20
ⅶ
目覚ましが鳴る。
僕は目を覚ました。
また夢を見た。
『甘ちゃん、起きたの?』
琥珀さんの声が聞こえた。
もう起きていたみたいだ。
『怖いこと、あった?』
『え、』
僕の目から、何かが流れていく。
泣いていたのか、
あの夢のせいかな。
多分今回のは琥珀さんと離れ離れになる少し前のこと、
夢の中でも、僕は泣いていた。
琥珀さんも泣いていた。
あの時と同じように、
怒鳴って、泣いて、結局僕が悪くて。
僕は昔と変わってないのかな。
『ごめん、怖かったわけじゃなくて…悲しい夢を見てたからだよ、』
『悲しい夢?』
琥珀さんが首をかしげる。
『琥珀さんと離れ離れになる少し前のことで…』
僕は言う。
思い出すだけで辛い。
『でも、また会えたよ。これからはずっと、一緒にいようね。』
琥珀さんは僕にもたれかかり、言う。
あれから何年経ったのだろう。
夢の中の琥珀さんはまだ、小さかった。
でも、また会えたんだ。
会いに来てくれたんだ。
『会いに来てくれて、ありがとう。』
僕は笑顔でそう言った。
今日も剣士所に行く。
でも、すぐ近くだ。
着くとすぐに、皆が昨日の怪我を心配してくれた。
更衣室で服を着替えて、剣を取る。
今日は、
前に行った、ショッピングセンターの付近の見回りだった。
第一隊はまず、ショッピングセンター内から見ていく。
『銅!ここに来たことはあるのか?』
如月さんが言う。
『はい、琥珀さんと一緒に行ったことがあります。』
『ここにはもう言ったのか、お店がたくさんあるだろ?まぁ、たけー服ばっかだけどな。』
確かに、どれも高い服ばっかりだった。
『そういえば、甘君とはここで会ったんだったね。』
鷹也隊長が言う。
『はい。男たちに襲われそうだったところを助けてくれました。あの時は本当にありがとうございました。』
僕は頭を下げる。
『そこで、甘君を剣士に誘ったんだったね。』
『そうだったのか!』
『そうだったのですね。』
如月さんと東雲さんが驚いたように言う。
そんな話をして、問題なく午前が終わる。
昼食は、ショッピングセンター内にあるフードコートで食べた。
『やっぱここのラーメンうめーぞ!食うか?』
如月さんはほとんどいつも元気だった。
『大丈夫です。』
僕は断った。
食べ終わり、午後の見回りに。
外を出て、周りも確認してみる。
と、
ブゥンブゥーン!
ノーヘルで二人乗りをしている男たちが、駐車場でバイクを吹かしながら走らせている。
駐車場内でそれなりにスピードを出し、蛇行運転をしている。
人が歩道を渡ろうとしているのに、あえて近づいて、吹かす。
そのまま走り去り、車用の駐車場にバイクを1台ずつ止めた。
『彼らに注意をしないとですね。』
東雲さんが言う。
注意しないと危険だ。
僕たちはその男たちの方へ行く。
『申し訳ありませんが、こちらは車用の駐車場です。移動をお願いします。』
鷹也隊長が言う。
『あと、先ほどのは危険ですし、迷惑に…』
『は?誰だよ、話しかけんな。』
1人の男が、機嫌悪そうに言う。
こちらにお構いなしでタバコに火をつけた。
『こっちが迷惑なんだけど?ここ空いてるんだし、別にいいだろ。』
また、別の男が言う。
鉄パイプを持っていた。
『てか、アンタら剣士?前に問題起こしてたくせに、ヒーロー気取りとかキモ。』
仲間だと思われる女が言った。
『剣士をバカにすんな!お前らみたいのがいるから…』
如月さんが、怒鳴る。
『やめるんだ如月さん、』
東雲さんが如月さんを止める。
如月さんは悔しそうだった。
『剣士って、ろくな奴いないんだ!まぁ、あんなことしたんだからそうなるよねー。ほんとダッサ!』
女がバカにするように笑いながら言う。
『てめぇ!』
如月さんが怒っている。
『如月さん!』
東雲さんが必死に止める。
『へへっ!お前、如月っての?剣士とか、島のためにとか言ってさ?ただ吠えるだけでソイツに止められて、周りに迷惑かけて恥ずかしくないの?お前マジでダセェぞ?』
男がそう言い、タバコを吸う。
そして、
タバコを如月さんに向けて投げ捨てる。
『吠えるだけがダセェ?なら、戦うか?お前らだって口で言うだけじゃねーか!あぶねーことばかりして、それがカッコいいとでも思ってんの?それが1番ダセェよ!』
如月さんはかなり怒っている。
それは、周りも僕も同じだ。
男は煙を吐き、
『いいぜ。お望み通り、あの世へ送ってやる!』
『血祭りだ!』
男たちが襲ってくる。
1人の男が鉄パイプを振り回してくる!
