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「5555、、、話がある」
「え? 母さん、、、、、!」
背後から呼ばれて振り返ってみれば、そこにいたのは番号1255。俺の母だ。
「どうしたの、、、話なんてあの日以来じゃない?」
「そうね。良い? 聞かれるとマズイから一度しか言わないよ」
母さんは俺の耳元でこう囁いた。
「人類の時代を取り戻さない?」
「え、、、、、」
人類の時代を取り戻す。。。
それは【皇帝様】の支配を取り除くという事で良いのだろうか。
母は俺と同じ【異端】だ。俺たちはそれで、ずっと辛い思いをしてきた。
だが、良いのだろうか。
母さんの目を見て、俺は狂気を感じた。
母さんは【皇帝様】を殺す気だ。
そんな事、通常は果たせる訳が無い。
だが、母さんなら、、、番号1255ならそれすら出来てしまうような気がしてしまう。
番号1255は【異端】。だが、それは俺のように価値観の違いとかそういうレベルでは無い。人として、生物として、存在としての次元が違う。彼女は優れ過ぎている。
俺がここでこの話に乗ってしまえば、取り返しのつかない事になるかもしれない。
俺は【皇帝様】が憎い。それこそ、死んでしまえば良いのにと何度思ったことか。だが、本当に殺せるとしたら、俺はどうすれば良い。。。
皆の幸せを考えると返事に詰まる。
皆の幸せ、、、?
ああ、気づいてしまった。皆の幸せを考え、迷った時点で、俺の本心では殺したいと思っていたのだ。
ずっと否定されてきて、無意識のうちに自分を抑えるようになっていたのか、、、
殺したい。それは本心だ。
だが、本質では無い。俺は殺して、どうなりたい、何を掴みたい?
俺は、、、
「俺は自由を掴みたい」
俺は番号1255の目を見てそう言った。
もう逃げられない。覚悟は決まった。
「じゃあ、詳細は後ほどね」
俺は【皇帝様】を殺す。
***
「やっと着いた。こんなところに部屋があったのか、、、」
「まあ。ここを知ってるのは、私と【皇帝様】だけだからね」
計画を説明したいと番号1255に言われ、やって来たのはシェルターの端に隠されていた部屋だった。 その部屋には操作型の機械が沢山置かれている。
「ここは、研究室か、、、?」
「そう。私はシェルターに来てからずっと、ここで研究をしているの」
「へー。何の研究を?」
「それは難しい質問ね。まあ、言うならば”とある未知の物質”の研究かな」
「”とある未知の物質”?」
「それを私、、、 いや、私と【皇帝様】は【物質X】って呼んでるの」
母さんと【皇帝様】しか知らない情報!? という事はまさか、、、、、
「もしかってコレって聞いちゃマズい機密情報だったりする、、、?」
「そうよ。バレたら即刻死刑ね」
「マジか、、、」
「まあ、私たちはどうせ一度ここから離れるから大丈夫よ」
「一度離れる、、、 それってどういう事だ?」
「それは今から説明する」
そこから、番号1255は話してくれた。人類の時代を取り戻すために、俺がどう動けば良いのかを、、、
***
「おいおい、ここまでとは聞いてねーぞ!!」
研究室までの一本の通路。そこで俺に向かって、百近くの量産型が襲ってくる。
「仕方ないでしょ。これでも、警備は少ない方なんだから。あとニ分ぐらい耐えてね」
「ニ分!?それは無理があるぞ!」
「大丈夫よ。向こうはあなたを殺せない。根気強くいきましょう!」
「俺を殺せない? なんで?」
「それは秘密」
「やっぱり、何か隠してんな。って、うわっ!!」
量産型の攻撃が俺の顔を掠った。
「ほらー。話をする暇あるの? 」
「うるせぇ」と言ってやりたいところだが、本当にそんな事を言っている余裕は無さそうだ。量産型が俺の身体を押して、進もうとしてくる。
コイツら量産型のサイズがデカいから抑えられているが、小型のでも来たら対応しきれないいぞ。
なんだ? 何かが俺の足元を抜けていったような気が、、、
ウィーーン
ドアの方向から、何か硬いものが削られているような音がした。 嫌な予感がした俺は、一瞬その方向を確認する。
「これは、、、 ヤバい!」
モータ付き自動車模型のような造りの、小型機械がそこにはいた。その先端にはドリルが付いていて、それがドアを削っている。
「母さん、ヤバい! ドアが削られる!」
「大丈夫。その程度なら想定内よ。このドアは特殊だから、まだしばらく持つわ」
別の事に意識を向けていたせいで、体勢が崩れた。量産型を止めなくてはならないというのはわかっている。だが、この体勢では思っているように力が入らない。そのうえ、その崩れは時間が経つほど大きくなっている。
立ち直そうと、足を擦って動かしたその時、右膝が崩れた。それと同時に量産型を押さえる掌に強い力が加わる。
もうダメだ、、、 あれ?
