「そうですね……。今のところ目ぼしいものは、まだなかったような……」
特別目に留まるようなものは見つけられなかった気がして、そう正直に答えた。
「そうか、それは僕も思っていた。それほど興味を惹かれるようなものは、まだなさそうだし、やっぱり君は見る目があるな。君と来て、よかった」
そんなことを言われて、我ながら単純だとは思うけれど一気にテンションが上がってくる。
「あの、信頼をしていただいて、ありがとうございます」
ほっぺたの赤みを両手で挟んでひた隠しにしつつ、矢代チーフに素直な感謝の気持ちを伝えた。
「川嶋さんは、仕事もよく頑張ってくれているし、僕は君のことを買っているから」
「そんな……」と、言葉に詰まる。チーフから褒められたりしたら、ますます顔が熱くなってきてしまいそうで……。
仕事中だからとわかってはいても、彼の言動のひとつひとつにときめいて、想いは増していくばかりだった。
その後は会場内でいくつか面白そうなブースを見つけて、新商品の仕様をチーフと話し合ったり、企業のスタッフさんと名刺交換をして情報を仕入れたりして、そろそろ展示が終わりに近づいてきた頃──
私たち二人は、「あっ!」と同時に小さく声を上げて立ち止まった。
──そこには、双子のこぐまのミコ&リコを始めとするキャラクター制作会社の、「ドリーミーカプセル・コーポレーション」の企業ブースがあった。
ブース内には、新たに発売されるキャラクターグッズの展示もあって、チーフと二人で見入ってしまった。
「なんだかここを一番念入りに見ているような……」
ふと我に返って口にすると、
「ハハ、だがここがやっぱり一番かわいいだろ?」
チーフがメガネの奥の涼しげな眼差しを細めて、苦笑いで答えた。
そういうチーフの方が、可愛すぎてもう……。
あなたの方が断然可愛いです──なんて、もちろん口に出しては言えないのだけれど、そんな彼の顔を見ていると、私まで照れてきちゃいそうだった……。
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