テラーノベル
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「〜〜♪」
俺は伊藤蓮斗《いとうれんと》。
ごく普通のどこにでもいる会社員だ。
俺は今日、 海に来てるんだ。
もちろんボッチで。
泳げるかって言われたら泳げないが…
久々に来たら誰でも興奮するよな?
浮き輪を膨らませて、 ゆっくりと海に入った。
「なんかこの感覚久しぶりだな…」
この波に打たれながら浮く気分は、最高だ。
久しぶりに休みが取れたのもあるし…なんたって三連休だからな。
幼く見えるかもしれないが、
今はどうだっていい。
波に打たれながら、
ゆっくりと日差しに目を閉じた。
「ん…?あれ?」
ちょっと待て…ここは沖から遠くないか?
早く戻らないと…。
やべっ、浮き輪から落ちる!
濡れた手だったのが悪いのか、
俺はゆっくり浮き輪の穴からずり落ちた。
「深っ…?」
底が見えない。
精一杯もがいても、ただ水を掻くだけ。
俺、溺れてるな…。
どんどん視界が濃くなっていって…。
もう空がない。
「あがっ、誰か」
苦しい。 せっかく海に来たのにここで人生終わりだなんて…。
海では当たり前のことがないなんて…。
空が欲しい。
あぁ、無様だな。
最後に見た景色は夕焼けの色だった。
「はぁ!?あいつ…」
俺の名前は高森暁斗。
絶賛ライフガードのバイト中なのだが…。
ラインの向こう側に行った客がいる。
俺は急いで白い足場を駆け下りて、
砂が沼になったように、意気揚々と飛び出して
色が薄い海へと入水した。
まずい。
注意しようとしただけなのに…もう沈んでいる。
しかもまだ多少遠い。
水の浮力を感じながら、邪魔な波を躱してやっと浮き輪までたどり着いた。
「はぁっ…」
精一杯息を吸って、海を蹴って深い場所へ向かった。
潜ったら見えたが、意識は無さそうだ。
俺はすぐに回収して、色が濃い場所から浅い場所へと駆け抜けた。
「はぁ…はぁ…」
空が見えた。
こいつを背中に乗せて、沖へと走った。
足が水なので沖までの道のりが永遠に感じられる。
だが、やっと着いた。
「ふぅ…大丈夫か?」
意識はない。それに息をしていなかった。
二度目のピンチだ。
濡れた体に冷や汗は効かなかった。
俺は胸辺りを押して水を吐き出させた。
人工呼吸をした。
精一杯息吹き込んで…口から離して吸って…。
それを約一分くらい続けていると、息が戻った。
人を救うのはこんなに大変なのか…。
砂に戻った地面に手を着いて、
自分も息を吸った。
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫ですか?」
横をみると救急隊の方々が居た。
俺は自分は大丈夫だと言い、
横の灰色髪のやつを運んでくれと伝えた。
救急隊はそいつを台に乗せ、運んで行った。
俺は倒れ込んで、空を眺めた。
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