第三話
注意書きは第一話をご覧下さい。
水side
ガチャ
水「…ただいま」
もう偽りの自分を作るのは終わり。
家に帰ったら、ほとんど空気として扱われるから、部屋にこもってずっと勉強。
水「テストまであと1ヶ月…」
テスト。きっとテストが好きな人なんて、いないだろう。
自分も嫌い。もしテストの点が悪かったら、タダじゃ済まないから。
水「勉強しなきゃ」
テストで高得点を取って、学年1位にならなきゃ。
その為には、いふくんより頭がよくならないといけない。
いふくんは帰国子女で、英語ペラペラ。
英語なんて、100点が当たり前みたいで、ほかの教科も全て90は超える。
そんな強敵に勝たないといけない。
水「…英語から勉強しよ」
教科書とノートを開いてひたすら復習。
気が済むまで、時間が許す限り勉強をする。
数時間後
水「もう7時か…」
あれからずっと勉強を続け、気づけばこんな時間。
今日はお腹も空いてないし、夜ご飯は要らないからいつもよりたくさん勉強ができる。
水「お風呂はまだ入れないし…ちょっと気分転換しようかな」
そう独り言を呟いて、部屋の大きい窓を開ける。
水「ん……風が気持ちいい…」
この家でこの部屋だけ、ベランダがある。
自分は気分転換によく、ベランダに出て風を浴びる。
そうすると、心が落ち着くような気がするから。
水「……そういえば、最近隣に誰か引っ越してきたんだっけ…」
目の前にある一軒家。最近できた家で、誰か引っ越してきたらしい。
ウチにも挨拶しに来たらしいけど、部屋にこもってるよう言われたためどんな人か知らない。
噂によると、イケメンだとか。
水「……カーテンから人影が見える…」
見た感じ、身長が高いな…。
社会人かな。こんな立派な家に1人で住んでるみたいだし。
ガラッ…
水「ッ!」
ボーッとしてると向かいの家の窓が開いた。
そっか、目の前にベランダがある。
水(なにも知らないフリして戻ろう…ッ)
と、後ろを振り返って部屋に戻ろうとしたその時
?「…ほとけ…やんな?」
水「!」
またまた聞き覚えのある声が聞こえてきた。
恐る恐る振り返ると、目の前にはやはり
水「…いふくん…」
いふくんがいた。
青「ほとけってここに住んどったんやな〜…挨拶しに来た時におらんかったから知らなかったわ」
水「ま、まぁね…」
なにをしてるのか聞くと、勉強のブレイクタイムらしい。
パジャマを着て、マグカップを持ちながら話しかけてくるいふくんに、少し変な感情が湧く。
青「ほとけは、ここでなにしてたん?」
水「ん〜…気分転換かな、?」
青「同じようなもんやな笑」
水「だね、笑」
青「ほとけって頭ええけどどうやって勉強してるん?」
水「…普通に教科書を復習するだけだよ。それ以外はなにもしてない」
青「それだけであんな高得点取れるん…!?すごいな…✨」
水「…そういういふくんの方こそ、頭いいじゃん」
青「俺は教科書の復習だけじゃそんな高得点取れへんよ笑」
青「ほとけは天才やな♪」
水「天才、か」ズキッ
天才という言葉にズキッとした。
自分が、今までどれだけの努力をしてるかいふくんは知らない。
天才という言葉で片付けられたくなかったのかもしれない。
これ以上話してると、言いたくないことが口から出てしまいそうで、グッと飲み込みこんだ。
水「もっ、もう時間も時間だし戻るねッ…」
青「ん、また明日な♪」
水「…」
天才なんて、初めて言われたけど嬉しくなんてなかった。
普通なら嬉しくてたまらないはずなのに。
嬉しいどころか、怒りの感情があって…。
水「…普通って、なんだっけ……」
自分は、親に期待されてるんだっけ。
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