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配信を少しずつ再開して数週間。

葛葉は、画面の前では少しずつ「いつもの調子」に戻ってきていた。けれど、それでも時々──他の男ライバーが急に画面に映ったり、ふいに声を張ったりした瞬間、指先がわずかに震える。

そんなときは、叶の存在が背後にあるだけで救われていた。


「葛葉、今日は一緒に寝よっか。通話、切らないで」


「……甘やかしすぎだろ」


「でも、僕にだけは甘えてくれるでしょ?」


「……おまえだけにはな」


通話越しのやり取りだったはずが、気づけば数日に一度、叶が実際に葛葉の家へ来るようになっていた。

何か特別なことをするわけじゃない。ただ、映画を観たり、飯を食ったり、黙ってゲームをしたり。

それだけで、葛葉の中に静かな“安心”が育っていた。





叶の手に触れるたび、わかる



ある夜。二人で映画を観ていたとき、エンドロールのタイミングで、叶が言った。


「……葛葉、手、握ってもいい?」


「……ああ」


差し出された手に、自然と指が絡まった。

あの夜──触れられることすら耐えられなかったあの夜から考えれば、これは奇跡だった。


葛葉は、そっと呟いた。


「……なあ、叶。……“叶だけは平気”って、ずっと思ってたけどさ」


「うん」


「今はもう、“叶がいい”に変わってる。……他のやつじゃダメなんだよ」


叶の目が、ほんの少し揺れた。


「それって……」


「ああ、……多分、好きなんだと思う。おまえのこと」


素直すぎる告白だった。強がりも、冗談も混じっていない。

ただ、必要な人間に対して、必要な言葉を贈っただけだった。


叶は黙って、葛葉の手を少しだけ強く握った。


「……僕も、ずっと前からそうだった。気づかないフリしてただけで。

怖がってる葛葉に、それを伝えるのが……ずるい気がしてたから」


「おまえがずるくても、俺はおまえじゃなきゃダメなんだよ」


葛葉は、苦笑して、目を伏せた。


「ほんとに、ずるいよな。最初から、おまえだけだったのにさ」


「じゃあ……今日から、恋人になろう?」


「……うん」




その日、葛葉の部屋に灯った灯りの下で、

「相棒」だった2人は、確かに“恋人”になった。


体のぬくもりが怖くなくなったのは、叶がずっと側にいたから。

そして今、葛葉はようやくそれを、「愛されてたんだ」と知った。


──彼の世界にはもう、あの夜の暗闇はなかった。

叶の声と、叶の手が、全てを光で包んでいた。

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コメント

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ユーザー

/ 神すぎます 最高すぎます てぇてぇをありがとうございます 壁から見守りたいです

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