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太宰「雷……。」
兄さんが僕の名前を呼ぶ。
もう遅いだろう。川は目の前。
抵抗されても、体力の無い兄さんはきっと僕に負ける。
きっと。
雷『何?今更懺悔?』
はは、と乾いた笑みが零れた。
別に言い訳が聞きたいわけじゃない。
太宰「…済まない。」
あろう事か兄さんは僕に近づいた。
思わず目を見開いては背中に兄さんの手が回る。
雷『…なんのつもり?』
それをしたところで大したことは起きない。
それは兄さんだって分かってるはず。
太宰「……何か特別なことがしたいわけじゃあないんだ。」
雷『特別なんて要らないよ。怒ることは人は当たり前だし悲しむのも喜ぶのも…』
僕はそっと言った。
雷『_________死にたくなるのも。』
太宰「………。」
兄さんは動じなかった。
当たり前か。そうだよな。当たり前、だよな。
太宰「雷、少しだけで構わない…。私と、話そうか。」
兄さんは微笑んで僕に言った。
雷『………。』
太宰「ちょっと、泣かないでよ。」
表情を変えずに兄さんは僕の涙を拭う。
言い方は変わってない。けど、何処か暖かいと思うのは罪でしょうか。
頭を撫でられた。
話を共有してくれた。
気が、引けてしまったじゃあ、ないか。
気がついたら一緒に死ぬ気なんて、何だか起きなくなってしまって。
その日は一日中語り合った。
こんなの、こんなのこんなの。
『……狡いなぁ…。』