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私は幼い頃からずっと旅の行商であった。これは私の両親がそうであったからで、私の故郷はこの荷馬車だ。家とも言える。白い天幕が光り輝いて私の汗が雨となる日も私はここにいて、道はいつまでも続いておりやまない。行商とは時にとても大変に退屈なもので、私は道に思いを馳せる。このどこまでも続くみちはまた別の道につながり、明日の道は去年の道に通じ、昨日の道は来年の道に通ずる。人が作った偉大な水道や教会は、確かに見るごとに人々を感動させる美しさを有するが、どうだろう。そんな感動に打ちひしがれるあなたの、その足元の石畳みは、巨大で荘厳ないかなる教会よりも広く、またどのような巨大な水道橋よりも長く、生活に寄り添う。ひとは他に足をつけて立つが道なくしては生活も足を地につけていることはままならない。
私はこの生き方に非常に自信を持っている。どうだ。貴公の飲むワインを運んだのは私なのだ、私に感謝したまえと領主には思えるし、どうだ、あなたの引いた麦を街に卸したのは私だ、市民の感謝を伝えてあげようと偉そうにも思える。しょうもないものとは思わないでほしい。私はただありがとうと言われ、自信が持てることが嬉しいのだ。ゲスなことはない。断じて。ところで次の品物は非常に高値な毛皮なのだが、君のところではどのような人にこの品物を売ってくれるのかな。なるほど、では私はまたこの仕事を自身に思うことができそうだ。
さぁ行商で物を売るとお金が手に入る。これを元手にして新たな品を買っては次の目的地を目指そう。おっと、お嬢さん。私は人を乗せるのはやってないんだ。それにね、私のような紳士でなければお嬢さんのような可愛らしい娘は男の行商と2人になるのは避けるべきだよ?なに?あなたはそうではなさそうとは、私はどうであるだろうというのかな。全く最近の若いのは人で遊ぶのが好きとは飛んだ悪ガキも多い物だよ。いいから行くぞと?いいや、わたしは先払いが好きなんだ。わかるだろう?うん、わかればいいんだ。そう言えばこんなに主観的になってあれこれ話すのも久しぶりな気がした。普段は1人な物だからね。だから石とか木とか道とか、そんな些細なものを尊大に捉えたがる。え?なんだつまらないだと?まぁつまらないよ。そうだよ。ただ悪くないとはおもうんだ。自分に酔いしれるというなにより甘美なものを味わえるからね。気持ち悪いだと?そうだな気持ち悪いだろう。というかあれこれいわないでくれあー!もういや!やだ!わかった。そっちまで暴れたらもう収拾がつかん。私が手を引こう。まったく空は青いというのに私の心はちっとも晴れやかにならん。娘っ子に好かれてモヤモヤと心は曇って胸はぐるぐるとしてお天道様もお怒りなことだろう。私は今日も道を進む。変わりゆく物も悪くないなと思いながら。