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雪乃が手に取ったのは先ほどミナミから貰ったクッキー。
「ほらムウマ、お菓子だよ〜」
そう言って木の幹周辺でクッキーを持った手をゆらゆら揺らす。
まさかそんなので現れるわけ…と思った美希の視界に、薄っすらと何かが映り込む。
瞬間、雪乃の手からクッキーが消えた。
「い、いる…」
驚く雪乃の目の前で、パクパクとクッキーが消えていく。
「ムウマ、出てきてくれたんだね!」
ハッキリと姿は現さないが、そこに間違いなく存在した。
ミナミは嬉しそうにムウマに話しかける。
「ムゥ」
ムウマは短く鳴く。その声はとてもか細い。
「ムウマ、あなたは誰を待っているの?」
雪乃の問いに、ムウマは答えない。
例え答えたとしても、言葉はわからない。
「…うーん、誰かポケモン語分かる人いる?」
「いるわけないでしょ」
「やっぱり難しいよね、何かヒントでもあればいいんだけど…」
ミナミがそこにいるであろうムウマを見つめる。
ヒントねぇ…と、考える2人。
「でも、ずっと待ってるって、どれくらいの期間なのかしら」
「分からないけど、私がこの子と出会ったのは3年生になる前くらいだったかな」
「じゃあ少なくとも約1年間くらいは会えてないってこと?」
「だとしたら、もうこの中等部に来なくなった人なんじゃない?」
なるほど、と美希の言葉に納得する。
「そうね、例えば…先輩とか」
確かに、もう卒業した人なら中等部に来ることはない。
「ありえるかも!流石美希、天才秀才才色兼備!」
「煽ってる?」
「こんなにも褒めてる」
「確かに、美希ちゃんの言う通りかも。違ったとしても、聞いてみる価値はあるよね」
その言葉に3人は黙った。
いや、主に雪乃が注目されていた。
「…アンタお兄さんいるじゃない。聞いてあげなよ」
「やだよ。今一番会いたくないランキング1位なんだから」
「じゃあ他の先輩とかでいいじゃん。いるでしょ、沢山知り合い」
「いや、知ってるけど別にそんな仲良くないし連絡先も知らないし…」
「仲良くないは嘘でしょ。なんなら彼氏の1人くらいいてもおかしくないでしょ」
「いやいや、あり得ないから。まぁ百歩譲って仲良いとしても、マジで連絡先しらないし…」
「使えないわね。連絡先くらい交換しときなさいよヘタレ」
「へ、へぃ…さーせんっした」
しょぼくれる雪乃。それを見て困るミナミ。
そんな時、2人の男子生徒が近くを通った。
「あれ、ゆっきーやん」