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第一話 「15の太宰」
昼下がりの武装探偵社は、珍しく静かだった。
書類に向かう国木田独歩は、ペンを走らせながらため息をつく。
「太宰、少しは仕事をしろ。」
ソファでは、太宰治が頬杖をつき、退屈そうに窓の外を眺めていた。
「えぇ……今日は平和だから、仕事をする気になれないんだよ。」
「毎日同じことを言っているだろう。」
「酷いなぁ。」
そんな他愛ないやり取りをしていた、その時だった。
突然、事務所の中央に白い光が溢れる。
「──何だ!?」
眩しい閃光に全員が目を細める。
光は一瞬で太宰を包み込み、部屋中を白く染め上げた。
数秒後。
光が消えると同時に、小さな人影がソファから床へ転げ落ちた。
「っ……」
国木田は思わず目を見開く。
「……太宰?」
そこにいたのは、ぶかぶかになった黒いコートを身にまとった少年だった。
袖は長く、裾は床を引きずっている。
細い身体に、大人用の服はまるで借り物のようだった。
少年はゆっくりと身体を起こし、辺りを見回す。
「……ここ、どこ。」
今よりも高く幼い声。
だが、その瞳だけは鋭く、周囲を冷静に観察していた。
国木田は慎重に声を掛ける。
「太宰……なのか?」
少年は国木田をじっと見つめる。
数秒、黙ったまま相手の顔を観察したあと、小さく首を傾げた。
「……誰?」
その場が静まり返る。
「何?」
「君、誰なの。」
冗談ではない。
本当に知らないという顔だった。
「私は国木田独歩。武装探偵社の社員だ。」
「……ぶそう、たんていしゃ?」
聞き覚えのない言葉に、少年は一歩後ずさる。
「知らない。」
警戒心を隠そうともせず、事務所全体へ視線を巡らせる。
「ここ、どこ。」
ちょうどその時、扉が開いた。
「ただいま戻りました!」
任務から帰ってきた中島敦は、部屋の異様な空気に足を止める。
「え……?」
視線の先には、小さくなった太宰。
「た、太宰さん!?」
少年は敦の方を見る。
「……誰?」
また同じ言葉だった。
敦も困惑して国木田を見る。
「国木田さん……これって。」
「どうやら、身体だけではない。記憶も十五歳頃まで戻っているらしい。」
その時、机の上で菓子を食べていた江戸川乱歩が、興味深そうに少年を眺めた。
「ふーん。本物だね。」
「本物?」
「十五歳の君。」
太宰は眉をひそめる。
「意味が分からない。」
しばらく考え込んだあと、不意に口を開いた。
「……ここ、ポートマフィアじゃないよね。」
「違う。」
「じゃあ、森さんは?」
誰も答えない。
「中也は?」
その名前に、事務所の空気が少しだけ重くなる。
太宰は全員の反応を見て、さらに警戒を強めた。
「……何なんだよ、ここ。」
逃げ道を探すように視線を巡らせる少年。
今の太宰にはない、年相応の戸惑いがそこにはあった。
誰も知らない。
誰も信じられない。
十五歳の太宰は、突然放り込まれた「未来」の中で、一人静かに息をのんだ。
#太宰治
無名
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コメント
15件
うわ、一気に持っていかれました…!「15の太宰」ってタイトル、もうそれだけで胸がぎゅっとなりますね。15歳に戻った太宰さんが誰も知らない顔をして、警戒して、逃げ道を探す──その描写が鮮明で、今の飄々とした彼とのギャップに切なくなります。特に「中也は?」のシーン、空気が一瞬で変わったのが伝わってきて、まだ1話なのにこれからの展開が気になって仕方ないです…!続き、すごく楽しみにしています🌷