テラーノベル
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私は恐る恐る振り向く。お母様が声を荒らげる時。だいたいお母様が苦しんでいるときだから。でも、このお母様はニコリと笑って
「宣戦布告ですわ」
と言い出した。私には分からない。だって、だってあの温厚なお母様が自分から宣戦布告をしたのだ。よりにも寄って自分の娘に。こうなっては一族の恥と言っても過言では無い。それほどまでに母親としての責務を全うしたいのか……。
私は黙り込んでしまった。だって、自分でもお母様を一族の端にしてしまったから。もうここまで来たら食い下がれない
「あなたはあなたの居場所を作った、なら、私と戦う覚悟ができたってことよ」
そう、私はわかっていた。だから居場所を作った。その居場所を壊さないためにも孤児《みんな》には頑張ってもらわないと。苦しい戦いになるだろう。でも、きっと勝てると信じてる。だから……
「望むところですわ」
と言い。私は後ろを再び向いた。そして邸宅を出て。私は走り出した。涙が止まらない。止まらないのだ。走る事に涙が後ろへと流れていく。お母様ごめんなさい。一族の恥にしてしまってごめんなさい。募る思いの中、私は涙をふいて孤児院へ戻った。暖かく迎えてくれた咲は、私のためにココアを作って待っててくれた。
36歳の夏、まだ暑さが残っていた夏。そんな時に私は母親を一族の端にしてしまった上。戦争の約束をした。まだ、私はお母様に「ありがとう」も言っていないのに
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