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「ごめんなぁ。彼は俺らにとって非常に重要な存在なんだ、分かってくれよ?」「合宿の時みてぇに上手くいくと思うなよ」

「おお、怖い怖い。欺くことと逃げる事だけが取り柄の俺にゃあ余る相手だなぁ」

そう軽口を叩きながらも、コンプレスは何処か余裕のある表情をしていた。何か隠し持っているのか、旗また逃げおおせる算段を付けているのかは分からない。だが、一つだけ確かなことがあるとすれば彼は敵であり、狩兎を拘束し連れ去った張本人であるということだ。

「今ここで……狩兎を解放しろ」

「それはできない相談だ。俺だって好きでこんなことしてるわけじゃないんだぜ?」

「……なら、力尽くでも!」

轟は氷結を放つが、コンプレスはそれを避けるとそのまま姿を消した。それと同時に背後から荼毘が現れ、轟に向かって蒼炎を放つ。それを氷壁で防ぐが、既に二人とも逃げ出したようだ。

「クソ……クソッ……!なんでだよ……っ!」

轟は悔しさを滲ませながら拳を握りしめる。そしてそのまま壁を殴りつけると、パキリと音を立てて氷が砕けた。

「絶対、絶対に取り戻す……!」

そう決意すると轟は走り出した。その目には強い意志が宿っていた。

然し、単独で敵連合との戦闘を行ったことや、許可なく個性を使用した戦闘を行ったことなどで轟は謹慎処分となってしまう。

「……いいか、轟。今後勝手な行動は禁止だ。勿論狩兎を勝手に探しに行くことも許さん。お前はまだ子供だ。一人だけで何でも解決できると思うな」

担任である相澤からの言葉に轟は項垂れることしかできなかった。自分の無力さを痛感すると同時に、狩兎と過ごした日々を思い返す。彼はいつも優しかったし、自分の事を心配してくれていた。それなのに自分はそんな彼を傷付けてしまった上に助けることすら出来なかったのだ。

「……はぁ。干渉に浸る暇があるくらいなら、今のうちに鍛錬でも何でもして力を付けろ。今のお前はただ落ち込んでいるだけの子供だ」

「……はい」

「分かったら、さっさと部屋に戻れ」

相澤に促されて轟は立ち上がる。そしてそのまま部屋を出ていった。その足取りは重く暗いものだった。

───

謹慎期間中、轟はひたすら己を鍛えることに集中していた。個性を使いこなすための特訓だけでなく体力作りや筋力トレーニングなども欠かさずに行い続ける。

そうして過ごしているうちにあっという間に時間が過ぎていった。そしてやっと謹慎が解けた後も彼は訓練を続けながら日々を過ごすようになったのである。

そんなある日のこと、轟はある場所へ向かっていた。それは以前狩兎が住んでいたマンションだ。そこに行けば何か手掛かりが掴めるのではないかという期待を抱いてやってきたのだ。

「ここ、か」

目の前には古びた外観をしたマンションがあった。その外観とは裏腹にセキュリティだけはしっかりしているようで、監視カメラが設置されているのが見える。

轟は一度深呼吸をすると意を決して中へと足を踏み入れた。エレベーターに乗り込んで目的の階まで上がると、そのまま廊下を進んでいく。

そして一つの部屋の前で立ち止まった。表札には”大橘”と書かれているが、それが狩兎の部屋である保証はなかった。それでもここまで来たのだから確かめなければと思いインターホンを鳴らすが反応はない。

試しにドアノブを捻ってみたが鍵が掛かっているようで開くことはなかった。

「……やっぱり、鍵掛かってるか」

そう口にして、ふと思い出した。

『これ、ここの合鍵な。来てもいいが、誰にもバレないように来いよ』

そう言って渡された鍵がポケットに入っている。それを取り出して鍵穴に差し込むとカチャリと音を立てて解錠されたのが分かった。

「……お邪魔します」

小さく呟いてから中へと入る。部屋の中は薄暗く、人の気配は全くなかった。辺りを見回すと玄関に靴があるのが見える。

「あの時のままか」

あの日、狩兎を追いかけてこの部屋に来たこと。そしてそこで見た彼の生活の痕跡を思い出しながら轟は家の中を見て回る。だがやはり何処にも人の姿はなかった。

「やっぱ、いねぇよな……」

分かってはいたが落胆する気持ちは拭えない。それでも諦めきれずにいるとダイニングテーブルの上にメモのような物が置いてあることに気付いた。それを手に取ってみると座標のような数字の羅列と名前が書かれていた。

「これは……」

轟はすぐにその意味を理解する。この数字はきっと敵連合のアジトの座標だ。

今すぐにでも一人でいいから向かいたかったが、心を落ち着かせてしっかりと考える。

「俺一人じゃまた逃げられちまう……相澤先生に話すべきだな」

そう判断すると轟はメモをポケットにしまって足早に部屋を後にした。そしてそのまま雄英へと歩を進めたのだ。

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