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角名side
これは夢なのかと思うほど、俺が求めていたものが、そこにあった。
(名前)が俺に触れて、微笑んで、素直な気持ちを伝え合う。
急速に心が満たされていくのが分かった。
約一年、塞ぐことのできなかった穴が修復された様な感覚。
「…倫太郎、俺の方こそごめん。自分だけが辛いと思って、酷いことたくさんした。
本当に、ごめん。
もし許してくれるのなら、また前みたいに仲良くしたいと思ってる」
(名前)は肩を振るわせて、頬に伝う涙を拭きながら言葉をこぼした。
「前みたいにじゃなくて…前よりも、仲良くしたい」
俺は涙を拭う(名前)の手を取り、まっすぐ見つめた。
ずっと抱えていた思いを、ちゃんと、素直に伝えようと。
「俺、(名前)のことが好き。
親友としてじゃなく、恋愛的な意味で、好き。
…混乱させたよね、ごめん。
でも、これが俺の本当の気持ちだから」
(名前)の涙はこぼれ落ちずに、目に溜まったままの状態をキープしていた。
驚いたのか、固まったままの(名前)の口が、少しずつ開いて声を漏らす。
「俺、も…好き。
ずっと前から、中学の時からずっと。
倫太郎の事が好き」
そう言って、(名前)は愛おしそうに微笑んだ。
溜まっていた涙は、重量に従って頬を伝いながら地面へと落ちていった。
…まじで。うそ。ほんとに?
夢みたいだ。
「…中学の、時から?」
ちゃんと耳に入ったはずなのに、この状況に驚きを隠せずにもう一度問いかける。
「うん、中学の時からずっと好き」
繋がったままの手は、(名前)によってさらに強く握られた。
…なんだ、そうなのか。
中学の時から。
不安と後悔と寂しさ全てが、幸せに上書きされていく。
「…キス、してもいいですか」
俺は言いながら恥ずかしくなって、顔を背けた。
「うん、いいよ」
(名前)との距離が近くなっていく。
鼻が触れ合って、お互いの吐息を感じて
(名前)の柔らかい唇が、俺の唇と重なって。
「…やっと、(名前)とキスできた」
「一年前は、俺が拒否っちゃったから」
「あれ、結構傷ついたなぁ」
「ごめんって」
「…許す」
そう言って、もう一度キスをした。
今、世界で一番の幸せはここにあるのだと、心からそう思える。
ずっと好きだった親友と、仲直りが出来た。
両思いだと知って、付き合う事ができた。
触れ合って、キスをした。
それ以上の幸せが、他にあるものか。
「倫太郎、ずっと一緒に居てくれる?」
「うん、もちろん。
永遠に誓うよ」
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