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愛してるから、壊れた

14 - 第14話 アーサーの選んだ愛

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2025年08月31日

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夜が明けようとしていた。
古びた部屋に、薄い朝の光が差し込む。


アルの腕の中で、アーサーは静かに目を開けた。


昨夜、すべてを許して、受け入れて、

そして抱かれたことが、夢のように遠く思えた。


アルはまだ眠っている。

無防備な寝顔を見つめながら、アーサーは静かに起き上がった。


涙はもう、出なかった。


「……ほんと、バカみてぇに愛しすぎなんだよ、お前は」


呟くように言いながら、薄暗い部屋を歩く。

カーテンを少しだけ開けると、山の向こうから朝日が昇り始めていた。


その光に照らされて、アーサーは準備していた手紙を取り出した。

前の日、ひとりになった隙に書いたものだった。


アルへ


お前は、俺を愛した。

歪んだ方法で、苦しませながら、でも全力で。


それが嘘だったなんて、一度も思ったことない。


だからこそ、俺はもう、このままじゃいられないんだ。


お前が俺を失ったとき、どうなるかなんて考えたら、怖くて仕方ない。

でもそれでも、お前がこれ以上壊れる前に、

俺が終わらせることを、どうか許してくれ。


お前の愛が、本当に俺を幸せにしてくれたこと。

最期の瞬間まで、絶対に忘れない。


俺の全部は、お前に預けていく。


書き終えた紙をそっと枕元に置き、

アーサーは棚の奥から小さな薬瓶を取り出した。


ほんの少し迷った手が、それをしっかりと握る。


「もう、いいだろ……これで」


最後にもう一度、アルの寝顔を見た。


その顔はどこまでも穏やかで、あたたかくて、

アーサーの記憶の中にある「大好きだったアル」と、まったく変わっていなかった。


「……俺がいなくなっても、お前の中で生きてるなら、それでいいや」


薬を口に含むと、苦くて少し甘い味がした。


床に背を預け、ゆっくりと倒れ込む。

鼓動が遠のき、視界がぼやけていく。


その最期の瞬間、

アーサーの唇は、ほとんど音にならない声で呟いた。


「愛してたよ、アル……

だから、俺は……ここで終わる……」


光が、彼を包むように差し込んできた。


そして――


彼は、静かに息を引き取った。


◆静寂


朝。

アルが目を覚ましたとき、隣にはもう、返事のない身体が横たわっていた。


どんな叫びも、どんな後悔も、

もう彼には届かない。


でもそこには、間違いなく“アーサーの選んだ愛の形”があった。


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