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side ???
いってぇ。まじでやらかした。
口に入れた氷に、ひりひりと痛む舌を器用に当てる。
俺が舌を負傷した原因はそう、最近興味を持ち、初めて飲んでみたインスタントカフェオレ。
さみー外から帰ってきてあったかい飲み物を飲むと身体の芯からあったまる感じがしてとても好きになったんだけど、ひとつ問題がある。
俺は猫舌なんだ。
マグマのように熱いカフェオレをふーふー冷ましてちびちび飲むのに痺れを切らした俺は、ついに大きくマグカップを傾けて口に注ぎこんでしまった。
もう、思い出すだけでももっと痛くなってくる。
やばいだろあの飲み物、猫舌とか関係なく誰でもKOできる簡易的な武器だって。まぁ美味いから許すけどさぁ。
いつまでも氷を舐めていては凍えてしまうから、氷が溶けた後、舌を口の外にべーっと出して、少しでも冷やそうとする。
かなり酷い火傷しちゃったなーとか思いつつ、舌を出しながらソファに寝転んでスマホをいじっていると、ふと昔を思い出す。
前もこんな事あったな。
そん時のおれは、コーヒーを飲んでた。いや、おれら、か。
おれはコーヒーは苦いし好きじゃなかったけど、アイツが好きだったから、アイツがよく飲んでいたから。少しでもアイツとの共通点を増やしたくて無理やり飲んでた。
でもそのうちおれも好きになっちゃって、コーヒー飲まないと生きていけないとか思うようになってたな。
ある日、今日と同じように舌を火傷しちゃって、半べそかきながら火傷したーって伝えたら、おれは幼児か!ってくらい心配されて。懐かしいなぁ…
目頭に何か滲んできたのは気の所為にして、机の上にほったらかしてあったマグカップを片付けるため、手に取って立ち上がる。
それをシンクに置くと、すっかり出すのを忘れてしまっていた舌に燻る痛みを紛らわせるように、軽く噛む。
もう…コーヒーは飲まない。
あの頃と同じ味は、アイツを思い出しちゃうから。
もう、コーヒーは飲めない。
しばらく飲まないうちに、あの苦さは好きじゃなくなったから。
もう…コーヒーは……
俺には必要ないから。
fin.