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「由井さん、君、もしかして何かトラブルを抱えていたりしない?」

「え……?」


ファミレスのバイトを終えて帰ろうとしていたさなか、店長に呼び止められて話をしていると、唐突にそんな言葉を投げ掛けられて驚いてしまう。


「あの、何故そんな事を……」

「実は、数日前から店に変な電話が掛かってくるんだよ」


詳しい経緯を聞いてみると、数日前から度々男の声で、うちのスタッフの中で、色々な男と遊んでいる、汚らわしい女は店に置くなという内容の話をして一方的に電話を切ってしまったという。


初めはただの悪戯だろうと取り合わなかったみたいだけど、毎日朝、昼、夜と似たような内容の電話が掛かってきた事、昨日は私の名前を名指ししてきた事で、私が誰かと何かのトラブルを抱えているせいで店に変な電話が掛かって来ているのではと聞いてきたようだ。


「そんな事に……。すみません、ご迷惑をお掛けして……」

「それで、実際のところどうなの?」

「その、トラブル……と言いますか、相手が誰だか分からないんですけど、誰かに付け狙われているみたいで……」


こうなると流石に隠してはおけないと、今置かれている状況を店長に説明した。


すると、その話を聞いた店長は、


「……うーん、君が悪い訳じゃないのは分かるんだけど、うちも客相手の商売だからね……悪いんだけど、暫く休んでもらえないかな?」


面倒事に関わりたくないのか、私に暫く休むようお願いしてきた。


確かに、今は電話だけで済んでいるけれど、このままエスカレートしてそれだけでは済まなくなって店に迷惑が掛かってしまうかもしれない。


バイトが減ってしまう事も困るけれど、それはあくまでも私の事情であって、店には関係無い。


「……分かりました、とりあえず、暫くの間お休みさせていただきます」

「悪いね。今後の事はこちらから連絡するから」

「はい、よろしくお願いします。それでは、失礼します」


結局私は暫くお店を休みすると返事をして帰路に着いた。




「――というわけで、私、ファミレスのバイトは辞めようかなって思うんだ」


その夜、ご飯を食べ終えた私は店長に言われた話を小谷くんにした後で、ファミレスのバイトを辞める方向で考えている事を告げた。


「ま、いいんじゃん? つーか俺としても、バイトはなるべく抑え気味の方がいいと思う。家に居てくれた方がこっちも安心だし」

「でも、稼ぎが……」

「前にも言ったと思うけど、今は二人で住んでんだし、出来る方が出来る事をやればいいんだよ。由井は家事をしてくれて、その分俺が生活費を多めに出せばいい。そうすれば由井は本屋のバイトだけでも充分余裕だろ?」

「……それは、そうだけど……やっぱり申し訳ないよ、そんなの」


小谷くんの言い分は分かるけど、あくまでも同居人という立ち位置の私たち。そんな中で金銭面の負担を掛けてしまうのはやっぱり申し訳なく思ってしまう私はどうにか稼ぎを増やしたいと考える。


「……それなら、本屋に話して、もう少しシフト入れてもらうか長めに働かせてもらえば? 掛け持ち辞めたって言えば、シフト入れてもらえるんじゃねぇの?」

「……そっか、そうだね。明日本屋のバイトがあるから、店長に相談してみる」


そこで小谷くんから唯一残っている本屋のバイトのシフトを調整してもらえばという助言を受けて、明日ちょうど本屋のバイトが控えている事もあって相談してみようと頷いて、この日はバイトについての話を終えた。



翌日、早めに本屋に着いた私はちょうど休憩中だった店長にシフトの相談をしてみた。


勿論、ファミレスでの事や付け狙われている事も話した上で。


すると、


「そういう事なら、うちで少し多めにシフト入ってもらって構わないよ。由井さん勤務態度も真面目だし、うちとしても助かるよ。それじゃあシフトの方、調整して多めに入れとくね」

「ありがとうございます!」


店長は悩む素振りもなく、シフトを調整してくれる事になった。


私としても、本屋でのバイトが一番やりやすかったからひと安心。


嬉しくて小谷くんにメッセージで伝えると、相変わらず素っ気ない文で『良かったな』と一言だけ返してくれた。

近くて遠いキミとの距離

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