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海祇大御神がためらうことなく、勝算の少ない東征を決意した時、現人神の巫女は曚雲姉妹に珊瑚宮で最初の水軍を率いるよう任命した。そして、曚雲と巨鯨「大検校」の物語もここから始まったのである。
伝説によると、「大検校」は盲目の巨鯨で、その寿命は九百年もあるそうだ。深く暗い海底を住処とし、月のように綺麗なクラゲと深海魚がその従者である。左には護衛である五百頭のイッカク、右には楽師である五百頭のザトウクジラ。ある島唄によると、かの者は一度に珊瑚島を十島は呑み込むことができ、満腹になって眠ると、そのいびきと共に岩礁を五つ吐き出すという…
鯨の歌が得意な珊瑚宮の海の民でも、このような巨獣を前にすれば、無事に帰れる者など一人もいないだろう。だが、曚雲は現人神の巫女の指令を受けた。月が海霧から夜空に昇った時、彼女はきらきらと光る鯨の宮に潜ったそうだ。彼女はどんな方法を使って「大検校」を説得したのか、それは誰も知らない。月が三度空に昇り、潮が引いた時、海祇の民はある光景を目にしたという——巫女の曚雲が「大検校」の巨体に座り、銀色に光る静かな海から浮かび上がってくる光景を。
以後、「大検校」とその海獣の従者たちは、曚雲姉妹と共に大御神のために忠義を尽くして戦った、変えることのできない終焉を迎えるまで…
大御神が「東山王」と共に戦没したと聞き、退却する途中、巫女の曚雲は天狗である笹百合の手下の待ち伏せを受け、巨鯨「大検校」と共に戦死し、そして、その遺体は幕府軍によって奪われた。妹の「海御前」菖蒲は、奮戦の末、鮮やかな赤い海に消えて行方不明になったという。
その後村は繁栄を極め、素晴らしい作物に恵まれた。
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