7月7日の深夜。
あの日見ていた星の名前をたどりながら君に会いに行く。
あの日一緒に星を見ていた場所。2人だけの秘密の世界。
君は忘れてしまったかもしれないけど、また君に会いたい。
神様からの許可が降りたんだ。
7月の7日、七夕だけなら生まれ変わる前に会いに行っていいよって。
現世行きの列車に乗り込み、君を想う。
俺と君の町を、君と僕の気持ちを繋ぐ列車が昨日と今日の間を通り過ぎていった。
窓をから外を眺めると、俺が生きていた頃よりも随分と風景は変わってしまっていた。
もしかしたら、あの駅もなくなってしまっているのかな…
いたたまれない気持ちになって、進む秒針を眺めることしかできなかった。
君に逢えると思ってもいなかった。
このまま、消えてなくなってしまうと思った。
どうにかして君に会いたいと願った。
そんなときに、神様に告げられた言葉。
”未練をなくしてくるように”
君に逢える夜を指折り数えて待っていたんだ。
会いに行くよ今、星を辿って。
夜の闇に包まれた君の町。
君がいるかはわからないけど。
俺たちの星合を知っているのは、あの日一緒に眺めた、夜空に浮かぶ月だけ。
降り立ったホームにはあの日と同じ夏草の匂いが広がっていた。
懐かしいこの匂いを胸いっぱいに吸い込み、走り出す。
あの日と同じ場所。
あの日一緒に星を見た待合室に君は座っていた。
橙「しゃ…る……?」
橙「なんで…」
青「神様にお願いしたらさ、ok貰えちゃったw」
青「置いてってごめんね?」
橙「会いたかったッ…」
久しぶりにあった君は少し痩せていたけど、
はにかんだ明るい笑顔に透き通った涙がとても美しいと感じた。
橙「手繋いでくれんの?」
しょんぼりとしながら呟いた君の手にそっと触れて、指を絡めた。
青「えっと…」
青「元気にしてる?」
橙「急に元気ってなんやねんw」
青「そっか…」
話したいことは山ほどあるはずなのに、君に触れた瞬間飛んでいってしまった。
君の速い鼓動が手をつたって伝わってくる。
君を考えるだけで鼓動が高鳴って、でも言葉に表すのは難しくて。
俺の鼓動も君に伝わってるよね。
言葉なんていらない。高鳴る鼓動が変わらない愛を伝えてくれるから。
夜が明けたら、また僕らはなればなれなの。
世界が俺たちを引き離そうとして、
別々の世界に生まれ変わらせたとしても、君を隠したとしても、
重なる愛がが導いてくれるはず。
君と俺の世界が真っ二つになっても星の河を渡って会いに行くよ。
青「夜が明けたら、帰らなきゃ」
橙「そんな…」
橙「あとちょびっとしかないやん…」
橙「嫌や…」
橙「またしゃるとお別れせんとあかんの?…」
君の瞳から宝石が溢れる。
青「会いに行くよ」
青「絶対に。」
青「だから涙拭いて?」
橙「うん”ッ…」
大丈夫。逢いに行くから。
何度生まれ変わっても。どこに生まれ変わっても。
二人の星合を知っているのは、見上げた夜空に浮かぶ月だけ。
青「明るくなってきちゃったね」
橙「嫌やッ…離れたないッ……」
青「大丈夫だよ」
青「ずっと見てるから」
橙「また…帰ってきてほしい…」
青「生まれ変わる前に1回だけって言われちゃったんだよねw」
青「ごめんね?」
青「でも、絶対にうるみやのところに生まれ変わるから」
青「あのさ、神様が言ってたんだけど」
青「星に願いをかけるときは誰であろうと関係ないんだよ」
青「一緒に祈ってくれる?」
橙「うんッ…」
橙「しゃるッ」
橙「愛してるッ…」
青「俺も愛してる」
窓から差し込む光の粒が
誰も居ないシートにこぼれた。