如月さんはお構いなしに、男たちへ走る。
振り回された鉄パイプが、如月さんに向かっている。
『そんなもんか?』
如月さんは華麗に避ける。
そして、鉄パイプを持った男の顔面に蹴りを入れる。
『あぎゃ!』
男が情け無い声を上げる。
『次!』
他の奴らはナイフを持っている。
でも、如月さんは走る。
僕も行こう!
戦わなければ!
男たちへ走る。
剣を握り。
如月さんは別の男の顔面をぶん殴る。
『ヘッ!剣なんか必要ねーな!』
剣を使わずに戦うなんて、強い!
『次はお前だクソ女!女だからって容赦しねーぞ!』
僕の出番はなかった。
と、
アイツ!
鉄パイプを持った男が逃げている。
あのままじゃ、危険だ。
僕はその男を追いかける。
『どこまで逃げる気だ!』
男は建物の裏へ曲がる。
僕も追いかける。
!
そこに、複数の人がいた。
『おー釣れた釣れた!』
鉄パイプを持った男が言った。
『なんだ?』
『面倒ごとを持ってくんなよ。』
『コイツに襲われたのか?』
複数の人がこちらを見た。
『ハッ!ただのガキじゃねーか!』
『人狼か?でも、俺たちには勝てねーザコだろ?』
『おいおい!後ろの女はビビってんぞ!こりゃ傑作だな!』
僕の後ろには震えている琥珀さんがいた。
守らないと、
でも、こんなにたくさんいる人を1人で?
鷹也隊長も如月さんも東雲さんも来ていない。
でも、やらなきゃ!
僕は剣を握り、構える。
『ヤるきか?』
『生きて帰れると思うなよ?』
『終わったな、お前。』
!
襲ってくる。
僕は、その場で横に1回転し、剣に勢いをつけて、
男たちに力を入れて振る!
数人がそれをナイフで受け止める。
周りからまだ襲ってくる。
1番近い男の腕に、剣を刺す。
また、別の男の足にも剣を刺す。
『グッ!』
昨日撃たれた肩が痛む。
だが、また別の男が襲ってきている。
まずい、
間に合わない!
このままじゃ殺される、
『銅に手を出すな!』
如月さん!
ほんの一瞬で、ほとんどの敵が倒された。
『お前ら、オレの仲間に手を出すなよ!』
如月さんは風のように走り、敵を倒す。
『ーー!』
速い!
強い!
カッコいい!
『終わりだ!』
如月さんは、最後の男を倒した。
『大丈夫か!』
如月さんがこちらに走る。
『あぁ、おかげで助かりました。ありが…』
『よかったぜ!大事な銅を守れて!』
如月さんは喜んでいた。
『でも、1人で行くなんてあぶねーよバカ!バカガネ!オレが気づかなければ、行かなければ、死んでたかもしれないんだぞ!』
如月さんが怒ってきた。
いや、
怒ってくれた。
『ごめんなさい、』
『でも、銅のおかげでコイツらを見つけられたし、安全にはなったはずだ。結果的にはいいことをした!それでいいんだ。』
如月さんは元気でちょっとやんちゃな人だと思ってた。
でも、仲間想いなところもあるんだ。
『シンちゃんのとこに戻ろーぜ!』
『はい!』
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