量産型が押してこない、、、?
そういえば、理由はわからないがコイツらは俺を殺せないのか。あのままなら、俺は本当に死んでいたかもしれない。
待てよ、、、
「あー、死ぬー!」
勿論、嘘だ。俺は全然平気。
だが、 量産型も小型も、俺の声を聞いて動きを止めた。
マジで俺を殺せないのか、、、
でもおかげで何分でも耐えられそうだ。
「今、死ぬって聞こえた気がしたけど大丈夫ー?」
「ああ、大丈夫だ! こう言ったらアイツら、動きを止めてくれるんだよ」
「あー、そういう事ね。こっちもあと少しで準備が終わる」
「あと少しか、予定より早いな。」
「そうだね。でも油断はしないでね。私の見立てだと、そろそろ来るから、、、」
「来る、、、? 一体何が?」
「そんなの決まってるでしょ。【皇帝様】よ」
【皇帝様】か。 てっきり、もう存在しない偶像的な存在かと思っていた。だが本当に存在しているのか、、、?
その瞬間、俺の身体は強風に揺らされた。重みのある爆発音が、機械らの向かって来る方向から鳴り響く。飛んでくる塵が目に入らないように気をつけながら、俺は前を向く。しかし、光が何かに反射していて良く見えない。
「番号1255、5555。君たちは僕が特別に対処する」
やっとまともに目を開けた。そしてわかった。光が何かに反射していたのか、、、
俺らを対処すると音を出したのは、巨大な金属の塊だった。その見た目と流暢な話し方から、他の機械とは違う事は明確。ここまで高性能な発音機能を持っていながら、おそらく戦闘型。正直勝てる気がしない。だが、勝てなくても良い。あと少し時間を稼げれば、それで良いのだ。
「よし。根気強くいくぞ!」
あの巨体でどうやってこの細い通路を進んだ、、、? その疑問はすぐに消えた。
金属が擦り切れるような音がした後、俺の背後で鈍い衝突音が鳴る。
ワイヤーだ。ヤツの巨体からいつの間にか放たれていたようだ。この速さだ、もし当たれば俺は死んでいた。それでも使ったという事はおそらく、そんなミスはしないという絶対的な操作性が実証されているのだろう。この異常なまでの性能。そうか、、、
「お前が【皇帝様】か!」
僅かではあるが、何かが空を切る音が聞こえる。おそらくワイヤーが来ている。
よく見ろ、、、
あった! あの二つのワイヤーは俺に向かって来ている。動きを封じるつもりか、、、
「母さん! ドア開けて!」
後の事を考える暇なんてない。最善じゃなくても安全策を取れ。
俺は姿勢を低くし、飛んできたワイヤーを避ける。その姿勢を維持して、ドアへ走る。
「オッケー、開けたよ!」
ドアが開くと、研究室で強い紫の光が発生していた。母さん曰く、これは【物質X】が暴走状態に入ると起こる現象らしい。
「準備は終わったか?」
「おかげさまで、丁度終わったよ。そこに印があるから、そこに立って」
「わかった。これで良いのか?」
「うん、ばっちり! じゃあ、起動するね」
俺を追って量産型も来たが、もう遅い。母さんがポケットからスイッチを取り出す。
カチッ
その瞬間、紫の光が霧のように俺の視界を覆った。。。
***
「どこだよ、ここ」
青い天井、草花で溢れた床。
番号5555は【地上】で目を覚ました。