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ニキキル

1 - ニキキル トラウマ

♥

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2024年06月23日

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ニキキル

✗✗✗

「…母さん…」

「、?キルちゃん?」

寝言をこぼしている。

その目には涙が伝っていた。

「たすけ…て…」

鼻をスンと鳴らし、辛そうに眉間に皺を寄せる。

「…大丈夫だよ…」

ただ、安心させるように声をかける他なかった。

✗✗✗

「キルってどういうAVみんの〜?w」

「ええ俺は〜w」

最近仲良くなった活動者と、discordで男子高校生のような会話を交わす。

お互いの性癖を語り合ったり、最近見たオカズを共有したり。

「え俺さ〜オススメのやつあんだけど!」

そのメッセージとともに相手が送ってきたリンク。

押してみると、至って普通のアダルトビデオだった。

何が面白いのかと、少し期待しながらしばらく画面に見入っていた。

『俺、女殴ってるやつとかクソ好きなんだよねw』

この通知が来た時には、もう遅かった。

「はっ、ぇ、」

PCの画面に大々的に映るのは、顔や腹を殴られ蹴られる女の姿だった。

女の荒い息と悲鳴が、耳を劈く。

ダメだ、思い出してしまう。

頬を殴られると頬よりも口内が切れて痛いこと。

口の中で広がる薄い血の味。

腹を蹴られた時の、胃の内容物が逆流してくる感覚。

腕と髪を掴まれて床に叩きつけられたこと。

「ぁ…あ、やめ、やめて…」

過去の記憶が鮮明に脳裏を駆ける。

痛みも恐怖も、今体験しているかと錯覚するほどハッキリしていた。

逃げなきゃ。

✗✗✗

「ただいま〜」

いつもならおかえりと返ってくるところが、家には静寂だけが残っていた。

「キルちゃん?いないの?」

ガタッ…

部屋の奥で物音がした。押し入れの中だ。

(なんでこんなところに…?)

ガラッ

「…キルちゃん?」

「はっ、はぁっ、ゃめ、来ないで…ヒュッ、」

「キルちゃ…っ?」

「ごめ、なさ…っ、もう、叩かないで…ごめんなさ、」

「キルちゃん、大丈夫、俺だよ、ニキ。」

「ぁ…にき、く、」

「うん、俺だよ。大丈夫、ゆっくり呼吸しようね。誰もキルちゃんを傷つけたりしないからね。」

「ぅ、あ…」

キルちゃんの頬を大粒の涙が伝う。

すごく辛い思いをしたのだろう。緊張の糸が解け、リミッターが外れたようにボロボロ泣き出した。

「大丈夫、大丈夫だよ。」

「にきく、怖かったあ…、」

「怖かったね。もう大丈夫だから。俺がいるでしょ。」

「うああ…ヒック…うっ…」

✗✗✗

「ニキくん…ごめん…」

「謝らないで。辛かったんだもんね。本当は俺が全部代わりに背負ってあげたい…。」

「ううん、ニキくんは居てくれるだけでいい…」

「…キルちゃん」

「ん…、」

チュッ

「…っ」

「これからは、俺が守るから。辛い思いさせたりしないから…、だから、」

ずっとそばに居てね

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