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「私、実は朝切くんの〈スティグマ〉の詳細を知らされておりません」
「……はあ(相槌)」
「ですので、今教えて頂けると幸いです」
「……はあ(溜息)」
相変わらず笑顔でそう言う。
が、俺はそれを拒否した。
「すみません。僕の〈スティグマ〉……あまり言いふらしたく無くて……」
なるべく申し訳無さそうな演技で言えば、あっさり引いてくれた。
「そうでしたか。お気遣いが出来ず、申し訳ありません」
「あ、いえ、大丈夫です」
良い人な気がする……
本気で申し訳無いかも……
「ならば、朝切くんが私を信用出来た、若しくは任務に同行した時に教えて下さいね」
何かッ……良い人ッ……
「どうしましょう。今日の本題が終わってしまったのですが……おかわりいります?」
「!おかわりほしいです」
「承知しました」
カップを盆に乗せて離れていく。
暫くしたら、氷の部屋に何かが割れる音が響いた。
「え、せッ、先輩……?」
慌てて見にいくと、陶器が散らばる中に、先輩の手から血が滴っていた。
「先輩!?カップ割れたんですか?血が……!」
「あぁ、いえ、大した傷ではありません。ただ、おかわりは、片付けをするので少し時間がかかります」
散らばる破片を片付け始めるが、小さな破片が傷口に刺さっているのか、時折痛そうに眉を顰める。
「……先輩、手、貸してください」
幾ら〈スティグマ〉を見せたりしたくないとは言え、使うべき場面で使わないのは違うと思う。
「触りますよ」
手袋を外して傷口に触れる。
滲みたのか、一瞬肩を震わせたが、次の瞬間には目を丸くしていた。
「これ、朝切くんの〈スティグマ〉でしょうか」
「……そうっすね……〈ラウズハーツ〉です」
俺の〈スティグマ〉である〈ラウズハーツ〉は、回復力を増強させるものだ。
基本的には自分にバフが掛かるタイプなのだが、使い方を少し変えると、他人を回復するヒーラーにもなれる。
「ほう……ありがとうございます。ですが、良かったのですか?知られたくなかったのでは……」
「あの、目の前で血ぃ流してる先輩がいるんすよ。助けないとか言う選択肢あります?」
「……そうですか」
少し考えたあと、また笑顔に戻る。
「では、寮長には認識を改めていただくよう言っておきますね」
「お願いします」
「んお?」
自然すぎて流しそうになってしまい、間抜けな声が出る。
何?認識を改めるって。
「寮長、君の事を『猫被りクソガキ』と呼んでいましたから」
「は?」
何だその不名誉なあだ名は。
寮長どんな性格してんだよ。
「おやおや……化けの皮が剥がれますよ?」
ふっと笑えば、そのまま出ていこうとする。
「ちょ、先輩待ってください」
「はい?」
「おれ、……僕、どうすれば……?」
危うく出そうになる素を抑え、必要のなくなった手を手袋に戻す。
「ああ 、朝切くんは此処でゆっくりしていてください」
「え」
「では」
「待って」
……
出ていっちまったぜ!!!!!(やけくそ)
俺はこれからどうすりゃいいんだ!!!!!(切実)
……1人寂しく帰るかぁ……