TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する






???。


「いっ…てぇ〜」


飛ばされた男は痛みを訴え大袈裟に立ち上がる。

伏せる顔に不気味な笑みを浮かべている事を、この場にいる誰もが知らない。

前に揺れる影がふと、彼の方を向く。


『無理に思い出す必要ないからね』


頬に細い影が伸び、触れられる。

優しい、温かい手。


「だれなの?」


『…』


影は何も言わない。

優しい優しい、温かい手が頬を撫でるばかり。


「感動の再会のところ悪いけどさぁ?」


薄く伸びる影の先に、ゆらりと大きく揺れる男。その周りには円状に無数の刃物が浮かんでいた。


「!」


このままではこの影が消えてしまう。


「さようならッ」


そう思ったのも束の間に飛んでくる刃物たち。

手も足も縛られている現状に、任務を遂行出来なかった自分を思い出す。

不安、恐怖、憤怒、羞恥…

何も出来なかった事への悔しさ。


目の前の影は、彼の思いに同調するように濃くなっていく。

それは、次第に人の形を築き…


「大丈夫」


長身の男性と化す。

刃物を全て跳ね返すも、男はそれらひとつひとつの動きを知っていたかのように避ける。


「…へぇ?」


ニヤリと、まるで何か悪いことを企むような笑みを浮かべながら、再度、大量の刃物を彼等へ飛ばす男。

あの計画的な男が2度目も同様、単調な攻撃をするとは到底思えなかった彼は目を凝らす。

飛んできた刃物ひとつひとつを見ると、思った通り先端の色がおかしいものが数個紛れているのに気がつく。

紫色の、明らかに分かるそれに。


「っ毒!」


「え?」


彼の声で、長身の彼は振り返ってしまう。


「ッ危な、」


彼が手を伸ばすと何かに柔らかく握り返される。

突然の事に大きく目を見開いた彼の目の前には、先程の彼とは違う人物が握っている事に気がついた。

某キャラクターの着ぐるみと目が合う。


「…ラダオ」


彼より少し身長が低い男性が、眠たそうな瞳を潤わせながらこちらを見ていた。

上目遣いになるそれがどうも幼さを感じさせる。


「…え?」


ガキィンッ

「ナイス〜」


長身の彼が振り返ることなくナイフを一蹴した途端、彼の体がふわりと浮かび上がる。


「えッ」


急な出来事の連続に頭が置き去りにされる彼をよそに、緑色の彼は、あの声がした角へと彼を移動させた。





部屋の角に移動された彼は、長身の彼と男が戦っている風景を呆然と眺めていた。

彼自身、両親が課した任務の都合により一般人とは到底言えない行為をしてきたわけだが、目の前の明らかに現実離れした体験、情景に言葉を紡ぎ出す事をやめてしまったようだ。

いつもの瞳に変わっていた。


『僕はこうなると分かってたけどね』


闇に紛れる影の1人が言う。


『”コンチャン”賭ケ金設定シテナイヨ』


影に戻った緑色の彼が話す。


『えぇ?あれ絶対って言わなかったじゃん!』


『はい俺の勝ちぃ』


『はぁ!?納得いかねぇ!』


怒った口振りだが、本来の心の広さが出ているのか声に怒気が全く篭っていない。

和気藹々とする彼らの声に、また懐かしさが浮かぶ。


『どしたぁ?』


ひとつの影が視界を覆い隠してくる。

が、彼にはそれが何色なのかも分からない。


「…」


彼は何も言わない。

覆った影は顔から手を離し、前に立つ。


『俺は”金豚きょー”』


突然自己紹介を始める彼に驚きを見せる彼。


「はぁ…」


彼の何なんだろうという気持ちが具現化されるように、スルスルと影から実体へ姿を変える目の前の影。

豚…だろうか、何かのフードを被っている彼は、妙に寂しそうな、悲しそうな顔を彼へと向けた。


「…”初めまして”。」






→♡3000


この作品はいかがでしたか?

3,792

コメント

10

ユーザー
ユーザー
ユーザー

運営来たぁ!!最後に初めまして。ってきょーさん言ってたけどなんか意味がありそう。会ったことあるのかな?また記憶無い系なのかな、次も楽しみにしています😊

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