テラーノベル
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雨はまだ止まなかった。
校舎の裏口から出ると、冷たい雨が二人を叩いた。
kzは自分の上着を俺の頭からかぶせ、濡れないように守るようにした。
俺はまだ足元がおぼつかない。
ヒートの余韻で体が熱く、歩くたびに内腿が擦れて甘い疼きが走る。
kz『立てるか?』
syu『……うん。大丈夫……』
本当は大丈夫じゃなかった。
でも、kzにこれ以上弱いところを見せたくなかった。
俺たちは並んで校門に向かって歩き始めた。
街灯の光が、雨の粒をキラキラと照らしている。
俺の体からは、まだ甘いオメガのフェロモンが薄く漏れ続けていた。
kz『お前の匂い、まだ残ってるな』
kzは低く呟きながら、鼻を軽く動かした。
自分の股間が、また疼き始めているのがわかる。
syu『……ごめん。抑えられない……』
俺は小さく肩を縮めた。
雨に濡れた髪が、額に張り付いている。
kzは立ち止まり、俺の腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。
kz『謝るな。俺が我慢してるだけだ』
その声には、抑えきれない苛立ちと欲が混じっていた。
俺の体が、びくりと反応する。
kz『家、どこだ?』
syu『……駅の近くのマンション……一人暮らし』
kz『送る。逃げようとするなよ』
俺は頷くしかなかった。
電車の中では、幸い他の乗客が少なかった。
でも、俺のフェロモンの匂いが狭い車内に広がっていくのが自分でもわかった。
隣に座るkzの体温が、異常に熱い。
syu『……あの、さっきの……ありがとう』
俺は小さな声で言った。
kz『礼はいい。ただ、お前はもうβじゃ通用しねぇって自覚しろ』
kzの目が、俺をまっすぐ見つめる。
kz『次にヒートが来たら、俺に連絡しろ。無視すんな』
syu『……なんでそんなこと……』
俺は戸惑った表情でkzを見上げた。
kzは答えず、ただ俺の手に自分のスマホを押し付けた。
kz『番号、入れとけ。今すぐ』
俺は震える指で、自分の番号を登録した。
登録が終わると、kzはすぐに自分のスマホに着信を入れて確認した。
kz『これで逃げられねぇな』
その言葉に、俺の胸がざわついた。
マンションの入り口に着いた頃、雨は少し小降りになっていた。
syu『……ここでいいよ。ありがとう』
俺は上着を返そうとしたが、kzはそれを拒否した。
kz『そのまま着てろ。まだ匂いがする』
kzは俺の肩を掴み、壁に軽く押し付けるように近づいた。
暗いエントランスに、二人の影が重なる。
kz『お前、俺の匂いが染みついてるの、わかるか?』
syu『……え?』
俺の目が大きく見開かれた。
kzの顔が、ゆっくりと近づいてくる。
鼻先が触れそうな距離。
kz『お前の体が、俺の匂いを欲しがってる。まだヒート、完全に収まってねぇだろ』
俺の息が、乱れた。
下腹部が、また熱くなり始める。
syu『……やめて……ここ、外……』
kz『わかってる。今日はもう触らねぇ』
それでも、kzは俺の首筋に顔を埋めた。
深く息を吸い込む。
kz『……この匂い、ほんとにヤバい。お前だけだ、こんなに俺を狂わせるのは』
俺の体が、びくびくと震えた。
怖いはずなのに、kzの熱い息が心地よく感じてしまう。
syu『……怖いよ……αに、こんなに近づかれるの……』
kzはゆっくりと顔を上げ、俺の目を見つめた。
kz『俺は昔、Ωに裏切られたことがある。だから信用してねぇ』
kz『でもお前は……違う。お前の匂いは、俺の本能をどうしようもなく刺激する』
kzの指が、俺の唇を軽くなぞった。
kz『逃げんなよ、syu。次にヒートが来たら、絶対に俺を呼べ』
俺は言葉を返せなかった。
ただ、頷くことしかできなかった。
kzは満足そうに小さく笑い、俺の額に軽く唇を押し付けた。
kz『じゃっ。また明日な』
そう言って、kzは背を向け、雨の中を歩き始めた。
俺はマンションの入り口に立ち尽くしたまま、kzの後ろ姿を見送った。
体はまだ熱い。
でも、心のどこかが、さっきより少しだけ軽くなっている気がした。
syu『……どうして……』
一人で呟いた声は、雨に溶けて消えた。
この夜を境に、二人の距離はもう、元には戻らないことを——
俺はまだ、完全に理解していなかった
コメント
3件
続きがめっちゃ楽しみです!! 全部見ましたがどの話も最高すぎます!
続きが気になる!次も楽しみにしてます!!
最高すぎました(☆▽☆)