ。
「…まったく、なんで今更リアルに出て来るんだよ。」
人はただの“情報”になってもまだこちら側…現実に未練があるのだろうか?
こっちに来ても“ホログラム”だの”データ”だの罵られて迫害されるだけなのに。
「…なんだか色々あって疲れた。」
あともう少しで着くんだろうけど、…もういいや。
僕は“スクロール”を出した。
(目的地:PARTSつくば)
おなじみの氷風が僕を一瞬で連れ去ってくれた。
<<PARTSつくば>>
あ
…と言う間に到着。
「あれ?入口変わった…よな。」
ポータルスポットから再生されて最初に目に入ったのは、
昔の映画でしか見たことのない豪華な自動回転式のドアだった。
「…儲かってんだなぁ。」
クルッと回って中に入るといつもの賑わいと華やかなショーウインドウがあり、僕の心は躍った。
…次のマテリアルステート検査が10日後という事もあるのだろうが、すごい人混み。
ま、そりゃそうだ。
誰も検査落ちして、シルフィード…ホログラムになんてされたくない。
かといって、生身で宇宙に飛び出したい自殺志願者もいないだろう。
ーその時、背中に異様な気配を感じた。
「こんにちは!!なにかお手伝いできることはございますか?」
真後ろに人類全部を足して2で割ったような顔のAIスタッフが笑顔で立っていた。
僕は少し距離をとって話した。
「う、うーん。まだ良いかな?後でまた声を掛けるよ…あ、じゃあ…そうだ。ねぇ、なんで入り口あんなに豪華になったの?」
AIスタッフは健やかに応えた。
「あれは“シルフ避け”でございます!!回転ドアの半分は映写機が届かない位置にございますのでシルフィードは途中で消えてしまうのです。」
たしかに店内に、姿をノイズで乱す人はいなかった。
でも…
「…消える?」
「ご安心くださいませ!!本当にいなくなる訳ではございません。彼らは映写機から外れると、“ミラバース”−“ミラージュメタバース”のゲートまで戻され、こちらに来た直前まで記憶もリセットされるのです!しかしそもそもホログラムなどに身体パーツは…」
「わかった。もういい。ご丁寧にどうも」
「とんでもございません!ありがとうございます!!」
AIスタッフは最初から最後まで最高の笑みを絶やさなかった。
深淵側から先に覗かれた気分になった。
(人類は…ARGOに世界を任せて良かった…んだよな?)
…何を考えてるんだ。
僕は頭を振った。
あ!
「あった!」
…僕が狙ってる、赤い塗装の“Onehand/Red(ワンハンド/レッド)”。
左腕の最上級モデル。
レトロヒーローっぽくて、遅延が少なくて、これなら宇宙進出後の無重力下でもストレスなく作業できそうだ。
宇宙線も最大97%カット。
僕はスクロールを広げ、(全資産)を黙唱した。
これが買えたら今回のステート合格値35%もクリア出来るし、宇宙開拓者認定も現実味を帯びてくる。
が…
「…まだちょっと足りないな。」
…マジか。
仕事をもっと増やさないといけない。結構頑張っているつもりだったが…。
それどころかこのままだと、今度のクリア条件さえも…。
僕は、入口の回転ドアを通り抜けられず、次々と姿が途切れていく人たちを眺めた。
…そしてショーウインドウのガラスに映った自分も。
…まだほとんど自分の身体のままだ。
「大丈夫、…絶対間に合うさ。」
僕は右腕をさすった。
両親の保険金で買った、カーボンナノチューブの右腕。
それをさすっている左手は、まだ僕のものだった。
(続く)
コメント
1件
第2話、読みましたよ……! 「謝罪代行」って仕事、めっちゃ気になるし、主人公がなんか人間っぽくてダルそうでいいですね笑。宇宙がブラックホール消滅であと55年って設定、軽く言ってるのが逆に怖い……。自分も身体を少しずつ機械に置き換えてるって感じが、静かに重たくて。最後の「まだ自分の身体のままだ」ってとこ、すごく響きました。続きが気になります🤍