コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「遊びで、やった?」
遊びでやった。遊びで人を殺した。
信じられない。信じたくないから、若い看守は言葉をオウム返しのように繰り返した。
つまらなかった。退屈だった。ほかにも引っかかる言葉はあったが、遊びで人を殺すなんて猟奇殺人鬼にもほどがある。そんなもの、まるでまだ命の尊さを知らない幼子が虫で遊び殺しているようなもの。
「幼子のようだろ」
自分の考えを見透かされているように呟かれた言葉に、若い看守の肩がびくりと跳ね上がった。
「お前もあるだろう?命の尊さを知らなかった時期が。命の重みを知らなかった時期が。無邪気に虫を追いかけ回し、捕まえ、手足を引きちぎり、羽をもいで逃げさせないようにした。生きたまま炎の中にいれたり、水を張ったバケツの中に沈めたり、時には力任せに虫の体を引きちぎり、けいれんする虫を見て笑った事もあるんじゃないか?」
並べられる残酷な言葉の羅列に、若い看守は喉の奥が引き攣るような違和感を覚えた。
思い返してみれば、自分も幼い頃は庭にいた虫を追いかけ回し捕まえ遊んでは殺していた。いや、遊んでいたら虫が死んでいた方が多かった。そして、今にも死にそうな虫を見て、苦しみもがいている虫を見て、友と笑った記憶だってある。
「それと同じだ。それが楽しいから奴は人を虫ケラ同然に殺すんだ。だが我々とあれの違いを挙げるなら、我々は悪意のない探究心で虫を殺し、あれは悪意のある好奇心で人を殺すことだろう」
「……悪意のある、好奇心?」
椅子に座っていた看守は重たい腰を持ち上げるように立ち上がる。それからポケットの中からタバコのボックスとライターを取り出すとタバコを1本取り出し口にくわえて火を付けた。
すかさず別の看守から「職務中ですよ」とお咎めの声が飛ばされるが、「別にいいだろ」と一蹴し白い煙を吐いた。
「着いてこい。あれのとこに行くぞ」
「えっ?ですが先程事情聴取はしなくても良いと…」
「事情聴取じゃない。あれについて知りたいんだろ?なら俺があれのことを話すよりも直接あれに聞いた方がいい」
「おっ、俺は別に奴のことを知ろうとは思っていません!」
「照れるな。顔に書いてある」
「照れてないですしそんなこと書いてありませんって!!」
「素直じゃねぇな。……お前モテないだろ」
「今それ関係ないでしょ!!!」