「…ここは」
Untitledで飛ばされたのならセカイのはず。
でも一体誰の…
「だ、誰かいるの…?」
「え…?」
黄色いショートカットの髪に、大きなリボン。
全身真っ白の服に包まれた小さき少女が発した声は、思ったよりも弱々しかった。
「リン…?」
「ぇ、っと…」
容姿は鏡音リンにそっくりだった。
でもこっちのリンは、今にも泣き出しそうな顔をしている。
ここはどこなの、そう聞こうとしたとき。
ボクとリンの間に誰かが滑り込んできた。
「それ以上リンに近づくな」
「ぁ、レン…」
レン、と呼ばれた少年は、鏡音レンそっくりな見た目。
同じく白い衣装を身にまとっていた。
眉は吊り上がり、今にも襲いかかってきそうなほどの怒りを向けてくる。
「お前、どうやって入ってきた」
「…ち、違うの…レン、!」
「大丈夫、今すぐ追い出すから」
「そうじゃなくて…」
「その子が、このセカイの持ち主なの」
「え…」
「は?」
ボクの、セカイ…?
「ミズキ、だよね…」
「また来てくれて嬉しい…」
「な、に言って…」
「あ、あの…出来たらこっちに来てほしい」
「みんな待ってる、から…」
「へ、皆って…」
リンは困惑で固まっているボクの手をおずおずと取り、ゆっくりと歩き出した。
「み、みんな…」
「あ、おかえり〜!」
「ずいぶん遅かったわね」
「ご、ごめんなさい…あの…ミズキが来て」
「…ミズキが?」
「ええっ、嘘?!」
なんだ、ここは。
カーテンで仕切られた部屋らしきものに入ると、残りのバチャシン、ルカ、メイコ、カイトがいた。
あっちとは全然違うルカたちには正直違和感しかない。
「え、…ど、どうしたら…」
「しっかりしてよ〜リン。この中ではリンが1番上なんだから」
「そ、そうだよね…、え…っと、まず…しょ、紹介したほうがいい…よね」
「うんうん、頑張れ〜!」
「わ、わたしは…リン」
ずっと不安そうな表情を浮かべるリン。
「こっちが…レン」
拗ねてるのか、そっぽを向いているレン。
「そっちが、メイコ」
「メイコよ!よろしくね〜」
楽しそうにニコニコしているメイコ。
「あっちが、ルカ」
向こうのセカイのメイコみたいなルカ。
「そして…カイト」
目線を向けると、何も言わず、こくんと頷くカイト。
皆、同じような白い服を来ているようだ。
紹介を聞いているとあることに気づいた。
緑のあの子だけ足りない。
「ミクは…」
「…ぁ、その…ミク、は」
答えづらそうなリンの代わりにルカが口を開いた。
「消えたの」
「へ…」
「ある時にこつ然と姿を消したのよ」
「多分ミズキ、貴女の想いの変化がきっかけでね」
「ボクの、想いの…」
想いの変化、と言われても。
まず、ここはボクのどんな想いから生まれたセカイなのか。
それからわからないのに変化なんて知るわけもない。
「ここは、ミズキのセカイだから…」
「まだよく分からないと思うけど、ゆっくりしていってね…」