Mrs. GREEN APPLE/もとぱ/BL
疲れた。もう無理、限界。
隣にそっとギターを置いて軽く伸びをする。
新曲レコーディングまであと2日。
どんなに頑張っても元貴の理想には程遠いみたいで
”…..ほんとにそれでいいの?それ聞いてみんなは喜ぶのね?”
なんて圧をかけてくる。
若井「俺だって…頑張ってんだよ」
本人にはそう言い返せない。
だって頑張るなんて当たり前で、リリースした時の演奏。これだけが答えなんだから。
でもだからって頑張りすぎたな。
指はマメだらけだし、それが潰れて血が滲む。
気づかなかった。ギターにも付いちゃったみたい。
若井「とりあえず絆創膏….」
貼ったらまた練習しないと。
大森「おつかれ。結構長く弾いてたね」
若井「あ……うん」
同棲してる元貴が珍しくソファーに座ってる。
普段なら部屋で曲を作ってるから、リビングに居ることなんてそうそう無いのに。
大森「……座りなよ」
ソファーの隣をポンポン叩く。
でも正直、行きたくなかった。
“それ聞いてみんなは喜ぶのね?”
脳内再生され続けている言葉。
またこんな事を言われてしまうのだろうか。
今までの練習も、否定されてしまうのかな。
些細な言葉でトラウマになってしまう自分が弱くて情けない。
それでもね元貴。
俺は元貴に認めてほしいんだよ。
よく頑張ったね。って言ってほしいの
その為なら、俺はどこまでも着いていく。
いくらでも練習する。
だから、元貴が求めるクオリティーに辿り着くまでもうちょっと待ってて。
若井「大丈夫。元貴はちゃんと休んでな」
若干逃げのような言葉を残して絆創膏を取り足早に自室へと戻った。
若井「ったぁ〜。なんでこんなになるまで気づかなかったんだろ…」
マメが潰れてる痛みなどこうなった人にしか分からないが、マジで痛い。
絆創膏してても何かに触れるだけで痛いし、ギターを弾くなんてもってのほかだろう。
若井「でも弾かなきゃ」
軽く弦を拭いてギターを持ち上げた瞬間、俺の後ろから誰かの腕が伸びてきた。
ヘッドホンしてるから何も聞こえなかった。
振り返ると、元貴が俺のギターを取り上げた
大森「それ、ギタリストが1番言っちゃいけない言葉だよ」
俺の手を取り、指に貼った絆創膏を剥がされる。
若井「えっちょ、、、、なに、?」
大森「…指を負傷するまで弾けなんて、誰も言ってないけど。絆創膏貼るのも下手くそだし」
動くなと言われ大人しくしていると、指に新しい絆創膏が貼られる。
人に貼ってもらうと傷口にピタリと当たり、痛みも少しマシになったような気がした
若井「あ、、りがとう、?」
元貴が何を目的に部屋に入ってきたのか未だに分からず、少し怯えた態度を取ってしまう。
大森「若井ってギター弾くの好き?楽しい?」
俺の正面で正座する元貴。
なんだか重い空気に押しつぶされそうになる。
元貴が………………怒ってる。なんで?
若井「好き…だよ?楽しいし」
大森「じゃあさ。”弾かなきゃ”なんて思うものじゃないんじゃないの?」
若井「いやでもそれはさ、責任感というかなんというか…」
大森「責任?若井はみんなを喜ばせないとっていう責任で仕方なく弾いてるの?だったら、ミセスには要らないよ。」
若井「っ………」
違う。そうじゃない。そんな事を言ってるんじゃない。
そう言い返したいのに、膝の上でギュッと握りしめた拳に1粒の涙がこぼれ落ちた。
俺は元貴に認めてほしくて練習してたのに。
ここで泣くなんて情けないにも程があるだろう
大森「….答えて。若井はどうしてギターを弾いてるの?」
仲間と一緒に高め合いたいから。
好きだから。
でも、それ以上に俺は
若井「…楽しいから….弾いてる、」
震えた声で答えると、俺の肩に手が添えられる。
大森「じゃあ責任なんかで弾いてるんじゃないのね?」
コクっと頷く。
大森「…..そう。良かった。俺ね、お前を信用してるから厳しいこと言ってるんだよ。これを言っても、若井なら逃げずに受け止めてくれるって思ってるから」
分かってるよ。だから練習してたんじゃないか。
なのに勝手に乱入してきて怒ってさぁ。
大森「…さっき怖かった。隣に来てくれなかったから。俺はあの時、褒めようとしてたんだよ?」
若井「え…..?」
大森「あんな長い時間弾いてて大丈夫かなって思ってたらちょうど出てきたから。ヘッドホンしてても音漏れてたし、さっきの演奏は凄く良かったよ。ありがとう」
若井「っ、」
俺は我慢できずに抱きついてしまった。
良かった。元貴に褒められた。
怒るだけじゃない。少しの成長でもちゃんと認めてくれる。
まだミセスでいてもいいんだね。
好きなギターを弾いてもいいんだね
それならもう少し、頑張ってみるよ
大森「…….ってことで。俺の隣にいる馬鹿が指を負傷したのでレコーディング日を少し延長します。」
藤澤「いや〜やっちゃったねぇ若井笑」
若井「ごめんね、」
大森「ほんとだよマジで。リリース日公開しちゃってんだからね!ここからは気合い入れていくよ」
この件以降、俺はスパルタ元貴に練習のやめ時を教わった
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!